エピソードまとめ

□ガスパル・エルベ
5ページ/8ページ

ep.1 国家の犬
─────────♢────────


ガスパルはその場で手を挙げパチンと指を鳴らした。

「俺の力は存在感を"消す"こと、周りから姿は見えなくなるが、物理的に透明になっているわけじゃない。触られちまったら気付かれるから、動作にも細心の注意を払わないと」

そう言ってガスパルは先程兵に言われた武器庫の方の通路へ向かう。
兵士たちがうろついているが、誰もガスパルに気づいては居ない。
彼はその兵たちの間を歩いて通り抜けていく。

「いやに見張りが多いな……。なんでよりにもよってそんな場所に、俺の武器を用意したんだ?まさかあの鬼畜上司……。わざとやったんじゃないだろうな……」

多くの兵達の隙間を抜けて、ガスパルは武器の中の木箱の前に立つ。

「到着っと……いやいや、我ながらいいスキル持ってんねえ。まさに天性の諜報員、まさに天性の………。こそ泥野郎……ってか」


ガスパルの脳裏に思い返されたのは、自分を見下ろす上裸の大男。

「ホント便利だよなあ、お前の力は」

「……ね、ねえ、父さん。俺、こんなこともう……」

「黙れ!お前は"道具"なんだ!口答えなんかしてんじゃねえ!」

「……はい。……ごめんなさい」

そう言って、幼き自分は謝ることしか出来なかった。


「…………どうも調子が狂うね、今回は。あの親子にあてられたか?はいはい、こういうのはやめ」

首を振ってガスパルは箱の前にしゃがむ。

「武器回収、回収っと」

蓋を開けて中にあった2丁の銃を取り出した。

「さて、これから先は、ちょっとだけ手荒に行くとしますか」

────────────────────

【CHAPTER3 重要書類】

「さてキャサリンちゃんの所へ向かいますか。武器も手に入ったし、これで先に進めるはずだが……。騒ぎになると面倒ださくっと終わらせよう」

ガスパルは来た道を戻り入口へ帰って来た。

「さーてここからが本番だな」

キャサリンちゃんのいる通路の柵を上げるレバを引き、ステルス状態で彼女に近づいていく。

「おっと、さすがに気づくか」

ぐるる、とキャサリンちゃんは唸り声を上げた。

「悪いな、キャサリンちゃん。恨みはないんだが……兵士さん達に俺を掃除させるのも忍びないんでね!」

そう言ってガスパルは銃を構えた。

「うっ……やっぱり近くで見ると強烈だな。こんなのを手懐けてるってだけで、帝国ってのは充分ヤバい国だと思うね。……さてキャサリンちゃん、そろそろ、お昼寝の時間と行こうか」


HP3分の1
「ふう……なかなか粘るねえ。そろそろ大人しくしてもらわないと、周りの兵士にも気付かれちまいそうだ。……まったく厄介だね "重要書類"ってやつは。紙切れのために、ここまで苦労させられるなんて。……こりゃ報酬を弾んでもらわないとな」


ガスパルはキャサリンちゃんを倒し、奥のレバーを上げた。

「ふう。やったはいいが……そこそこ大立ち回りしちまったな。先を急ごう」


柵が上り先の通路へ進むと訓練中なのか兵士達が大勢いた。

「これはまた随分お出迎えが多いねえ。見つからないように能力を使って進むか」

ステルスを使い、ガスパルは進んでいく。
その道中でお喋りをしている兵がいた。

「おい、明日の作戦に先立ってベッカー少将がお戻りだぞ」

「少将が?早いな」

「とりあえず、お茶にしたいと言うので、客室にお通しするよ」

「すぐ司令室に戻らないところが、あの人らしいよな」

「本当に……少将の気まぐれにも困りものだよ。民間業者からパンを仕入れてみたり……」

「そういや明日の作戦も、元はと言えば少将が……」

「どうやらここのトップが、客室にいるみたいだな。しかし、茶だのパンだのお好きなことで。……ちょいとご挨拶にでも伺ってみますか」

ガスパルはそこから右の通路の方へ向かっていく。

「しかし、敵の根城に丸腰で潜入するなんて冷静に考えてみたらだいぶ危なかったな。この能力があったからよかったものの……、あの上司も俺も、ちょっとこいつを過信しすぎじゃないかね」

兵士達のいるエリアを抜けて、ガスパルは能力を解いた。

「もう大丈夫だな。また危なくなったら使うとするか」


そう言って通路をぬけたすぐ先にまた兵士達が大勢いた。

「げ、こっちにもまたうじゃうじゃと…………さーて、休む暇はないぞ。能力くん」

ガスパルはまた、パチンと指を鳴らした。

「随分人がいるな……。もしかして例の少将が帰ってきたからか?まったく……面倒だねえ。……まあでも、貴族趣味のおかげで潜入できているわけだし、そこは感謝しておかないとな」

大勢の兵士たちの横をそろりとぬけて、廊下を進む。

「人の多いエリアを抜けたようだな。……といっても気は抜けないが」

そう言った矢先、押して開いた扉の先に兵士がいた。

「なんだ貴様!」

「ちっ!ひとまずそこをどいてもらおうか」

ガスパルはすぐさま銃の引き金を引き相手を仕留める。

「なんてったってここは敵地の中心部だ。正体がバレた瞬間なにもかも終わり……………人に指示出すだけの鬼畜上司が羨ましいよ。どうやって出世すりゃ、ああいう立場になれるのかね?……いや、別にあの立場にもなりたくはないか」

部屋を抜け、その先へ出ると中庭に続いていた。

「向こうにも部屋があるみたいだが……ここからは通れないようだな。わざわざ門を閉めてるってことは、この先にはなにか大事な物があるってことだ。……必要があれば迂回路を探そう」

中庭をぐるりと回り、上に続く階段を登る。

「客室はこの先か……、立ち寄る予定はなかったがいい機会だ。少将様がお茶しに来るってことは、なにか"掘り出し物"が見つかるかもしれない。そもそもそこに通される"客"が、どういう立場の人間かもわからないし、……見てみる価値はありそうだな」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ