エピソードまとめ
□アレクサンドラ・フォン・ゾンネ
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ep.2 正義の免罪符
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【CHAPTER4 持つ者として】
993Y.C. ジルドラ帝国 レインツ荒涼地帯
「よし。この先を抜ければ、いよいよ問題の洞窟だな。オルバとヴィリーは獣討伐任務の報告のため、一度帝都に戻ってから合流する手筈だが……子ども達のことを考えると時間が惜しい。先行して調査を行うとしよう」
そう呟きながらアレクサンドラは荒涼地帯を駆け抜けて行った。
〔道中台詞〕
「しかし、この事態。大人に被害が出ていない辺りを考えるに……例の妙な笛の音というのは、子どもにしか効果がないようだな。リアクターの一種なのかもしれないが、そんな物まで開発されているのだろうか?」
〔道中台詞〕
「ただの一兵卒である私には、リアクター研究の実情までは知る由もなければ。もしかしたら別のなにかかもしれないが、子どもを言いなりにする音か……」
「おぞましい力だ。いや、おぞましいのはそれを用いる者の方か。……どちらにせよ子ども達が心配だ。先を急ごう」
〔獣の群れ〕ラズビー、ウィルーツ、ネヴァム
「くそっ……こんな時に!悪いが通させてもらうぞ!」
獣討伐後。
「よし、これで進めるな」
〔岩と岩の隙間〕
「……少し窮屈ではあるが……、通れない…こともないな……」
「……ふう。なんとか通れたな」
〔道中台詞〕
「まだ洞窟は見えてこないが、ひとまずここを登っていくか。……オルバが話していた身なりのいいお嬢様……」
「その子の姿もまだ見つからない……。事件と関係があるかは、わからないとのことだったが、この状況を鑑みるに確実に関係しているだろうな……。その子もまた、すでに洞窟内に幽閉されているのだろうか……」
〔道中イベント〕
「あれが奇岩迷路バッハード……。妙な出で立ちをした洞窟だな。さながら大口を開けた猛獣のような………」
「いや……大きさを考えると源獣のようにも見える。あそこに子ども達がいるのか……。無事でいてくれるといいが……」
〔道中台詞〕
「……今回の件、街の人達の話からして、人身売買の線でまず間違いないだろうな……」
「私がこれまで見てきた帝都は、帝国民の知恵と努力の結晶で成り立った街であり、あれ以上に美しいものはないと思っていたが。そのような影があったとは……」
「いや……。影だと思うのは、私が見向きもしていなかったからか……。ここから望む帝都の街の灯も私には麗しく感じられるが、あの中で今も尚、苦しみに耐えている人は、いるのかもしれない……。私も軍人として……帝国の人間として……より多くのものに目を向けねばな」
〔道中台詞〕
「だいぶ降りて来たが、ここは低い場所に霞が溜まっているのか。それが洞窟に吸い込まれる様子を見ていると、本当に獣が呼吸をしているようだ」
〔道中台詞〕
「さて……そろそろ洞窟の入り口だ。気を引き締め直して挑もう」
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洞窟の入口に入ろうとした、その瞬間、ぴーひょろろ、と笛の音が聞こえ、音譜帯の塊のような創術が飛んできて、アレクサンドラは後ろへ跳んだ。
「何者だ!」
アレクサンドラは、音の聞こえてきた上の方を見上げると、長い笛を持った男が洞窟の岩肌の上に立っていた。
「僕が何者かって?ははっ……。アンタのような人間に教える意味があるとは思えないな」
そう言って男がもう一度笛を吹くと今度は、獣達が現れる。
「それより早く死んでくれよ、これから取引なんだ」
「取引?」
「ああ、早くしないと商品の鮮度が……子ども達の鮮度が落ちるだろ?」
「まさか、貴様は……!」
ラズビー、ネヴァム、ガルル、ガルグラン。多種多様の獣をあの笛1つで操っているようで、アレクサンドラは長剣でそれらを切り裂いていく。
「ははっ!たいしたことないなあ。もっと近くで遊んであげるから来いよ、恵まれし者!」
そう言って誘拐犯は上から飛び降りてきた。
「それは私のことか?」
「ハッ、アンタ以外に誰がいるっていうんだ?」
「ふむ……確かに恵まれているかもな。接近戦であれば、お前を仕留めるのも容易だろう」
「な……なんだと!」
男は怒ったようにして、また笛を吹いた。
創術での攻撃は、強力だが、発動に時間が掛かる。
そして、アレクサンドラはオルバ曰く、"白銀の閃光"だ。
アレクサンドラは瞬時に周りの獣達を蹴散らして、誘拐犯に間合いを詰めた。
「いい剣術に……いい肉体に……いいリアクターか……嫌になるぐらい恵まれてるなあ……」
男は恨めしそうにアレクサンドラを見た。
「ホント……嫌いだよ、そういうヤツ……」
「そうか。それは構わないが、もう終わりだ。観念しろ」
「どうだろう?なにか忘れていないかい?僕は……キミにとって"誘拐犯"なんだろ?」
そう言って男はリアクターの力でか、少し離れた場所にワープして、もう一度、笛に口を付けて吹いた。すると、ぞろぞろと岩場の後ろから子供たちが出てきた。
「なっ……!」
「人質の存在を忘れるだなんておめでたいヤツだな」
そう言いながら、彼は懐から銃を取り出して、子供へ向けた。
「貴様……!」
「はははっ!綺麗事の世界の住人かよ!」
先程、一瞬で詰め寄ってきたのにも関わらず、子供が人質に取られただけで、1歩も動けなくなったアレクサンドラを男は笑った。
「そういう"誇り"っていうの?くだらないよなあ、ホント」
「アレクサンドラ!大丈夫か?」
後ろからそんな声と2人分の足音が聞こえた。
「チッ……仲間か。……ん?お前達……」
誘拐犯はアレクサンドラの後ろに見えた、ミュラー兄弟の顔を見て驚いた。
そしてそれはミュラー兄弟も同じだった。
「お前は……もしかして………ルートヴィッヒか?」
オルバがそう尋ねる。
「くそっ……!こうなったら、あのお嬢様の取引だけでも……!」
そう言って男は踵を返し、走って洞窟の中に逃げていく。
「あっ、おい!」
オルバもヴィリーも男の後を追おうとした。
「二人とも!子ども達の保護が優先だ!」
追いたいのはアレクサンドラもそうだった。
だがしかし、ここには攫われた子供達がいく人も残っていた。
「わ、わかった」
頷いた2人と共に、アレクサンドラは操られた子供達に異常がないか、様子を見て回るのだった。