エピソードまとめ
□アウグスト・ヴァレンシュタイン
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ep.2 絶望の種
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獣も兵もラプラスから与えられた力により簡単に倒せてしまった。
「バ……バケモノ……」
「私が化け物?これは異なことを。では貴方達のような村に獣を放ち人を殺める外道は、なんとお呼びすれば?」
「お、俺達はただ、上官に指示されて………」
「上官……ですか」
「そ、そうだ!クレー少佐!少佐が指示したから、俺達は……」
「……もう結構です」
そう言ってアウグストはトドメを刺した。
「こわーいきちくー」
後ろでそう茶化すラプラスへ視線を向ける。
「クレー少佐……というのは?」
「今回の現場指揮官よ。今は丘の上の高台に陣を構えて……」
「そうですか」
そう言って歩き出そうとしたアウグストを見てラプラスは驚いた。
「ちょ、ちょっと!まさか行くつもり!?いくらその力でも軍の精鋭兵達相手じゃ……」
「わかっています。確かに強大な力ではありますが、馴染んでいない現状では分が悪い、それはわかっています。復讐を遂げる前に、無駄死にするつもりはありません」
「ならどうして………」
「……外道の顔を拝みます。この胸の炎に薪を焚べるため……。さあ、行きましょう」
「え、アタシも?」
「私の復讐に手を貸す契約では?」
さも当然といいような顔をしてアウグストは先へ進む。
「はあ……わかったわよ」
諦めてラプラスは大人しくアウグストの後に続いた。
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〔ベルティーナ〕
「ベルティーナ……。林檎の売り込み……上手く行きましたよ……。これもひとえに貴女のおかげですね。"裏切りの林檎"にも使い道は必ずある。そう信じてくれた、貴女の……」
〔ルチナ〕
「ルチナ……。……そんな所にいたら見つかってしまいますよ?早く隠れて下さい。お願いですから………」
「悪いけど、感傷に浸ってる場合じゃないわよ」
「……わかっています。彼女達は…ここで眠らせてあげましょう……」
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「あらら、実験体がまだ残ってたのね」
村の広場に出ると獣達が襲いかかってきた。
「……致し方ありません。ここで眠りなさい、慣れな獣よ」
獣討伐後。
「ねえ……。本当に覚悟はいいのかしら。ここから先の"道"に踏み入れたら、もう引き返せないわよ?」
「……進みますよ。たとえそれが煉獄に続く道であろうと」
「……外道は、この丘の先に…」
そう呟いて、アウグストは広場から山に続く門を開けた。
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【CHAPTER4 焚べられたもの】
988Y.C. ジルドラ帝国 ナハトガル山
アウグストとラプラスはナハトガル山を、丘へ続くトンネルの方ではなく、岩を壊し山道へ続く方へ向かって行った。
〔道中会話〕
「帝国軍は丘の逆側から村に侵入したのですか?」
「そうなんじゃない?」
「知らないのですか?」
「自分の担当以外興味ないのアタシ」
「……なんなのですか、貴女は」
「ふふっ。謎めいた女って魅力的じゃない?」
「ただ信用できないとしか思いませんね」
「つまんない感性の男ねえ」
「そうかもしれません。底抜けに明るく正直な人を深く愛していましたから」
「……あっそ」
〔道中戦闘VS帝国軍〕
「……帝国兵」
「貴様!村の人間か!それと……ラプラス様……?いったいなぜ?」
「あらら、一緒にいるトコ見つかっちゃったわね。クレーに報告されても面倒だし、目撃者は皆殺しにしちゃいましょ」
「ええ……」
〔道中会話〕
「良かったのですか?貴女にとって彼らは同胞だったのでは?」
「別にい。それを言ったらあなたにとってもでしょ?帝国民さん♪」
「それは……」
〔道中会話VS帝国兵、ガルル、ガルグラン〕
「ほらほらまた来たわよ、アウグストちゃん」
「わかっています。……ところでなぜ私の名を?名乗った覚えはありませんが……」
「あらそうだっけ?でもあなたのことなら、それなりに知ってるわよ。林檎農家のアウグストちゃん♪」
「そうですか……」
〔道中会話〕
「言っておくけど雑兵は倒せても精鋭兵には……今は手出ししませんよ。この命、無駄死にに費やす気はありませんから」
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道中、倒木の傍に獣が居てその周りには肉は食い散らかされ、血溜まりの上に残った子供の衣服が何枚も落ちていた。
「……わ、わーお。これはさすがにちょっと……」
流石のラプラスも引いていた。
「アウグストちゃん?」
無言で杖を構えたアウグストにラプラスは首を傾げる。
「……殲滅します」
そう言ってアウグストは先制攻撃を仕掛けた。
「"薪を焚べる"ね。少しだけ理解できたわ。……でも、そんな煉獄の道の先に、あなたはなにを求めるのかしら?ま、アタシには関係ないけど」
獣討伐後。
「……先へ、急ぎましょう………」
〔道中会話〕
「……ラプラス一つ訊ねていいですか?」
「なあに?」
「なぜ、この村なのですか。なにか理由が……」
「ないわよそんなの」
「……なんだと?」
「あー、少なくとも……アウグストちゃんの納得いくような答えはないわ」
「そう……ですか………」
〔道中会話〕
「ルチナ……ベルティーナ……」
「あなたには悪いけど、これが帝国よ。正義?愛国心?そんなもの重視するのは末端か、よほどの馬鹿だけ。上は……本当の帝国は……民のことなんて見ちゃいないわ」
「……貴女はそれを変えたいと?」
「あら、そんなタイプに見えるう?」
「……いえ、余計な詮索でした……」
「そうね。アタシ達は共犯者。お友だちじゃないわ」
「………ええ。そうですね……」