エピソードまとめ

□バスチアン・フォルジュ
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ep.1 強者
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連邦兵達の死体が転がる中、黒い鎧を纏った1人の男が地に刀を刺し、瞳を閉じていた。


男の脳裏に思い返されるのは……幼少の頃の記憶だった。



「は、はは……やった……。僕は遂にやったんだ……!」

和服を着て髷をゆった少年が、包帯を巻いた左手に紫色の炎の様なものを宿していた。

「力が……!抑えきれないほどの強大な力が体の奥から溢れ出して来る!これなら……この力さえあれば……みんなを守れる!待っていて、父さん、母さん、村のみんな!


僕が今、この力で、"すべて"を取り戻してみせるから……!






「"力"か……」

男は瞳を開け、そう呟いた。


「さて……、それでは、この力をもって殲滅を開始するとしよう」

そう言って男は肩に刀を乗せ、歩き出すのであった。


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【CHAPTER1 誘導】
999Y.C. ユール連邦 ラドミア森林
《ユール連邦軍 連邦拠点 制圧任務》


「今回の任務は、ここ一帯の連邦軍拠点の制圧……。戦場でやるべきことは常に同じだ。自分は自分の力を以て、与えられた任務をまっとうするのみ」

そう言って黒い鎧の男──バスチアン・フォルジュはひとり戦場へ向かった。



〔道中台詞〕
「今回のような敵陣の攻め落とし方だが、効率がいいのは……。……やはり正面突破か。アレクサンドラなら賛同してくれると思うが……アウグストやラプラスなら、果たしてどうするだろうか。……いや。自分はアウグストではないからな。あいつのやり方を考えても意味がない。……よし。正面突破だ」


〔道中台詞〕
「いつものことだが敵兵が多いな。これまでも様々な戦場で数多の連邦兵を打ち払ってきたが、倒しても倒しても、こうして新たな兵が湧いて来る。……ふむ。無間地獄に落ちているのは、果たして自分か連邦か」


〔道中台詞 第1拠点前〕
「……敵拠点が見えてきたな。あの中にも多くの連邦兵が待ち受けているだろう。だがそれでも自分は、一人残らず一掃するとしよう」


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〔連邦軍 第1拠点〕

「帝国の狼将だ!たった一人と侮るな!相手は一騎当千の黒狼将!しかし恐れることはない!勇猛果敢こそが我ら第三中隊の信条!援軍が来るまで持ちこたえるのだ!」

「勇果厳か……無謀とも思えるが、そういう気概がある者は嫌いではないな」


〔拠点兵長出陣〕
「な、なにをしてる!?これでは俺も出ないと、いけないではないか!おおい!援軍はまだか!?このままでは……」

「先ほどまでの威勢はどうした?勇猛果敢が信条ではなかったのか?」

「くそっ……別部隊のヤツらめ……。総員かかれー!」


〔拠点制圧後〕
「こんな…はず……じゃ……」

「少しは骨のある隊かと思ったが、連邦軍の兵は、相も変わらずの寄せ集めぶりだな。なにやら援軍を期待していたようだが、もし本当にそのようなものが来る予定であったとすれば、この先のどこかで進軍に手間取っているのやもしれないな。ならばついでに、そちらも潰しておくとするか」


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〔道中台詞〕
「それにしても張り合いがないな。これほどの戦場、手練れとの死闘の一つくらいは、あってもいいと思っていたのだが……。どうやら今回は期待が持てなさそうだ」

「期待か……戯れ言が過ぎたな。それこそアウグストなら、戦略通りに事が運ぶことを良しとするだろうし、ラプラスは常に、いかに楽に立ち回れるかを望むだろうしな。手ごたえのない任務など、いくらでもあるだろう」


「……ふむ、要は、敵陣を制圧するという結果が重要なのであって過程は任務の達成状況に、なんら影響を及ぼさない。そういうことだな。……であれば、過程に期待するのもまた……個人の自由ということか」

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〔連邦軍 第2拠点〕
「来たぞ、黒狼将だ。討伐すれば大手柄だ!」

「勇猛果敢な第三中隊サマが、貫して壊滅するまで、待ってた甲斐があったぜ。狼将とはいえさすがに、消耗してるだろうからな!」

「……お前達、まさかこちらの疲弊を期待して、自軍の窮地をむざむざ見逃したというのか?自らの手柄のためだけに」

「そりゃ、あいつら助けたって、なんの得もねーし」

「そもそも、あの中隊を使い捨てで、アンタにぶつけたの自体、俺達だからなあ!」

「……度しがたいな」


〔拠点兵長出陣〕
「ひ、ひい!なんなんだよ……お前!」

「これは異なことを。自分を黒狼将と知っていたのではなかったのか?」

「……でも、こんなにも常軌を逸した化け物だとは、デムラン将軍は一言も……!」

「……つい先ほどどこかで聞いた話だな。愚かな使い捨て部隊をぶつけて疲弊を誘う……そのやり口」

「……ま、まさか、デムラン将軍、俺達のことも……!」


〔拠点制圧後〕
「くそ……。デムランの野郎だったら、もう一つ拠点を越えた先の本陣にいやがるぜ……」

「一個人の恨みで上官の居場所を吐くか。本当に度しがたいな」


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〔道中台詞〕
「……どうも自分は現状、デムランとかいう将軍に首を狙われているらしいな。……ふむ。どこかの強盗団の長が、そのような名だった覚えが……。……ああ、確か"山高帽のデムラン"だ。……賊如きを将の座に就かせているとすれば、敵ながら連邦の人材不足は、いよいよ心配になってくるな」


〔道中台詞〕
「……賊将の存在。面倒ではあるが捨て置けば余計に厄介なことになりかねない。……ここは他の拠点同様、こちらから切り込んで、その者の陣を制圧してしまうとするか。……だが自分はいつも、こうして単騎で敵陣深くに誘い込まれた結果、アウグストに叱られている気がしないでもないが……」

「……いや、構うまい。あいつはもはやそんな自分の性質さえも織り込み済みで、この作戦を展開している。つまり信頼しているということだ。ならば自分がその信頼と期待に応えずしてどうする?……よし。気にせず行こう」
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