エピソードまとめ
□ガスパル・エルベ
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ep.1 国家の犬
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「やっとここまで来たか……」
キャサリンちゃんを倒した辺りまで戻ってきた。
「"行きはよいよい帰りは怖い"ってね。ここを抜けたらこの任務も終わりか……。……はあ。ホント長えおつとめだったぜ」
そう言って東門の方へ向かった。
すると、門は轟轟と燃えていてとても通れる様子ではなかった。
「……火を放つなんて相変わらずガサツだなあ。これじゃ後続部隊も困るんじゃ……。……あーなるほど。自分達だけでやるつもりか。リゼット……変わんないなお前は。……さて仕方ない。こうなったら西門目指しますか」
そう言ってガスパルは行きしに使った西門の方へ向かう。
「この任務が終わったらなにをするかな。ひとまず近くで美味いものでも…………と、やべえやべえ。こういうこと言う奴から、死ぬんだよなあ、この仕事」
西門に着くとやっぱり兵士がいた。
「ん?お前はパン屋の……?」
「どうも。いやはや大変なことに、なってしまいましたね。いやあ、恐ろしい恐ろしい。じゃあ自分はこれで。今後ともライザーベーカリーをごひいきに……」
「……その武器はなんだ。入った時にはなかったはずだが」
「あー……その拾いまして」
「拾った……?」
「そうそう。だから早速護身用として……」
「……連邦の犬め!逃がすな、殺せ!」
「ですよねー」
「貴様……連邦のスパイだったのか。となるとあのパン屋も……!?」
「……ああ、あのマヌケなお人好しのことか。ははっ、パン屋も村の奴らも騙されただけに決まってるだろ?すべては超有能なスパイたる、この俺だけの大手柄さ」
「よくもぬけぬけと……ここは絶対に通さないぞ!」
「いいや、通してもらうぜ。最初に会った時のようにな」
ぞろぞろと集まり兵達をガスパルはバンバンと撃ち抜いていく。
「くそっ……!やめろ……やめるんだ!ここは絶対に……通すわけには…………。お前を……通したとバレたら……、俺の名誉に…傷がつく……!」
「………この状況で出てくる言葉がそれかい。名誉どころか居場所さえもアンタにはなくなるってのに……」
ガスパルは最後の1人の頭を撃ち抜いた。
「全部片付いたな。任務完了だ」
そう言って、難なく西門を出てジナーホルツ村の方へと向かって歩く。
「……パスト、聞こえるか?」
ガスパルは耳に手を当て、連絡を取る。
「生き延びたか。では帰還しろ」
「よくやったの一言ぐらい、ないもんですかね?」
「ないな。特に村人との交流には実に無駄が多かった」
「無駄……ですか。連邦の犬として頑張ったつもりですけどね?」
「いや無駄だ。そしてその結果が……"それ"だ」
「それ?」
首を傾げながら、ガスパルは村の門を開いた。
「村が連邦に押さえられたのは、てめえのせいか!」
「あんた俺達を騙していたのか?」
村に入るなりそうかけ投げられ、パストの言っていたのはこれか、と理解した。
「どうしてこんなことを………」
畜産家の女性が、
「職探しなんて嘘だったんだね」
子連れの奥さんが、
「あなたはパンカーじゃない……ただのフェイカーよ……!」
レシピをくれたパンカーが、
「おい……嘘だって言ってくれよ……。なあ……」
ライザーに口利きしてくれたおじさんが、
「おじさんは"卑怯者のガスパル"だよ」
カールの友達の女の子が、
「あんた人の顔にどれだけ泥を塗ったかわかってるのか!?」
農家の若者が、
「連邦の犬め……!村に入れるべきじゃなかった……!」
家に泊めてやると言っていた老人が……。
連邦兵達が彼に敬礼し頭をさげる中、村の皆がガスパルを非難した。
何食わぬ顔でガスパルは村を歩き、パン屋の前へと辿り着いた。
「ガスパルさん……連邦の犬ってなに……?」
カールにそう訊ねられた。
「……よお、カール。少しは親父さんとゆっくり命日を過ごせたか?」
「う、うん」
「そいつあ、良かった」
「あ、あの!本当にガスパルさんは……!」
「なあ、ガスパルさんよ。俺達はこれからどうなる?」
「……別に、どうということもない。税の納め先が変わる程度ですよ」
「村には住めるのか?」
「ええ。村に連邦兵が居るのは、あくまで一時的です。帝国兵が潜んでるかもしれませんからね。砦の制圧と並行して村の調査が行われるだけで、調査が終わったら戻れます」
「そうか。じゃあ、もう一つ質問だ。俺達は…………テメエのその薄汚ねえツラ、いつまで見ればいい?」
「これでもお前は自分が"よくやった"と思うか?」
耳元でパストがそう尋ねる。
「……悔しいけど、あんたの言う通りだな。さすがの俺も深手だ、こりゃ」
村から外れたガスパルはそう答えた。
「……なぜ、言わなかった?」
「なんの話だ?」
「お前も知っていたはずだ。本来ならば、明日あの村は……砦の帝国兵により、蹂躙されるはずだった」
「ああ……そのことか」
そう呟いて、ガスパルは数日前のことを思い出す。
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「しかし、あのパン屋も不憫だな」
「え、なにがですか?」
「お前、知らないのか?実は近々な……あの村を潰して、新たな軍事拠点にするんだと」
「マジですか、それじゃあ……あのパン屋、村を潰す俺達のため、せっせとパン運んでんスか?」
「ああ……傑作だろ?」
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「そんなの言っても無意味だろ。無駄なショックを与えて生産性を下げても仕方ない」
「ふむ、その判断は評価に値するな。……ガスパル。"よくやった"」
「……どうも」
そう言って通信を切る。
「……へへっ、配送のパン、一つくすねといたんだよな」
そう言って、ガスパルはポケットから白いパンを一つ取り出し齧った。
「……かあ、やっぱ美味えなあ。ライザーベーカリーのパンは!帝国一と思っていたのだけは本当だったんだけどなあ……」
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〔エピローグ〕
「しっかし、あの少将。よくここまで調べたな」
荒野を歩くガスパルは回収した資料をめくる。
「無能そうだけど、案外できるヤツだったのか?それとも、背後に誰かいたか……。なんにせよ、これは確かに、値千金の調査資料だよ。帝国どころか連邦にとっても。しかし世界は狭いっつーか、因果なものだよなあ。そう、この……」
ガスパルはピタリと足を止める。
「ル・サント村の惨劇に、関する調査報告……つまりは、レオくん達の故郷が滅んだ理由のすべてを」
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〔次回予告〕
次回 テイルズオブルミナリア
エピソード ガスパル
ep.2 信頼の証明
次はもうちょっと楽な任務にならないかねえ