エピソードまとめ

□ユーゴ・シモン
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ep.2 決別の戦場
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「帝国兵諸君……」

帝国兵達が集められた一室で、宰相アウグストが前に立ち口を開いた。

「皆の弛まぬ働きにより、じきこの戦争は終わります。ここに至るまでの道には多くの犠牲がありました。いったい何人の同胞や罪なき民が、連邦の暴虐に散り、非道に屈したでしょう」

そう語るのを聞く帝国兵の中には、ロランス隊もいた。

「そのすべてを無駄にせぬため、我々には勝利の義務があります。だからこそ皆には最後まで力を貸して欲しい。共に掴もうではありませんか。永久の安寧と繁栄を!」

胸の前でグッと拳を握るアウグストを見て、帝国兵達は「おお!」と拳を掲げた。

ロランス隊もアメリーが、「おお!」と叫び、ファルクが悪態つくように顎を上げ、ユーゴはただ真っ直ぐ前を見据えた。

「……最後に一つ。ユーゴ・シモン、こちらへ」

「……え?」

急な指名にユーゴは固まった。

「聞こえなかったのか?閣下がお呼びだ」

アウグストの傍には控えた上官がそう言う。

「……はっ!」

慌てて返事をして、ユーゴは帝国兵達の間を通り、アウグストの前に出る。

「貴官の目覚ましい功績は、私の耳にも届いている。……よって、貴官をこれより、"狼将補"へと任命する」

「……は?」

ユーゴは驚いて、その青い眼を見開いた。

「待って下さい閣下!私はまだそのような……!」

「……ユーゴ・シモン。今の貴様に、立ち止まっている余裕があるのか?」

「……それは」

アウグストの言葉にユーゴは俯いた。

「私からは以上だ。諸君らには、より一層の活躍を期待する。我らが帝国のために!」

ユーゴを置いてアウグストは集会の締めに入った。

「我らが帝国のために!」

悩むユーゴの後ろで、帝国兵達が一斉に敬礼するのであった。

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【CHAPTER1 黒狼将の戦い】
999Y.C. ジルドラ帝国 帝都内帝国軍兵舎


「……はあ」

集会が終わって兵達が散りゆく中、ユーゴはため息を吐いた。

「……なにシケた面してやがんだよ?シャキッとしろや。天下の狼将補だろ、テメエは」

そう言ってファルクがユーゴの前に立つ。

「キミは不当だと思わないのかい?僕の功績は隊として挙げたものばかりなのに……」

「確かに不公平だわな。んなの生まれた時からそうさ。恵まれたヤツ見ると、はらわた煮えくり返るぜ」

「…だよね」

「だからそんな時、オレがすることはただ一つ。文句なしの実力で追い上げて そいつらの鼻をあかす!」

「ファルク……」

「ってことでテメエは気にせず先走っとけよ。じきにオレ様が華麗に追い抜いて、"ざまあ"って言ってやらあ」

「……ふふ、キミって人は……」

「あ、ユーゴくん!」

そう言ってアメリーが駆け寄ってきた。

「どうされました隊長」

「なんか上官がユーゴくんのこと呼んでたよ
。任務だって」

「お?早速"狼将補"としての出動か?」

「かもしれないね……。じゃ、二人とも」

「いってらっしゃーい。あ、でも」

元気に見送りの言葉を掛けたアメリーは、何故か言葉を、そう続けた。

「はい?」

なんだろうとユーゴは首を傾げる。

「ろーしょーほになってもユーゴくんは、ロランス隊の仲間だからね!」

そう言ってアメリーはニコッと笑った。

「あくまでこっちが本職で、一個雑用が増えただけと思え」

ファルクもそう付け加える。

「ええ、もちろん。肝に銘じておきます」

「うん、よろしい」

「では、行ってきます!」

2人にそう告げて、ユーゴは歩き出した。

「さてと、上官の部屋に向かおう」

上官の部屋は訓練場の階段を登った2階にある、ユーゴまずは階段へ向かうのだった。

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〔兵舎内会話 ファルク〕
「んだよ、まだ上官のトコ行ってねえのか?ちんたらしてっと代わりに、オレ様が手柄立てちまうぞ?……ま、色々思うこともあるだろうがよ。ひとまず、あんま難しく考えずに行ってきやがれ」

「ああ……わかったよ、ありがとう」


〔兵舎内会話 アメリー〕
「あのさ、ろーしょーほって偉いんだよね?」

「さあ……。偉いとかそういうものではない気が………」

「そうかなあ?ユーゴくんがろーしょーほ……ってことは、もしかしてロランス隊の隊長もユーゴくんになるのかな?」

「それはないと思います。ロランス隊の隊長は、アメリー・ロランスしかあり得ませんから」

「……ユーゴくん嬉しいこと言ってくれるね!」


〔兵舎内会話 訓練場 帝国兵1〕
「まさか宰相間下から、お言葉をいただけるなんて……。これからも頑張って帝国に勝利を持ち帰るぞ!」


〔兵舎内会話 右階段前 帝国兵2人組〕
「狼将補って……狼将補佐ってことだよな?」

「平たく言えばな。これまでそんな役職はなかったが」

「つまり、雑用の端役ってことか?」

「逆だろ。そんな特例枠を今奴に設けるってことは……"次期狼将"を言い渡されたも同然だ」

「連邦出身の裏切り者が?なんでそんなことに……」

「俺に聞かれても知らねえよ」


〔兵舎内会話 訓練場 帝国兵2〕
「くそ……。見せしめの斬首とかだと思ったのによ。ただのお気に入り紹介の時間とはな……」

「僕のことはどう言ってくれても構わないけど、宰相閣下を侮辱するような発言は、それこそ断罪ものだと思うよ」

「うぐ……。わ、わかってるよ」


〔兵舎内会話 左階段前 帝国兵〕
「宰相様が言っていた通り、我らが帝国軍は現在、破竹の快進撃を続けている。連邦の命運たるやもはや風前の灯火と言っていいだろう。奴らもさっさと降伏すればいいものを……」

「そうですね……」


〔兵舎内会話 食堂前 帝国兵〕
※柔らか胸肉のヴァイスヴルストのレシピ

「任務に行くならきちんと飯は食ってけよ!いざという時に力が出なくては困るからな。今日のメニューは柔らか胸肉のヴァイスヴルストだ。真っ白なソーセージにかぶりついてくれ!」



〔小ネタ〕
※ユーゴep.1でファルクが壊していた、右階段は、この時点で修復されている。
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