エピソードまとめ

□バスチアン・フォルジュ
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ep.1 強者
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〔連邦軍 第3拠点〕
「本当に来たぞ!黒狼将だ!デムラン将軍からの情報では、こいつは大いに疲弊しているはず!大手柄のチャンスだ!」

「……まったく。そのように浮き足だった剣で仕留められるほど、自分は易くないぞ」


〔拠点兵長出陣〕
「行くぞ、者ども俺に続けー!」


〔拠点制圧後〕
「うぐ……、デムランめ…話が……違う……」

「………貴様らもか。デムランという者………いったいどういうつもりなのだ?無論、上官が自軍の兵を、駒として扱うこと自体に問題はない。が……、デムランなる将が現在部下にさせていることは、もはや扱いでさえないただの無駄死に。我らがアウグストの策略とは比べるべくもない愚行だ。一刻も早く叩かねば」

「……ん?これではまるで、自分が連邦兵のために戦っているようではないか?いやだが、その愚かな上官に遣わされた連邦兵を容赦なく蹴散らしているのもまた自分……。……無駄な思考だな。自分はただ、目の前の任務に最善を尽くすのみだ」

「先ほどの兵の話では、残す本陣にデムランがいるということだが…………どうだろうな。この分だとそう簡単に、自身を危険に晒す将とも思えんな。拠点陥落の連絡を受けて、すでに逃亡を図られていても、おかしくないだろう。まあ、構わん。たとえ当人の逃亡を許したとて、本陣を放棄させれば充分だからな。そうだな……。…多少、急ぐか」


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敵本陣へ到着すると、今まで拠点よりも多い兵が待ち構えていた。
奥の拠点の門の前では、連邦軍の制服を着て、髭を蓄えた帽子の男が、帝国製リアクターの赤い障壁を張り自身の身だけ守っていた。

「ふふふ、来ましたね?さすがは帝国最強と名高い黒狼村様だ」

「……貴様がデムランか」

「おや、ご存じで?私の勇名は帝国にも馳せてましたか」

「ふむ。勇名を馳せたいならば直接、剣を取ったらどうだ?」

「いえいえ、この状況なら私が出るまでもないでしょう?貴方は私の"策"に、まんまとハマったのですから」

「策?城壁に石を放るが如き、愚行のことか?たったこれしきの状況を作り出すために、いったい何人の兵の命を無駄にしたと思っている?」

「ええ、悲しいことです。彼らの命を無駄にしないためにも、私の部隊は貴方の首を取って、栄誉と報酬を受け取らねばなりませんねえ!」

「……度しがたい!」


そう言いながらバスチアンは向かってくる兵士を次から次へと薙ぎ倒していった。


「く……まさかここまでとは……!」

「これで満足か、デムラン」

「……やれやれ仕方ありませんね。"今回は"ここまでとしましょう!」

「では、大人しく投降……」

ニヤリと笑ったデムランが手を前に突き出すと、赤い波紋の様な創術がデムランを守るために前にいた連邦兵達事貫きバスチアンに衝撃を与えた。

「ぐああああ!」

強力なその技に、連邦兵達は死体も残らず一瞬にしてマナに還った。

「貴様!」

攻撃を耐えきったバスチアンはギリ、とデムランを睨みつける。

「貴方の力は、よーく、分かりました。次の戦場では、その首取らせてもらいますよ!」

「待て!く……!」

攻撃のダメージと、目の前障壁に阻まれ、デムランはそのまま立ち去ってしまった。


「デムラン……!」

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【CHAPTER2 因縁】
999Y.C. ジルドラ帝国 ラスタック砦

「さて、次の任務までの時間を、どう過ごすべきか……。……ふむ、ここは鍛錬にでもむとするか」

そう思いラスタック砦の中を歩き出したバスチアンの前にピンクの縦ロールを揺らしながら妖艶な女が近づいてきた。

「あら、バスチアンちゃんじゃない、お元気い?」

「……ラプラスか」

「相変わらず、つれないテンションねえ」

「……ふん」

「なに?今日はいつにも増してご機嫌斜めじゃない」

「……昨日の戦場が少々、気分の悪いものでな」

「あら珍しい。バスチアンちゃんが"感情"の話をするだなんてね」

「………そうだな」

「まあいいわ。それより例の如く、アウグストちゃんがお呼びよ。今は軍事司令室にいるわ」

「了解した。すぐ向かおう」

そう言ってバスチアンはラプラスの横を通り過ぎ、司令室へ向かって歩き出した。

「……ラプラスの言う通り、確かにいつもの自分らしくないな。そして、それは戦場において好ましいものとは言いがたい。……気を引き締め直して行こう」


〔砦内会話 酒場店主〕
「バスチアン様一杯いかがですか?」

「すまないが、任務があるのでな」

「だからこそ飲むんじゃないですか」

「そういうものなのか?」

「そういうものですよ。景気付けってやつです。まあ人には人の飲み方がありますからね。気が向いたらまた寄って下さい」

「ああ……善処する」


〔砦内会話 酒場前の帝国兵〕
「あーあ、もう戦場なんて行かねえで、酒飲んで寝るだけの生活がしてえや。そんで誰かのあげた功績に便乗して、報酬もたんまりもらえりゃ、申し分ねえってのによ……。……って黒狼将様!?い、今のは別に……」

「問題ない。今回の戦場には自分がいるからな。お前の手を借りるまでもないだろう」

「そ、そうですか……」


〔砦内会話 武器屋店主〕
「これはこれは黒狼将様!武具の購入、修繕、装備のことならなんでも承りますので、必要とあらばご相談下さい」

「すまないが、今は相談すべきことがない」

「……は、はあ、ですので必要とあらば……」

「必要な時にはすでに手遅れということはないか?」

「……そうですね、状況によっては……」

「ふむ…。相談する頃合いを見定めるのは、なかなか難しいな」



〔砦内会話 備蓄庫前帝国兵〕
「戦況はどうだ?」

「はっ!昨日、黒狼将様に森林地帯を制圧していただいたおかげで、我が軍は優勢を保っております!」

「そうか」

「………私もいつか、狼将様のような武人になってみたいものです」

「ならば帝都に戻ったら稽古をつけてやろうか?お前の鍛錬のためにも全力でな」

「え……遠慮しておきます!」

「遠慮はいらんぞ、お前も全力で来い」

「……そういうことじゃなくてですね……」


〔砦内会話 司令室前帝国兵〕
「お疲れさまです、バスチアン様!中で宰相様がお待ちです」
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