エピソードまとめ

□ユーゴ・シモン
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ep.1 裏切り者
─────────♢────────



走って追いかけた先に、ガルルとガルグランに囲まれるファルクが居た。

「……へえ、小賢しいことしてくれんじゃねえの」

噛み付いて来ようとしたガルルを1匹、ファルクは切り捨てた。

「嫌いじゃねえぜ。生存に必死なその感じわよオ。だが、この程度の雑魚の攻撃が通ると思ったら大間違いだ!テメエが相手してくれやあ!デカブツ!」

そう言ってファルクは左手の剣をガルグランに向ける。
挑発に乗ったガルグランがファルクに噛み付こうとして、彼は右の剣も使い、双剣で鋭い牙を受け止めた。

「クロードくん後ろ!」

アメリーが叫び、後ろを振り向くと、もう一体のガルグランがファルクの後ろ首を目掛けて飛び上がった。

「しまっ……!?うぐっ!」

来るはずの衝撃に備え、ファルクは両目を閉じた。

だが、その衝撃も噛み付かれた痛みもなく、ファルクは瞳を開ける。

「な、お前……!」

ファルクの後ろに回り込んだユーゴがガルグランの攻撃を防いでいた。

「……はあ!」

ガルグランをはじき返し、ユーゴは膝を着く。

「……無事かい、ファルク」

そう言いながらユーゴは左肩を抑える。

「ああ?そりゃ、こっちの台詞だ!しょーもねえ怪我しやがって!」

「しょーもない罠に嵌った人に言われたくはないな」

「っんだと?」

ユーゴは立ち上がりファルクの背に自分の背を合わせた。

「なんだよ?」

「……行けるかい?」

「誰に訊いてやがる。楽勝だ」

そんな2人の横にアメリーも槍を構えて駆け寄った。

「お待たせ!私もやるよ!」

「助かります、アメリー隊長。では……行きましょう!」


「つーかこんなヤツらオレ一人でやれんのに、なにしゃしゃり出てきてんだテメエら?」

「別に?僕が進もうとしていた道の先で、いたいけな青年が獣に襲われていたから、ここは帝国兵として救ってあげようかなってね」

「んだとコラア!」

「んもうユーゴくんも素直じゃないなあ………」

「ほらファルク!正面来てるよ手を休めないで!」

「お、おう、任せやがれ!」


獣討伐後。
「っしゃあ、見たか獣ども!」

「終わりましたね、隊長」

「はあ、良かったあ。危なかったねえクロードくん」

「ああ?なに言ってんだ。楽勝だっつってんだろ」

「ほらユーゴくんに、ちゃんとお礼言わなきゃ」

「はあ?」

「クロードくん?」

「うぐ…………んなことより先に行くぞ!」

そう言ってファルクは誤魔化すように先に進んで行った。


〔道中会話〕
「とんだ寄り道だぜ!」

「ええ?クロードくんがそれ言う?」

「うっせえ、ポンコツ女」

「それって誰のこと?」

「テメエ以外にいるかよ!ポンコツアメリー!」

「えっ、私!?ダメだよクロードくん!上官にそんなこと言っちゃ!」

「ポンコツをポンコツと言って、なにが悪りいんだよ!」

「ええー!なにそれえ、それに上官がポンコツなら部下もポンコツってことだからね!」

「……ふふ。……まさか、帝国でもこんな気持ちになれるなんてね………」

「ん?どしたの?」

「……いえ、隊長の言う通りなら僕もポンコツということになるなと」

「え……。ユーゴくんって……ポンコツなの?」

「あー、えーと」

「……テメエマジかよ」

「ユーゴくんってちゃんとしてそうに見えて、結構……そうなんだ…………」

「そんな目で見ないで二人とも。はあ………。なんか帝国じゃ、レオみたいな役回りだな、僕」

「レオ?」

「なんでもないよ」


〔道中会話〕
「でもさ、ユーゴくん。ホントありがとね、クロードくん助けてくれて!」

「え、あ、はい」

「クロードくんはこういう人だけど、嬉しいと思ってるはずだから」

「だったらいいのですが」

「あ?誰がなんだって?」

「……どうなんですかね」


────────────────────

丘を下って行くと、木製の門が見えてきた。

「キャンプ地が見えてきましたね」

「よーし、ここからが本番だよ。たぶんすぐ、あそこの人達と連邦の砦を攻めることになると思うから!」

「ようやくオレ様の本領発揮だな。連邦のヤツらを皆殺しにしてやるぜ!」

「……そうだね」


3人は獣避けの柵を抜けて、キャンプ地の前まで到着した。

門の前には3人の帝国兵が立っていた。

「遅くなりました!」

アメリーが1番に声をかけた。

「ロランス隊、ただいま到着いたしました!」

「増援が来るとか言ってたが、お前達のことか」

「はい!」

「これが、増援か……ははっ」

帝国兵達は3人をみて乾いた笑い声を上げた。

「うちの方面軍もいよいよ見捨てられたか?」

「んだと?」

「お前達も災難だったな、まあテキトーにくつろげよ」

「いえ、僕らは膠着した戦況を打開するため……」

「お前達三人でなにができる?」

先程の乾いた笑いは、増援と言いつつ3人しか来なかった事への物だった。

「戦いなんていいから、キャンプで楽しんでいけよ。ここは割と快適だぜ?」

「……腐ってやがるな。やる気がないなら出て行けよ。オレ様の道の邪魔だ」

「なんだと?舐めやがって。生意気な新人に教育を施してやろうか!」

そう言って帝国兵達はそれぞれの武器を手に取った。

「来るぞ!」

ファルクが双剣を構える。

「ちょ、ちょっとお!なんで揉めちゃうのお?」

「すみません。ここは僕もファルクに共感します」

そう言ってユーゴも長剣を構えた。

「ユーゴくんまで?」

「はい。これが僕なりの"ファイト"です」

「ええー!?」

「行くぜえポンコツ女に…………連邦野郎!」


ファルクが突っ込んでいき、ユーゴもそれに続くのを見て、アメリーもしょうがないと槍を持ち向かった。





「ま、参ったやめてくれ!このとおり、謝るから」

3人同士の戦いで先に根を上げたのは、門番の帝国兵たちのほうだった。

「ああ?んだよ、情けねえな」

そう言いつつもファルクは双剣をしまった。

「っつーかマジでなまってるな、先輩方」

「く……」

「確かに。これは思っていたより根深い問題かもしれないね」

「どういうこと?」

「この方面軍が膠着状態にあるのは、地形だけのせいでもなさそうです」

「そっかあ。……ま、難しい話はさておき。門番さん、キャンプ入って大丈夫かな?」

「え、あ、はい。それはもちろん。どうぞくつろいでいって下さい」


そう言って道を空けてもらい、3人はキャンプの門を押し上げた。

「じゃあ、お言葉に甘えるとしようぜ……アメリー、連邦野郎……」

そう言っていの一番にファルクがキャンプ中に入っていく。

「ふふっ」

ファルクの様子を見て微笑ましそうにアメリーがしていた。

「どうしたんですか、アメリー隊長」

「ううん。ちょっとね。クロードくんが面白くて」

「……どういう意味ですか?」

ファルクの行動におかしいところなんてなかったが、とユーゴは首を傾げる。

「だって自分でも気づいてないけど、ちょっとだけ変わったから」

「なにがです?」

「キミの呼び方」

「え?」

「気が付かなかった?ずっと"裏切り野郎"って呼んでたのに、いつのまにか"連邦野郎"になってる」

「あ、確かに」

そう言われてみれば、そうであった。

「……ってなんですか、その微妙な変化は」

「そっかなあ。私は、とっても大事な変化だと思うけどなあ。ま、なんにせよさ、これからの任務本番も三人、力合わせて頑張ろうね!」

「……はい。精一杯頑張ります!」

「さてさて。じゃあ、早速キャンプの様子を見回ろー!」

そう言ってアメリーはファルクの方に声をかけに行った。

「ああ?くつろぐんじゃねえのかよ?」

「それでもいいけど、クロードくんまだ元気でしょ?」

「そりゃそうだが……」

「じゃ、見回りしようよ。後回し良くないからね」

「……しゃーねーな」

「よーし、見回りながら聞き込み競走だー!」

そう言ってアメリーが駆け出した。

「競走だア?おい、ちょっと待てよ!」

追いかけファルクも走っていく。

「アメリー隊長、上手いな。ファルク動かすの……」

そう呟いてユーゴも後に続くのだった。
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