エピソードまとめ
□ユーゴ・シモン
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ep.2 決別の戦場
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〔連邦軍 本陣〕
「ここだけは落とされてなるものか!連邦のため!大切な人達を守るため!皆の者死力を尽くして戦え!」
「連邦のため……」
「……やれるか?ユーゴ」
「はい。守るものがあるのは僕も同じです。だったらあとはもう、どちらが強いか……。それだけだ」
「いい覚悟だ」
〔兵長出陣〕
「我らが守りさせはせぬ!」
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「やりましたね……」
そう言ってユーゴは剣を収めた。
「ああ。これで任務完了だ。じき、後続の部隊もやって来るだろう」
そう言いながら、バスチアンも刀を鞘に収めた。
「いやあ、相変わらずお見事でした、黒狼将様!」
そう言って戦いが終わるのを見計らったかのように、帝国兵が現れる。
「この戦果で、我々の部隊も安泰です!」
「な……!」
後からノコノコ現れてそう言った帝国兵にユーゴは憤りを感じた。
「一番辛い場面を全部、押しつけておいて、なにを……!」
「ユーゴ」
諭すようにバスチアンに名を呼ばれる。
「……くっ」
「どうかされましたか?」
「いや、問題ない」
「そうですか?では、我々は、接収作業に入りますので!」
「バスチアンさんは……こんな扱いでいいのですか?」
「ああ。だが、自分だけではない。狼将とはそういうものだ。お前は本当にこんなものを目指しているのか?」
「そ、それは……」
「走ることは大事だ。だがな、ユーゴ。時折、立ち止まって考えてみるがいい。……走り続ける事しか、できなくなる前にな」
「バスチアンさん………」
「では、我々も帰投しよう」
「はい……。これが…狼将……。僕が目指す強さ……か」
ユーゴはポツリと呟いて、バスチアンと共に帝国へと帰っていくのだった。
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【CHAPTER4 獅子の面影】
999Y.C. ジルドラ帝国 帝都内帝国軍兵舎
「今日は、上官の部屋に呼ばれていたな……。急いで向かおう」
そう言ってユーゴは訓練場から階段を登って行くのだった。
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〔兵舎内会話 訓練場 帝国兵〕
「俺には目標があるんだ」
「へえ、どんなですか?」
「連邦の人間を皆殺しにする」
「……えっ?」
「これまで連邦に殺されていった、仲間達のために」
「そう…ですよね……」
〔兵舎内会話 訓練場 帝国兵上官〕
「帝国兵の多くがここで、剣術の鍛錬を積んでいる。それが故にどの兵も、同じような剣捌きになりがちだ」
「確かにそうでしょうね」
「帝国流と言えば聞こえはいいが、同じ動きばかりでは伸びしろがない。そこで連邦出のお前に頼みがある」
「なんでしょう?」
「すべての兵と手合わせをしてもらいたい」
「す、すべてですか?」
「ああ、そうすれば全員が、日頃お前に対して溜まっている鬱憤を晴らすことができる」
「そういうことですか。考えておきます……」
〔兵舎内会話 左階段前 帝国兵〕
「あ、先日はありがとうございました!おかげさまで我々も、楽に一帯を接収できましたよ!やはり頼りになりますね!黒狼将様は!」
「……本人は悪気ないんだろうけど、なんか引っ掛かるよな……」
「どうかされました?」
「いえ……なんでも」
〔兵舎内会話 訓練場 帝国兵〕
「バスチアン様のいる、戦場はいいよな。残党狩りだけ楽しめばいいんだからよ。ホント、黒狼将様々だぜ」
〔兵舎内会話 右階段前〕
「黒狼将様と裏切り者……。また二人で拠点を制圧したらしいな……」
「ああ、これで何度目だろうな……」
「ど、どうせ今回も。奴は付いて回っただけだろうさ」
「……でもよ、それだけなら黒狼村様が、狼将補を下ろすよう、上に言いそうだけど……」
「だよな……あの男の名前……なんだっけ?」
「ユーゴ・シモンだろ?」
「……次期狼将かもしれないし、一応ちゃんと覚えておくか……」
〔兵舎内会話 アメリー〕
「ろーしょーほのお仕事、頑張ってるみたいだね!」
「ええ、それなりに慣れては来ました」
「そっかあ。良かったあ。クロードくんも負けてられねーって、戦闘の修行とか一生懸命やってるし、ロランス隊みんなで、えいえいおーだね!」
「はい、えいえいおーですね」
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上官の部屋の扉を開けて中にはいる。
「ああ、来てくれたか。活躍は聞いてるよ。黒狼将様の手綱を上手く握っているそうじゃないか」
「その言い方は………」
「そんなキミ達に、新しい任務がある。国境前線地帯に陣を敷く連邦軍に、新兵器導入の予兆と見られる動きが確認された」
「では、我々は、それを調査に……?」
「いや、二人には威力偵察を頼みたい。戦場にて兵器を確認し、可能であれば速やかに破壊……。どうだ、簡単だろう?」
ユーゴは驚いて目を見開く。
「待って下さい!それが作戦!?バスチアンさんを囮にしようとしているとしか……!」
「キミは黒狼将様の実力を疑っているのか?」
「そういうわけでは……!」
ユーゴはグッと唇を噛む。
「……わかりました。僕も彼と一緒に任務に出ます。それでいいのでしょう?」
「ああ。期待しているよ」
上官は何処か鼻で笑うようにそう言った。
「……はい。失礼します」
苛立ったようにバンッと扉を閉めてユーゴは部屋を出る。
「これもまた帝国……か」
ポツリと呟いて、ユーゴは任務へ向かう準備に取り掛かるのだった。