エピソードまとめ
□ユーゴ・シモン
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ep.2 決別の戦場
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999Y.C. ユール連邦 西ロシュワール湖畔
《新兵器威力偵察任務》
〔道中会話〕
「バスチアンさん、今回の任務は……」
「知っている。敵、新兵器の囮になるのだろう?」
「それがわかっていながら、それでも貴方は……」
「以前も言ったろうそれこそが我々……」
「狼将という存在……」
「そういうことだ」
「わかりました。僕も狼将補として腹を括ります」
「良い気迫だ、ユーゴ」
〔道中会話〕
「連邦の兵器か……」
「どうした?」
「いえ。以前、ロランス隊の二人と、連邦の砦を落としたことがあるのですが、その時連邦側に強力な迎撃兵器がありまして……」
「それが今回も配置されていると?」
「……同じ物だとしたら、すでに迎撃されていそうなので、違う気はしますが……。用心して行きましょう」
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連邦軍の拠点へ入ると、女の怒鳴り声が聞こえてきた。
「わからん奴らだな!なぜ命を粗末にしたがる!」
薄紫色の髪の、スタイルのいい女性が、連邦兵達と言い争っていた。
「ですが、上官命令です。我々も兵として覚悟を……」
「すべてを知って覚悟の上に就く、任務ならば構わないさ。だがこの状況は……」
ユーゴは、この女を知っていた。
「……教官?」
そう呼べば、女はこちらを向いた。
「ユーゴ・シモン……!」
女は驚いたように目を見開いた。
「来たな。黒狼将!貴様はここで止める!」
そう言って連邦兵たちが武器を構え、女が慌てる。
「だから、待てと言っている今はそんな場合では……くっ!?」
何故か連邦兵を止めようとしていた女に、ユーゴは容赦なく剣を振り下ろした。
「お久しぶりです、教官。……いや、リゼット」
「シモン。話を聞いてくれ我々は……」
「黙れ!今更この僕が、貴女の言葉を信じられると?僕らの人生を滅茶苦茶にした、貴女の言葉など……!」
ユーゴは、再びリゼットに向かって剣を振るう。
「それは……」
リゼットは言い淀んで、銃を構えつつも、攻撃より先にユーゴから距離を取る。
「……バスチアンさん。彼女は連邦の精鋭、ブレイズ達の教官です。ここで倒せば帝国の勝利に大きく貢献できます!」
「良いのか?彼女はお前にとって……」
「…敵です」
ユーゴはハッキリとそう答える。
「それも、最も憎むべき敵の一人だ」
「シモン……」
「……承知した。お前がそう言うのであれば」
そう言って、バスチアンも連邦兵達を薙ぎ倒していく。
「ありがとうございます」
ユーゴは礼をいい、剣をリゼットに向けて走った。
防戦一方で一切攻めて来ないリゼットに攻撃を躱され続けてる途中で、遠くの方から、ガシャンとなにか大きな物が動く音が聞こえた。
「……ん?まさか………」
リゼットが、眉間に皺を寄せ、拠点の外を見た。
「チッ!馬鹿どもが」
そう言って、リゼットは走って拠点を出ていってしまう。
「待て、リゼット!バスチアンさん!早く彼女のあとを追いましょう!」
「駄目だ」
今にも追いかけようとしたユーゴをバスチアンが止めた。
「どうしてです?」
「先日のように戦力が集中したところを叩くとでも?」
「いや、今回の任務は威力偵察だ。偵察ついでに敵拠点を落とし、兵器を破壊することはあっても彼女を追うことは自分達の目的ではない」
「それは……」
ユーゴは口を噤んだ。
「任務は任務だ。命令に従わず私的な行動を執る者は兵として未熟だとは思わないか?」
「……わかりました。では、ひとまず次の拠点に向かいましょう」
そう言ってユーゴは先を目指して進み出した。
〔道中会話〕
「しかし……ユーゴ、彼女は本当に……」
「敵ですよ。僕にとって最悪の、絶対に許すことのできない……敵」
「……そうか」
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〔連邦軍 第2拠点〕
「待っていたぞ!黒狼将!」
「……待っていた?」
「ふむ……。歓迎されているなら全力で参ろう」
〔兵長出陣〕
「者ども、背を向けるな!」
〔拠点制圧〕
「随分とあっけなかったな」
〔道中会話〕
「……どうやら連邦は、こちらが攻めて来ることは想定済みのようですね。そうなるともはやこれは」
「そうだな。威力偵察ではなく拠点攻めと言えるだろう」
「……はあ。やっぱり貴方といるときませんね」
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〔連邦軍 第3拠点〕
「黒狼将だ!かかれえー!」
「やはりこちらの動きが読まれているようですね」
「問題ない。すぐに散らしてやろう」
〔兵長出陣〕
「この戦況を必ずくつがえすぞ!」
〔拠点制圧〕
「く……俺達如きでは話にならない……」
〔道中会話〕
「ただ……この状況は少し不可解です」
「どうした?」
「連邦側の言う通りこれでは話にならない。黒狼将を相手取ろうという人数でも戦力でもない」
「確かに、聖騎士の一人も配置されていないのではな」
「そうなんですよ。これじゃまるでただの時間稼ぎだけど……彼らの様子を見る限り、黒狼将の襲撃から逃れるためではなさそうだし。だとしたらいったいなんのために………」