エピソードまとめ

□アウグスト・ヴァレンシュタイン
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ep.2 絶望の種
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「ルチナ!ベルティーナ!」

アウグストは叫び駆け寄る。

「ああ……そんな……そんな……!」

娘も、妻も、獣に食い散らかされていた。

「……あな……た?」

「ベルティーナ」

か細い声が聞こえて、アウグストはベルティーナの身体を抱き起こした。

「……獣……は」

「大丈夫です!貴女が倒してくれたのでしょう?」

「そっか……良かった………。ごめん……もう目が……見えなくて……。寒くて……感覚も…なく……て………」

「ベルティーナ!気をしっかり!」

「それはちょっと……無理そうかな………」

「ベルティーナ………」

「……ねえ、あなた。最期に一つだけ教えてくれる?私……ちゃんと娘を……ルチナを……守り切れた?」

「……それは」

アウグストは、ベルティーナを抱えたまま、先に横たわるルチナへ視線を動かした。

「ねえ……お願い……おし……えて……」

「………もちろんです」

アウグストは、ベルティーナの顔を見て、そう答える。

「ルチナは……私達の娘は無事ですよ。貴女のおかげです」

今にも泣き出しそうな表情でアウグストはそう伝える。

「……そっか」

「……ええ」

「……もう、まったく……」

ベルティーナは呆れたように呟いて、微笑んだ。

「あなたは、嘘が……下手ね………」

そう言って、ベルティーナはアウグストに頭を預けるように事切れた。

「ああ………ああ……!」

アウグストは泣き叫び、ベルティーナの肩に頭を埋める。

「なん……です?なんなのですか……これは?どうして……なぜ………こんな……!」

「知りたーい?」

叫ぶアウグストの耳に、聞いた事のない女の声で囁きが聞こえた。

「な……!?」

顔をあげれば林檎園に、露出度の高い格好をしたピンク色の髪の女が立っていた。

「なら、教えてあげるわ。今日、この村に起こったこと。それはぜんぶ、ぜーんぶ──・・・アタシ達、帝国軍の仕業なの」

そう言って女はにやぁ、と笑った。

「なんだお前は……」

アウグストはベルティーナをそっと地面に寝かせながら、女を警戒し睨みつける。

「アタシ?アタシはラプラス。軍じゃ少しだけ偉いのよ?」

「そんなことを聞いているんじゃない。なぜ帝国が……!」

「賢いあなたならわかるんじゃない?」

そう言って、ラプラスと名乗った女は地面に転がっている獣に視線を移した。

「ほら……不自然な獣の暴走と軍の介入……」

「…まさか、兵器実験……?」

「ご名答♪」

ラプラスは愉快そうにそう答えた。

「それが事実として………ラプラス、貴様の目的はなんだ?」

「ちょっとお。貴様って呼び方なくない?」

「黙れ。答えろ、女狐」

「仕方ないわねえ。じゃ、単刀直入に言うわよ。……あなたの復讐、アタシが手伝ってあげましょうか?」

「……なるほど。そうきましたか」

「あはあ。理解が早くて助かるう。詳しいことは、追々話すとしてえ。今、大事なことは一つだけ。アタシがあなたに、"牙"を与えられるということ。復讐を遂げるのに必要な、とっても鋭い"牙"を……ね」

ラプラスがそう言う後ろで、獣の雄叫びと、ガシャンガシャンという鎧の音が聞こえてきた。

「……いいでしょう。どうせ、もう、失うものなどありません。貴女が悪魔だろうと構わない。契約です、ラプラス。私に………力を貸しなさい」

そう言ってアウグストはラプラスに手を伸ばす。

「そうこなくっちゃ。じゃ、早速"牙"をあげちゃう」

そう言ってラプラスは自身の腰に手を置いた。

「リアクターですか?」

「そんなチャチな玩具じゃないわ」

そう言ったラプラスのピンクの目が赤く光った。

「あ、ぐ……!?」

アウグストは急に右目が疼き、痛みに歯を食いしばった。

「優秀なあなたにはそれ相応の……世界を呪えるほどのスペシャルプレゼントお♪」

ラプラスは艶めかしく自身の身体を撫で回して、その手の先をアウグストに向けると赤い光のモヤがアウグストの方へ飛んで行った。

「あ……があ!」

瞳の疼きが増して、アウグストは目を抑えた。

「ああああ……!」

痛みが引き手を離すと、アウグストの茶色の目は赤い色に変わった。そして、髪も急に白髪が混じり、手にはいつの間にか杖を持っていた。

「杖はオマケね。どう、いけそう?」

「ええ……まだ慣れませんが……、害虫駆除には充分です」

そう言って、出てきた帝国兵とガルグランとガルルにアウグストは杖を向けた。

【CHAPTER3 煉獄】
988Y.C. ジルドラ帝国 ナハトガル村

「村の生き残りか!目撃者はすべて皆殺しにするぞ!」

「……慈悲は必要なさそうですね。禍々しきこの力……存分に使わせていただきます!」

アウグストは杖の先から魔弾を発射するのだった。
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