エピソードまとめ
□バスチアン・フォルジュ
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ep.1 強者
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「谷の先に拠点が見えるな。次はどのような仕掛けをしてくるだろうか。まあ……なにが待ち構えていたとしても、正面から受けて立とう」
そう言って真っ直ぐ谷まで向かうとまた吊り橋が宙ぶらりんになっていた。
「またしても橋が崩されているな。ならばこちらも同じように……」
辺りを見渡せば、少し離れた所だったが、向こう岸に届きそうな岩柱があった。
「……これなら使えそうだな」
バスチアンは先程と同じように、一太刀で柱を切り落とし、向こう岸に橋をかけた。
「良し、渡ろう」
そう呟きバスチアンは岩の上を歩いていった。
「あの橋落としの策……。相手の兵達が渡っている時に行えば、一挙に隊を壊滅させることもできそうだな。機会があればやってみるとするか」
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〔連邦軍 第3拠点〕
「悪魔だ!帝国の黒い悪魔が来たぞ!デムラン将軍からすでに報告は受けている。ここに来るまで随分と悪辣な狼藉を働いてきたようだな。奪い殺し、果ては我らが同胞の死体をいたぶったとか」
「……ああ、殺したことは事実だ」
「許さぬぞ悪魔め!これは弔い戦だ!」
〔拠点兵長出陣〕
「者ども背を向けるな!……我々は貴様に敵わないだろう。だが、それでも構わない。無残に殺されていった仲間達の無念……たとえ僅かばかりでもこの剣に乗せ、死力を尽くして振るおうではないか!」
「こちらも……参る」
〔拠点制圧後〕
「連邦に……栄光あれ……」
「……戦場には様々な考えの人間がいる……。感情を持たない自分でさえも、帝国の戦士として多くの同胞と肩を並べ、幾千もの連邦兵と相まみえてきた中で、それは理解していたつもりだ。そして個々の思惑が共存し合えない状況も、幾度となく目の当たりにし、それがやむを得ないこともわかっている。わかっているはずなのだが………。……デムラン。ヤツのやり方だけはどうにも許容しがたい……」
〔道中台詞〕
「……やれやれ。これではまたラプラスに言われてしまうな。"珍しい"……と。もしや、すでに、どこかの誰かと足して2で割られているのではあるまいな」
「…ふむ。いつもと違うのであれば、違うままの自分を試してみるのも一興か。しかし、ヤツはこの先にいるのだろうか?…?足止めは他の隊に任せ、自分は逃げの準備を……いや、いるな。あのようなは自分の策がどうなったか、自分の目で確かめずにはおられぬであろう。待っていろ……デムラン」
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〔連邦軍 本陣〕
本陣へ到着すれば、やはりデムランはそこにいた。
昨日と同じように、リアクター式の障壁を張り自分の身だけは守りながら。
「おや、黒狼将さん随分とお早い到着でしたね。"愛国心"しかない雑兵どもでは相手になりませんでしたか」
「黙れ」
「おお、怖い怖い。ですが、昨日と同じと思ったら大間違いですよ?今回は帝国のリアクターを用いる兵もいますからねえ」
「……なんだと?そんな物いったいどこから……」
「"人を殺して物を奪う"ことにかけては、ちょっとしたものでしてね。少し前に帝国領で仕事をした時にちょいと……ね?」
「貴様……」
「しかし、お堅い正規軍の連中は、帝国の技術を忌避しておりますからねえ。表だって使用するわけにもいかず困っていたのですが……貴方が連中を一掃してくれたので助かりましたよ!」
「デムラン…!」
バスチアンは珍しく敵をむき出しにしデムランを睨みつけた。
向かってきた連邦兵達をすべて薙ぎ払い、残るは1人で身を守るデムランだけとなった。
「さすがに一朝一夕では扱いきれませんでしたか……。しかし、今しばし時間があれば……!」
「この期に及んで、そんなものが貴様にあるとでも?」
「ええ。恐らくありますよ。なにせ……」
淡々とそう言ったあと、デムランは厭らしく口角を上げた。
デムランが急に障壁を解いたかと思えば、後ろの門が開かれた。
出てきたのは3人の子供で、その手を後ろで縛られ、連邦兵の1人が傍で控えていた。
「……下劣な」
「お褒めに与り光栄です」
そう言いながらデムランはバスチアンの傍に歩み寄る。
「このガキどもと引き換えに貴方の首をくれ」
デムランはバスチアンの耳元でそう囁いた。
「……と、までは言いません。ただ、少々"お時間"をいただいてよろしいですかね?」
デムランは笑いを含んだような声でそう言ってのけた。
「……愚かなことを」
「…では、ここは見せしめに一人ずつ……」
「……行け」
「え?今なんと?」
デムランはわざとらしく聞き返す。
「…時間をやる。だから、行けと言っている」
「これはこれはお優しい!」
デムランはバスチアンの後ろを敢えて練り歩く。
「さすがは気高き武人と名高い黒狼将様だ!それでは、お言葉に甘えるとしましょう!」
そう言ってデムランは、子供が出てきた門の方へ歩いていく。
去り際にデムランが合図を出せば、連邦兵はバスチアンの方へ子供達を突き飛ばした。
「あの……おじちゃん?その……ごめんなさい」
男の子の1人が、様子を伺うようにそう言った。
「……意味の無い謝罪などするな。お前達が恥じることなど、一つもないであろう」
「う、うん」
「……付いてこい」
「……うん」
バスチアンは子供たちを連れ、ラスタック砦へと帰還するのであった。