エピソードまとめ

□ガスパル・エルベ
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ep.1 国家の犬
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「目標物は回収したか」

ガスパルが司令室を出ようとしたら、連絡が来た。

「アンタから連絡してくるとは珍しいじゃないか」

「無駄話をしている暇はない、急ぎ脱出したまえ」

「なんだ?別に今更、急ぐ理由は……」

「連邦軍が砦の武力制圧にかかった。じき、そこは戦場となる」

「あ、そう…………はあ!?なんでこのタイミングで……!」

「私が許可したからだが、なにか?」

「おいおいおい!どういうつもりだよあんた!」

「お前のおかげで内部構造の把握が終わったから仕掛けた。ちなみに先行した第一強襲部隊だが当然……お前のことは知らせていない」

「なぜ!?」

「彼女らにお前が顔を見られた場合、残念だが両方とも消えてもらう」

「だからなぜ!?」

「今のお前は"いないもの"であり、それ以上に、その書類が公的には"あってはならぬもの"だからだ」

「っ!ああ、くそっ!わかったよ!帰ったら特別報酬弾めよ、パスト!」

「ちなみに数分後には先行部隊に続き、本隊が到着する。それまでに脱出できない場合もお前はアウトということだ。健闘を祈る」


【CHAPTER4 脱出】

「ま、また切りやがった……。……言われなくとも生きて帰りますよ。こんなところで死んでいる暇ないんでね」

ガスパルは脱出するため廊下を走った。


〔LUSH1〕
「なんだお前!?なぜ司令室の方から……!」

帝国兵達に見つかって、わらわらと集まってきた。

「ああ、これには深い事情が……」

「曲者だ!囲めえええ!」

「……さすがに口で乗り切れる段階でもないか。はあ……こういうのはガラじゃないんだが、ここは押し通らせてもらう!」


〔LUSH2〕
「よし倒しきったな……」

「あそこだ!絶対に通すな!」

「げっ!また来やがった!くそっ時間がないってのに……。つーか先行部隊ってのは、いつ頃到着するんだ?詳細をちゃんと教えてくれなきゃ。こっちも作戦練りようがないだろう。パストめ……いつも曖昧な指示出しやがって。むしろ、そうやって俺があたふたするのを、楽しんでるんじゃないだろうな。……ハラスメントで訴えてやる」


〔LUSH3〕
「はあ……まったく。さすがに応えるねえ。でもこれで……」

「かかれえええっ!」

「おいおいおいおい、マジかよ……。せっかく能力で身を隠してきたのに、結局全員と戦うことに、なってるんじゃないのこれ。はあ……。だったら最初っからまどろっこしいことせずに、片っ端からやっていけばよかったよ。……いやまあそういうのは俺のガラじゃねえか。どこかの黒狼村や鬼教官じゃあるまいし」

〔LUSH4〕
「さて、そろそろ解放して…………もらえなさそうだね。まずいなこれ間に合うのか?たとえ全員迎え撃ったとしても、先行部隊が来たらゲームオーバーだ。"いないはず"の俺の存在は、"なかったはず"のこの書類とともに消える。……そうなったら、この中身を知ってる人間は誰もいなくなるのか。……そいつは駄目だな。少将が言っていた通り、これはなかなか価値ある情報だ。俺にとってもね」


〔FINAL LUSH〕
「そろそろ本当に向かわないとマズいな」

「ここから先は通さん!」

「こりゃまた厄介そうなのが出てきたな。……早く片付けないと。まったく、帝国兵の皆さんは、こんなに俺にかかりっきりでいいのかねえ。ここで戦力を失くしたら、このあともっとつらくなるのに」
「……ん、待てよ?ということは俺のこの戦闘は少なからず……。先行部隊とやらの助太刀になってるってことか?……危険に晒しながら、そこまでフォローしてやるなんて、なんて連邦思いなんだろうね、ガスパルさんは。……やっぱ、特別報酬もらわないと割に合わないな」


〔LUSH終了〕
「や、やっと終わったか……?だがもうかなり時間がない。急ごう」

そう言ってガスパルは来た道を走り抜ける。


「どうやらまだ。先行部隊は到着してないらしいな。混乱に乗じて脱出しやすくなるから、正直早く来てもらった方が助かるんだが。こそこそ隠れて通ってたところを、こんなふうに爆走することになるとは……まったく。急いで脱出だとか息切らしながら連戦だとか、そういうスマートじゃないのは趣味じゃないんだが。……どうにも今回の任務は色々と調子が狂う」



帝国兵を倒しながら走り抜けたガスパルは、柱の後ろで息を整える。

「おっと、これは……」

柱の向こうから覗いて見えた光景に、ガスパルは慌てて身を潜める。
視線の先では、二丁拳銃を持った藤紫色の髪の女性を先頭に、帝国兵を蹴散らしながらメガネをかけた双剣士の女子学生と、プラチナブロンドの髪を持つ長剣士の男子学生が一緒に進んでいた。

「おいおい、先行部隊ってあいつらのことかよ。パストのやろうとんでもねえの寄越しやがって」

ガスパルはよく知った幼馴染の顔見て顔を歪めた。

「このまま一気に制圧するぞ!続け、二人とも!」

「「はい!」」

女性の言葉に返事して、2人の学生はついて行く。

「っと」

こちら側に来るのを見てガスパルはステルスを発動する。
横を走り抜けて行く中、男子学生だけ足を止めた。

「ん?」

柱の方を一瞬見たあと、学生は前の2人に続いてそのまま走り去った。

「……ふう。相変わらず底が見えないねえ、あの子だけは。……リゼット達は東門を突破してきたみたいだな。なら俺もご相伴に預かって、そこから逃げさせてもらいますか」

そう言って柱の後ろから出た。

「おい隊長はどこだ!」

「さっきの女にやられて……」

「少将はどうした!?ご帰還されていたはずだ!」

「そ、それがお茶のあとから姿が見えず……!」


そんな帝国兵達の声が聞こえてきた。

「いい感じに混乱し始めてるみたいだな。まあ、でもどんなにあがこうが、すぐに決着はつくだろう。先行部隊がリゼット達ってのが運の尽き。帝国側の生存率は………絶望的だな」
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