エピソードまとめ

□ガスパル・エルベ
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ep.1 国家の犬
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村の住民に話を聞き終えたガスパルはまた、パン屋の前へと戻ってきた。

「あれどうしたの?お父さんなら配達中だけど……」

パン屋の前で友達と話していた様子の、カールがガスパルに気づいて声をかけた。

「いや、お前にちょっと用事があってな」

そう言ってガスパルはカールの前にしゃがむ。

「単刀直入に聞くぞ。もしかして去年の今頃ライザーさん……母親の命日にお前と過ごす約束、すっぽかしたりしたのか?」

「え!?ど、どうしてそれを?」

「そうだなあ……。お前の様子が変わった時期と大口取引が始まった時期の符合。さらに"母親の命日"と意味深な呟き。ここまで揃えば、もう"式"の成立には充分だ」

「すごい……ガスパルさんって何者?」

「え、あ……"できる無職"かな」

「なんか悲しい響きだね。でもそうだよ。お父さん、忘れたんだお母さんの命日」

「……そうか」

「今年は覚えてるかな……もう明日なんだけど」

「どうだろうな。でも……余裕を作ってやることならできそうだぜ」

「え……?」

首を傾げたカールと別れ、ガスパルはある場所に向かう。

「よし、次は父親の方だな。この時間ならたぶん酒場へ配達に行ってるだろう」


ガスパルの思った通り、ライザーは酒場の前にいた。

「……あんたか。……さっき村のヤツに言われたが、あんた、俺の仕事手伝うって?」

「ああ。あくまで手伝いだ。金をくれとは言わない」

「申し出はありがたいが、あんたになんの得がある?」

「美味しい、切れ端がもらえる」

「そんなことのために?」

「訂正しな。あんたのパンは"そんなこと"じゃないぜ」

「負けたよ。明日の朝店の前に来てくれ。給金も少ないが出す」

「いやそれは……」

「いいんだ。人手があると助かるのは事実だからな」

「……そういうことなら」

「明日から頼むぜガスパル」

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翌朝、ガスパルは早くに宿屋から出てパン屋に向かう。

「ふわあ……眠っ!寒っ!」

ジナーホルツ村は荒野にある村だからか、朝晩が異常に冷える。

「こんなに朝早いなんて、パン屋の仕事やばいな……さーて、無職男の初出勤といきますか」

ライザーベーカリーに到着すると、既にライザーは仕事に取り掛かっていた。

「来たな。早速だが仕事だ」

「任せてくれ。……砦への配送でもするかい?」

「いや、あれはいい。基本的に俺が運ぶ契約だからな」

「……そうかい」

「さしあたっては、材料の仕入れを頼みたい。このメモの場所を回って材料を仕入れてきてくれ」

「了解。早速行ってくる」

「頼んだぜ」

ライザーからメモを受け取って、ガスパルはパン屋を出る。

「メモによると必要な材料は小麦粉と卵……。それぞれ酒場と宿屋に近い店にあるみたいだな。順番に回って行くか」

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〔村内会話 パンカー〕※パン耳のグラタンのレシピ
「あら?もしかして……前に渡したレシピで 新しい可能性に気付いたのね!?」

「あ、いや俺は……」

「いいわ、それ以上言わないで。パンカーの間に言葉は必要ないの。私達は小麦粉と卵で 通じ合っているのだから!」

「意味がわかるようでわからない……」

「ええ、ええ。言いたいことはわかるわ。"パンの耳のカリカリソテー"の味を知って……もっといいものが欲しくなっちゃったのね?」

「いや、確かにそれは……」

「こうなることは最初からわかっていたの。だからあなたには、この中級者用レシピを用意したわ。さあ、作ってみてちょうだい」

「……まあもらえるもんは、もらっておきますか……」

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〔イベント会話 畜産家〕

「おやガスパルさん、ちょうどいいとこに。今さっき卵が来たんだよ。採れたてで新鮮だ。早くライザーさんとこに持っていきな」

「話が早くてありがたいけど……。俺があそこで働きだしたって、なんで知ってるんだ?」

「ははは、そんなの誰だって知ってるよ。こんな小さい村で隠し事なんて無理だ。だからあんた悪いことはするんじゃないよ?ライザーさんとこをクビになったりしたら、すーぐウワサになるんだからね」

「はは……そいつは恐ろしいねえ……」


※先に卵を取りに来た場合
「次は小麦粉か……確か、宿屋の近くに店があったな」



〔イベント会話 農家〕
「おっ、ガスパルさん早いねえ」

「今日は記念すべき初仕事の日なんでね」

「ああ、ライザーさんから話は聞いてるよ。小麦粉は用意してあるから持っていってくれ」

「おお、助かる!」

「せっかく仕事にありつけたんだ。真面目に頑張りなよ。今は雑用かもしれないが、いずれいいパン職人になれるかもしれないだろ?」

「さすがにそいつは難しそうだが……あのパンが自分で作れるようになるとしたら、最高かもしれないな」

「はは、店を出す時はひいきにしてくれよ」

「……考えておくよ」


※小麦粉を先に貰いに来た場合
「次は卵か……。確か、酒場の近くに店があったな」


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「よし、これで材料は揃ったな。パン屋に戻ってライザーさんに報告しよう」

そう言ってガスパルはパン屋へ戻っていくのであった。
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