エピソードまとめ

□アレクサンドラ・フォン・ゾンネ
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ep.1太陽
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ラプラスが去り、1人残ったアレクサンドラの後ろから足音がした。

「……アウグスト。障壁は解除されたのだな」

アレクサンドラは後ろを振り向きもせずそう言った。

「ええ。それより聞きましたよ。敵将や負傷兵の撤退を許したとか?」

「……ああ。すまないな」

「謝る必要はありません。既に逃亡する敵兵への追撃指示は出してありますので」

「な…!」

アレクサンドラは勢いよく振り返った。

「なぜ、そんなことを!」

「おかしなことを訊きますね。敵軍を掃討することに、なぜ、もないでしょう」

「しかし、戦場の趨勢(すうせい)は決しているだろう!」

「だからなんです?殺せる時に殺しておく方がいいに決まっているでしょう?」

「まるで、その理屈が、論理的な正解かのように語るな!」

「まるで、その甘さが、倫理的正義のように叫ばないで下さい」

2人の間に少しの沈黙が流れ、先にアウグストが背を向けた。

「……やはり貴女とは根本の思想からして合いませんね」

「そうだな。出逢った時からお前とは衝突ばかりだ」

アレクサンドラは下を向いた。

「それでも互いに手を取り合うしかなかった。……成り上がるために」

「ああ。……だが、アウグスト。私は……」

アレクサンドラは顔を上げアウグストを見る。

「私は……貴女が、真の意味で隷属していないのは理解しました」

「違う!そうじゃない!私は……!」

「いいんですよ。それはそれとして上手く運用するだけですから」

そう言ってアウグストは歩き出して行ってしまう。

「…アウグスト、お前どうしたんだ?考え方が合わないのは昔からだが、それでも以前のお前は……」

アレクサンドラがその背に言葉を投げかけるが、アウグストがそれ以上答えることはなかった。


「……私の言葉が、今のお前に届いていないのは重々承知だ。だがな、アウグスト。それでも私は……お前をいつか、太陽の下に引きずり出してみせるよ」

アレクサンドラは上を向いた。

「絶対に」

そう、この場から見えぬ太陽を見据えて。


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〔次回予告〕

次回 テイルズオブルミナリア
エピソード アレクサンドラ

ep.2 正義の免罪符

青春と呼ぶには些か物騒な話になるな
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