エピソードまとめ

□ユーゴ・シモン
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ep.1 裏切り者
─────────♢────────


「……つまりキミ達は我々帝国にとって…………」

「おい、見ろよ。あいつが例の……」

帝国の新兵が集められ上官が話をする中、後ろからひそひそ、とそんな声が聴こえる。

「ああ。連邦を裏切った、元ブレイズ。ユーゴ・シモンだな」

新兵達が見ているのは話をしている上官ではなく、慣れべられた新兵達の1番前の列に立つ、1人だけ緑色の隊服を着た褐色肌に金髪の青年。

「そんなヤツがなんでまた、帝国軍に?」

「さあな」

「でも、裏切りの理由なんて、結局は我欲だろ。実際、ヴァレンシュタイン宰相の肝入りらしい」

「ってことは、出世コースかよ。卑怯物にでかい顔されちゃたまんねえよな」

「仲間や祖国を裏切るようなヤツはクズだ」

「……まあ、少し感心もするぜ。俺達の中に堂々と混じるツラの皮の厚さにはな」

「ハハッ、違いない」

ユーゴ・シモンは、全て聞こえていながらそれらを無視し、前を見据えていた。

「……では、諸君の忠誠と健闘を祈り、この話を終わりとさせていただく。最後に、敬礼復唱!我らが帝国のために!」

「「「我らが帝国のために!」」」

ユーゴ含める一同は右手の拳を胸の前に掲げた。




【CHAPTER1 手荒な歓迎】
999Y.C. ジルドラ帝国 帝都内帝国軍兵舎

「ここが僕の新しい居場所になるんだ……。まずは上官にご挨拶に伺うか」

そう言ってユーゴは先程、新兵達に話をしていた上官の元へ向かった。

「キミがユーゴ・シモンか?」

「はい、そうです!これからお世話になります!」

「そうまらなくていい。キミは他の兵達と違うのだから」

「いえ、それは……」

「宰相様からもよろしくと言付かっているからね」

「お気遣い、ありがとうございます」

「そんなキミが功績を上げるのに、おあつらえ向きの隊を後ほど紹介するよ」

「……それは、精鋭部隊ということですか?」

「あー……まあ精鋭と言えば精鋭なのだが……」

「上官?」

「……ま、なにはともあれ。とりあえず部屋に荷物を置いて来なさい。部屋ならそこの階段を上がって右側にあるからな」

「は、はい、了解しました!……あの上官、食客扱いは結構ですので僕も一兵士として皆と同じく……」

「ああ、そういうのはいいから。キミはここで適度にキャリアを積めばいい。あとは宰相様がどうとでもなさってくれる」

「いえ、そういうわけには……!」

「だから、余計な問題だけ起こさないでくれたまえよ。……たとえば、無駄に上官にたて突くような……ね」

「し、失礼いたしました…………」

ユーゴは上官に頭をさげ、大人しく言われた通り部屋に荷物を置きに行くことにした。


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〔兵舎内会話 右側の階段前〕
「なんだお前?こっちの階段は通れないぞ」

「どうしてですか?」

「ちょっと前にファルクの野郎が他の兵と揉めて、階段に穴を開けやがったから修繕中なんだよ」

「……なるほど、兵同士の揉め事で……。野蛮な兵もいるんですね」

「ホント勘弁して欲しいぜってことで、上の階へ行きたかったら反対側の階段を使ってくれ」


〔兵舎内会話 3人で話す兵士達〕
「おい、裏切り者がこっち見てるぜ?」

「宰相様はどうしてこんなヤツを……」

「それ以上はやめとけ、あんまり言うと宰相様にチクられるぜ?」

「おっと違いねえ。我欲のためならなんでもするって顔してるもんな」


〔兵舎内会話 同期兵士〕
「こいつが連邦からの……」

「あんまり見るなよ。いつ、後ろから刺されるか、わかったもんじゃないぜ?」

「まったくこんなヤツと寝食をともにするのかよ……」

「……はは、これからよろしく……」

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「よし、部屋に行こう。階段を上がって右って言ってたけど……」


ユーゴは壊れていない左側の方の階段へ向かい登ろうとした。
上から薄紫色の髪の女性の兵が降りてくるのを見て、右側に避けようとしたら、

「ひあーっ!」

女性の兵士は段差を降りるのに足を絡ませコケて階段から落ちてくる。

「え、ちょっ……」

咄嗟に腕を伸ばし抱き止める。
勢いで、女性の豊満な胸が顔面に押し付けられたが、何とか支え切り、ユーゴは女性をゆっくりその場に下ろした。

「えへへ、ありがとうございます!おかげで助かりました!」

「え、ええ。……割と本格的に危ない転び方をしてましたしね」

「はい、まさに休止に一生です!本当に幸運でした!」

「はあ……それは、良かったですね」

「では、私はこれで!ありがとうございました。ユーゴ・シモンくん」

女性の兵はひょいと片手を上げ去っていく。

「どういたしまして。……あれ?僕、名前、名乗ったっけ?」

去っていく女性を見送りながら首を傾げたユーゴは、ま、いっか、と呟いた。

「……よし。改めて部屋に向かおう」

そう言って階段を登りきると直ぐに扉があった。

「ここは食事場か……ん?なにか聞こえるな……」

ユーゴは立ち止まって聞き耳を立てた。

「ああ?なんだってその"元ブレイズ"がうちに?」

「噂だと宰相様の采配だとか」

「あのオッサンの?ったく相変わらずわけわからねえな」

「なんにせよ、表向きでも仲良くしといた方がいいかもな。将来の狼将様かもしれないぞ」

「はあ!?狼将だア?なんで連邦の裏切り野郎が……!」

「いや、俺に絡まれても……」



「……どうも嫌な流れだな。ここは早く通り過ぎよう」


そう言ってユーゴは足早に食事場の前を通り過ぎた。


〔兵舎内会話 2階真ん中の扉〕
「ここより先は上官の部屋だ。用がない者は近付くでない!」
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