エピソードまとめ
□アレクサンドラ・フォン・ゾンネ
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ep.1太陽
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【CHAPTER3 砦を目指して】
998Y.C. 森国シルヴェーア ディランブレ戦傷地帯
《連邦砦攻略 追撃戦》
「あはっ♪今日もたっくさんいるわね。有象無象ちゃん達が」
「ああ、そうだな……」
「なによテンション低いわね。そんなんじゃ、連邦兵どころかオタオタにだってやられちゃうわよ?」
「ラプラスの言う通りですよ。しっかりして下さい」
「わかっている……。やるしかないことぐらい……。ならばやり切るまでさ」
〔道中会話〕
「この先にフランメージュ砦があるのだな?」
「昨日もお伝えした通り、貴女達、狼将を駆り出す程度には、攻略難易度の高い拠点です。そして砦は元よりそこへ続くこの森にも
、想定以上の陣が敷かれていますね」
「じゃ、ここは裏手からこっそり……」
「いや正面突破一択だ。目につく拠点はすべて潰していくぞ」
「はあ……これだから野蛮な白犬は……」
「なにを言っている?狼将に求められているのは小賢しい潜入工作ではない。堂々と戦況をし自軍の士気を上げることだ。違うか?」
「ど、どうしたのよ?急に……ねえ どうにかしてよ、アウグストちゃん」
「まあまあ。元気な彼女に戻って良かったじゃないですか」
「ええー」
「それに彼女の言葉にも一理ありますよ。後続の自軍本体を引き入れるためにも、昨日と同様、周辺の確保は肝要です。ここはアレクサンドラの言う通りにしましょう」
「……わかったわよ」
「さっきからなにを談笑している?戦場では気を引き締めろ」
「……ね〜、アウグストちゃ〜ん」
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〔連邦 第1拠点〕
「こ、こいつら!?たった三人で仕掛けて来るなど、いったいどういう……!」
「どういうもなにも、この三人で充分事足りるからだ!」
〔拠点兵長登場〕
「これ以上勝手な真似はさせん!」
〔拠点制圧後〕
「まずは一つ……」
「なにやら鬼気迫るものがありましたね。さすがは我が帝国軍、最高戦力の一角です」
「……ふん。行くぞ、次だ」
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〔道中会話〕
「あー、そういえば、昨日、白犬が助けた傭兵ちゃん。一人死んじゃったんだって?正直無駄死によねー」
「無駄な死などない」
「そう?アタシ達に向かって来る敵さんなんて、無駄そのものだと思うけど?」
「それは……」
「まあ確かに、アタシ的には無駄じゃないけどね連邦兵ちゃん狩るのって楽しいから♪」
「なんだと?どんな相手でも誠意をもって……」
「そんなのあろうとなかろうと、する行為は一緒でしょ?」
「……貴様!」
「……ラプラスはどうしてそう、いつも必要以上に煽るような真似を……」
「あら煽ってなんかいないわ。白犬が勝手に熱くなってるだけじゃない?」
「なに!?」
「まあまあ。私は貴女の今回の行動、そう無為ではなかったと思いますよ。片方は生き残ったわけですし」
「……アウグスト。そうかお前も無償の人助けの尊さをようやく……」
「ええ、なにせ、傭兵に恩を売れば、次の戦で再び胸になってくれますからね」
「……それは良かったな。………はあ。無駄話をしたせいか、少々空腹を感じ始めたな」
「やーねえ、浅ましい白犬は」
「生僧、お前と違って他人の血や精気を吸って、糧とはできないのでな」
「は?アタシそんなの吸わないし」
「は?」
「え、なにそのキョトンとした顔。あんたまさか皮肉とかじゃなく、本当にアタシが他人の精気吸って生きてると思ってたわけ?」
「いや……」
「ひっど。ちょっとアウグストちゃんも、なんとか言ってやってよ」
「え?そ、そうですね。普通に考えて吸いませんよね……。……そうですか、吸いませんか……」
「……なんだろうな、このガッカリ感は」
「やはり野暮な追及はいけませんね。反省です」
「あ、あなた達ね……」
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〔連邦 第2拠点〕
「な、なんだお前らは!?」
「帝国軍に決まってるでしょ?馬鹿じゃないの?」
「ば、馬鹿だと?」
「口汚い同胞の非礼は詫びよう。だが……すまない。ついでに、ここは通させてもらう!」
〔拠点兵長登場〕
「おのれ……そこを動くな!」
〔拠点制圧後〕
「そうだ、白犬。おなか空いたなら食べる?泥団子」
「ラプラス、お前……」
「卑しいあなたにお似合いでしょ?」
「……団子か。ありがとう、気持ちだけ受け取っておく」
「……え?」
〔連邦 第3拠点〕
「あはあ。どこもかしこも連邦のワンちゃんがいーっぱい♪」
「本当ですね」
「あーあ。やっぱり正面突破とか言い出した
、どっかのワンちゃんのせいで、なんかだるーい」
「く……」
〔拠点兵長登場〕
「この戦況を必ずくつがえすぞ!」
〔拠点制圧後〕
「……すまないな。私の戦法に付き合わせて」
「謝るぐらいならもっと頭使いなさいよ」
「まあ作戦に彼女がいる時点で、わかることですし」
「そうだけどー」
「恩に着る二人とも」
〔連邦 第4拠点〕
「連邦軍に告ぐ!この拠点を早急に明け渡せ!そうすれば……」
「なんでもいいから、さっさと殺っちゃいましょうよ」
「私もそれが良いかと」
「む……仕方ない」
〔拠点兵長登場〕
「兵達の仇は俺が討つぞ!」
〔拠点制圧後〕
「これで残すは……フランメージュ砦正門前の拠点だけか」
「ですね。どうしますか?アレクサンドラ」
「なにがだ?」
「ここまで多くの拠点を制圧し、敵兵力を削りました。砦の開門までこぎつけたら、あとは後続の軍本隊に任せてもいいですが……」
「しかし、まだ砦本体があるではないか。狼将でなければ攻略は困難なのだろう?」
「そうなのですが、帝国にとって雑兵の命と狼将の身の安全。どちらが重要かなど、天秤にかけるまでもないかと思いまして。なにせ貴女は大事な人ですからね」
「……アウグスト。確かにお前の考え方は理に適っているよ、いつも通りな」
「ありがとうございます」
「だが、申し訳ないが……私の正義はその理にそぐわないらしい」
「と言いますと?」
「…私には、命の重さに違いがあるとは思えない」
「ありますよ。重き命を守るために皆戦っているのでしょう?国のため……仕える者のため……。そして大切な想いのために………」
「ならば、私は……私の命をして昔を守るべく剣を取ろう」
「そうですか……。………それはとても残念です」
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〔連邦本陣〕
「ここを落とせば砦は目前だ」
「ええ。ただ簡単には通してくれないようです」
「なら早いとこ終わらせちゃいましょ。だるくて仕方ないもの」
「そうだな……」
〔敵将出陣〕
「まさかここまで突貫してくるとは……。全力をもって進軍を阻ませていただく!」
「……では貴軍のその心意気に恥じぬよう、私も狼将として全力を尽くさせていただこう!」
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アレクサンドラの一撃が、敵将を討ち取った。
「はあ〜、やっと終わった〜」
うーん、とラプラスが伸びをする。
「見事な働きでした、アレクサンドラ。では、1度キャンプに……」
「ではこのまま、砦内を制圧するとしよう。いいよな?アウグスト」
そう言ってアレクサンドラは微笑んだ。
「……ここで、その笑顔を見せますか。……分かりましたよ、行きましょう」
「ありがとう」
そう言い、歩き出したアレクサンドラにアウグストはついて行く。
「え〜、まだ行くの〜?」
ラプラスはガックシ、と膝に手を置き腰を曲げるのだった。