エピソードまとめ

□アウグスト・ヴァレンシュタイン
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ep.1チェックメイト
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997Y.C. ジルドラ帝国 コンチネント宮


「すみませんね。わざわざ研究所まで来ていただいて」

「別に構わない。任務のために必要なのだろう?」

そう言って2人は施設内を歩いていく。

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〔施設内会話 受付嬢〕
「ここはコンチネント宮。連邦に対抗するための兵器や、帝国の暮らしを良くする道具を開発している研究施設です」


〔施設内会話 ホールにいる男性〕
「……なんですか?考えごとの最中なので用があるならフリーゼ所長に……。所長の部屋なら通路の一番奥にありますから……」

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「それにしても。先日の式典は良いものだったな。私も誇らしく感じたよ」

「そうですか?」

「しかし、お前が"宰相"か……。もう気軽には話しかけられない………ですよね」

「やめて下さい、アレクサンドラ。これからも変わらず"アウグスト"と甘くささやいてもらって結構ですから」

「な、なにを馬鹿なことを!ほら、行くぞ、アウグスト!」

2人は白い廊下の奥の自動ドアの前に立った。
扉が開くと、格子と鉄板で出来た足場が続いて居て、真ん中には大きな培養ポットのような物があった。
2人はカンカンと鳴る足場の上を歩いてく。

「……それで今回の任務はシルヴェーアとの国境付近に位置する、ヴェルヌ砦を援護するのだったな」

「そうですね」

「そこに詰める、クレー大佐の部隊がなにやら問題を抱えているとか?」

「はい。そしてその"問題"の解決にあたり、今から受け取りに行く試作兵器を投入したいのですが……。これがまた、極めて機密レベルの高い代物でしてね」

「……ちなみに、その兵器の詳細は私にも明かせないのか?」

「……すみません、アレクサンドラ」

「いや、構わないさ」

そう言って2人は自動ドアを開けると、また白い廊下になった。そこを右手に曲がって進み、奥の自動ドアの前にたどり着いた。

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〔施設内会話 培養ポット前〕
「これは頂狼ラズィから、抽出しているマナです。マナの流れはこの世界そのもの……流れを掴んだ者こそが、世界を制するのでしょう」


〔施設内の 右側の奥にいる研究者2人組〕
「そういえば今日って、宰相様が施設に来るんだよな?」

「ああ。生きている間に拝めるとは思ってなかったよ」

「……それにあの白狼将アレクサンドラ様も来るとか。黒狼将のバスチアン様や、赤狼将のラプラス様もいいけど、三狼将の中だったらダントツだよな……」

「あ、あいつかお食事とかご一緒して、もぐもぐしてるところを見てみた……」

「バカ!身の程をわきまえろよ!」

「でも……。夢は諦めたくないだろ?俺達も大物になればさっ!」

「……確かにな。じゃあ夢へ向かって……!仕事、頑張ろう」


〔施設内会話 話し合う研究者3人〕
「やっぱりリアクターは素晴らしいね。この装置にマナを蓄えることによって誰でも手軽に創術を使えるようになったから今の帝国は豊かな暮らしを送れるんだ」

「まさに革新的な技術だよな」

「こんな技量、連邦にはないだろうよ」



〔施設内会話 左側で話している研究者2人組〕
「フリーゼ所長って地味な人だよな。まあ前の所長の時より働きやすくなったからいいけど……」

「そういえばフリーゼ所長の前任って……。2年前の"あの一件"以降、姿を見せないんだろ?」

「ああ……なんでもあの騒動、この前宰相に就任したアウグスト様も関わってるとか……」

〔施設内会話 奥の廊下、自動ドア前の女性〕
「この先には前所長のコレクションが残されています。……そう"コレクション"が……」


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自動ドアの手前でアウグストは足をとめる。

「では、少し待っていて下さい」

「そうか。機密事項だったな」

「はい、すみませんが………。……寂しくなったら言って下さいね」

「……早く行け!」

アレクサンドラに怒られてアウグストは中に入った。

「ご無沙汰しております、フリーゼ所長」

中に入ると金髪の若い男性が待っていた。

「さ、宰相様もご健勝そうでなによりです!」

「それで……例のものは?」

「はい……こちらに」

フリーゼはデスクの上に置かれた装置を手のひらで指した。
それは、アンテナの着いた厚みのある円盤にがっちりとはめた枠と持ち手が付いている。

「この装置と薬品を使えば、獣を意のままに動かせるのですね」

アウグストはその装置を手に取った。

「……恐ろしい技術です。感服しますよ」

「そのようなお言葉、痛み入ります」

「では、装置一式お借り受けいたします。ああ、ちなみに、この操縦装置ですが………」

「はい。事前のご指示の通りに、もう一つ用意してございます」

そう言ってフリーゼはもう一つ同じものを手渡した。

「しかし、なぜまたこのような……」

「……フリーゼ所長。それは本当に貴方が知るべきことだと思いますか?」

「…い、いえ。なんでもございません」

そう言った彼の手からアウグストは装置を手に取り踵を返します。

「ご武運を、宰相様」

頭を垂れた彼に見送られながら、アウグストは部屋の外に出た。

「この二つの装置があれば、あとは事を運ぶだけ……。今から楽しみですね………。さて、アレクサンドラさんは……と」


先程別れた扉の前にはいない。律儀な彼女の事だ。機密事項が万が一でも聞こえないようにと、離れた場所に移動したのだろう。

「お待たせしました」

「問題は無かったか?」

「はい、これで、全て解消できそうです」

「そうか。ではヴェルヌ砦へ向かうとするか」

「そうですね。まずはラプラスと合流しましょう。彼女がパタラの手配をしてくれるので」

「……騎獣パタラ。あれに乗るのか………」
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