エピソードまとめ
□ユーゴ・シモン
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ep.2 決別の戦場
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第3拠点に到着する目前で、ガコンと変な音が聞こえた。
「……今の音は……」
「嫌な予感がする」
そう言ってバスチアンが、拠点の扉を突き破った。
拠点の更に奥。ロシュワール湖畔の傍に設置された大型の装置に、マナが装填されていた。
「あれは……」
その装置の操縦パネルの前にリゼットが立っているのが見えた。
彼女は忙しなく指先を動かし、パネルに触れている。
「例の新兵器か……」
濃く膨大なマナが、装置の上に充填されて行っている。
「もはや、発動は止められそうにないな」
「お、おい、黒狼将を足止めするだけじゃなかったのかよ!」
連邦兵たちが途端に焦りだした。
「これじゃ俺達まで……!」
あれほど膨大なマナだ。ここに落とされたら、この拠点ごと吹っ飛ぶだろう。
「くっ……!相変わらず連邦は……!」
ユーゴが顔を歪める横で、バスチアンは少し前に出た。
「え?」
「お前達、少し下がっていろ」
バスチアンは連邦兵たちにそう声をかける。
「まさか……!あれを受け切るつもりですか!?」
ユーゴがそう言えば、バスチアンは少しだけ振り返った。
「狼将補、ユーゴ・シモンよ。しかと、その眼に焼き付けておけ。これが"狼将"だ」
装填の終わったマナが、一気に発射され、拠点の方へ落ちてきた。バスチアンは自らの周りに闇のマナを纏って、前に刀を構えた。
「ぐぬ……!」
バスチアンの刀が、膨大なマナの塊を受け止める。
「バスチアンさん!」
緑色のマナの、眩い光の中、ユーゴは真っ直ぐ立ち向かうバスチアンを見つめる。
「……ハアアアアア!」
バスチアンは身にまとっていた闇を、刀の方へ乗せる。そして、ありったけのパワーで刀を降って、野球のようにマナの塊を打ち返した。
少しして、何処かから大きな爆発音が聞こえた。
「嘘……だろ?本物のバケモノだ……」
連邦兵のいく人かは、驚いてか、死ぬ恐怖からか、腰を抜かしていた。
「くっ……」
身体から闇のマナが消え、バスチアンが膝をついて、ユーゴは急いで駆け寄った。
「バスチアンさん!」
「…少々、疲れたな」
「愚直にすべて受けるから!かわすこともできたでしょうに!」
「そうだな。だがそれでは…」
そう言ってバスチアンは連邦兵たちの方を見た。
「馬鹿ですよ、本当に……」
敵兵なのに、とユーゴも連邦兵の方を見た。
「言ってくれる。だが勘違いするな。慈悲や善意で動いたわけではない」
そう言ってバスチアンはゆっくりと立ち上がった。
「自分はただ……狼将として、気高くあらんとしただけだ」
気高く。
ユーゴはその言葉に、ハッとした。
「よしっ、黒狼将は疲弊している!今の内に討つぞ!」
そう言って、あろう事か連邦兵達はバスチアンに剣を向けた。
「なにっ……!?貴方達、バスチアンさんに救われておきながら……!」
「退けユーゴ。お前だけならばまだ退ける」
「……違うでしょうバスチアンさん。狼将補がすべきことは、この退路確保なんかじゃない……」
ユーゴはギュッと剣の柄を握る。
「……僕は貴方と共に活路を切り開きます!」
「……ふ。それでこそ帝国軍人だ」
「連邦の裏切り者ですけどね」
「今後お前をそう呼ぶことは自分が許さない。お前自身であってもな」
「まったく、貴方という人は……!」
多勢に無勢、そんな中、2人は剣を振るい、連邦兵達を倒して、四つ目の拠点を落とすのだった。
〔拠点制圧後〕
「さすがに連続射撃はなさそうだな」
「ですね。あれだけの威力だ。マナの充填に時間もかかりますよ」
「確かにな」
〔道中台詞〕
「バスチアンさん……。体の方は大丈夫ですか?」
「問題ない」
「……すみません。聞いた僕が間違っていました……。貴方はどんな状況でも"問題ない"と言いますもんね。でも……この先はなるべく僕に任せて下さい」
「しかしそれでは……」
「狼将を補佐しり抜く者。それこそが……」
「狼将補…か?」
「ご名答です」
「ふ…。ではよろしく頼む」
「はい、問題ありません!」
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「あとは、ここを落とせば……」
そう言ってユーゴは、本陣へ突入した。
「……さすがだな」
本陣ではリゼットが待ち構えていた。
「アレをいなした上に、ここまで進軍してくるとは」
「リゼット……!」
ユーゴがリゼットを睨めば、彼女はバツの悪そうな顔をした。
「……シモン。……お前には語りたいことが多いが……」
リゼットは腰に提げた銃へ手を伸ばす。
「まずは連邦の軍人として、務めを果たさせてもらおう」
そう言って彼女は銃口をユーゴとバスチアンへ向けた。
「…やれるか、ユーゴ」
「……ええ。もちろんです。帝国軍人として!」
「よく言った」
ユーゴは長剣を、バスチアンは刀を構えた。
「……来い、ユーゴ・シモン」
「リゼットオオオオ!」
ユーゴは、長剣の先をリゼットへ向け突進していった。
「曲がりなりにも私はお前の元教官だ。お前の剣筋から弱点まですべて理解している。それでも私に剣を向けるというのか?」
「僕はもうあの頃の僕じゃない!それに相手の戦い方を知っているのは、僕だって同じこと!」
「言うようになったじゃないか……。面白い……全力で掛かってこい!」
〔リゼット残りHP3分の1〕
「ふ……。やるじゃないか、ユーゴ・シモン。しかも黒狼将も一緒とは、やはり分が悪いな……」
「ユーゴはお前のことを敵と言った。ならば自分は狼将として同志の敵を討つまでだ」
「バスチアンさん……。……二人で倒しましょう。帝国の敵を……!」