エピソードまとめ

□イェルシィ・トゥエルチュ・ハイナジン
7ページ/18ページ

ep.1キミに花があるように
─────────♢────────


〔街中会話 お花畑に居る女の子〕

「すごいね。姫さまってお花とお話できるんだ」

「えっ?あたし花は好きだけど話せたことはないぜ?」

「でも姫さまさっき、お花に話しかけてたでしょ?」

「あーそれかー!それはねこの子に話しかけたの!」

「………どの子?」

「…ん?この子だけど?」

「……誰もいないよ?あ、わかった!姫様の考えた新しい遊びだ!どうやってやるのか教えて!」

「あれれ…?」


〔街中会話 ユッコ〕
「あ、イェルシィじゃん。なにしてんの?」

「ユッコ!ちょうどよかった!ユッコにはこの子見えるっしょ?あたしの新しいお友達!」

「この子……?……なにイェルシィ、もしかしてさみしいの?」

「えっ?」

「イマジナリーフレンドって、やつっしょそれ?そんなの作んなくても、あたしがいつでも遊んだるって!」

「そ、そういうんじゃないんだって〜!ホントのホントにここにいるのに」


〔街中会話 民家前の老婆〕
「おやおや、姫さまじゃないかえ。今日もメルギンに会いにきたんかの?」

「あ、別に約束してないよ!たまたま近くに来たから寄ってみただけー」

「そうかそうか。だがすまんのう。彼は今留守なんじゃ」

「そっかー……残念。新しい友だち紹介したかったのに」

「ほっほっほ、それはいい話だねえ。帰ったら幼馴染みが来たと伝えておくよ」

「やったっ、ありがとー♪」


〔イベント お菓子屋さん前の子供たち〕

「あっ姫さまだ!元気〜?」

「もち!今日も元気いっぱいだよん♪そうだ!新しい友だち紹介すんね。名前は……。あれ聞いてないや。ともかく、この子〜!」

「えっと……?」

「誰もいないよ?」

「…ありゃりゃーん?」


〔イベント お菓子屋さん〕

「ちゃっすー。店長!いつものアレくださいなー」

「おやっ、姫様いらっしゃい!そろそろ来るだろうと思って今日も焼いておいたよ。ほらっ、姫様大好物のストロープワッフルだ!姫様専用のシロップ増しだよ!」

「わおっ、ありがとー!めっさいい香りー♪ど?美味しそうでしょ?」

イェルシィの傍で小さな生き物は他のそうに揺れた。

「………おっ!やっぱり気に入ってくれた!嬉しいぜい!」

「……えーと姫様。誰に向けて話してんだい?」

「むむ?見えてない?……あーそういうことか……。街の子達もお菓子屋の店長も、この子のこと見えてないみたい……。つまりこの子はあたしにしか見えない。あたしにしか触れない……ってことか。……もしかしたら。よしっ、お母さんに相談してみよう」


〔イベント じいじ〕

「あっ、じいじ!」

「おや、姫様珍しくお早いお帰りでしたな。街を歩くのもよろしいですが、たまにはご勉学にも励まれ……」

「そっ、それはいいから!ちょっと聞きたいことがあるの!」

「はて、なんでしょう?」

「この子のこと……見える?」

「この子……?ふーむう……なんの謎掛けでございましょう?」

「……だよねー。わかった!ありがとね、じいじ!」

「な、なにがわかったのですかな?爺にはさっぱり……」

────────────────────

屋敷の中に入り、正面の玉座に腰掛ける巫女王の元へイェルシィは駆け寄った。

「ただいま、お母さん」

「あら〜?」

イェルシィの母、エルチュは首を傾げイェルシィの横を見た。

「…ふむふむ。な〜る〜?その子がイェルシィちゃんの新しいフレンドなワケですね〜」

「見えるの!?さっすがお母さん!」

「残念だけどぜんっぜん〜。でも、母にはわかっちゃいますね〜。"見えずとも風は風、触れずとも雲は雲"……」

「目に見える物がすべてではない……」

「その通り〜。カワイイ、イェルシィちゃんのお隣。確かに気配ありまくりですよ〜。とても優しくて愛らしい気配〜♪」

「それだけでもすごいよ!誰も気付けなかったのに!」

「…あっ、わかっちゃいました。母は今、悟りましたよ〜」

にこやかにそう言った後、エルチュの雰囲気が一瞬にして変わった。

「いいですか。よくお聞きなさい」

「うん…。いえっ、はい!」

巫女王としてのその風格を前に、イェルシィも背筋を正した。

「あなたは間違いなく、次の巫女王になるべき器です。あなたの隣にいるその子は、きっと"マナ"そのもの。それを私より遥かに強く感じ取り、見えるのがあなたなのです。修行なさいイェルシィ。より強く、より深く、マナの世界と繋がれるように。そうすれば、その子が何者なのか、わかることでしょう」

「……いつかみんなも、この子が見えるようになりますか?」

「ええ、きっと。あなたが架け橋になるのですよ。まず、その子に名を与えておあげなさい。この世界に在るという証のために」

「名前……」

イェルシィは一瞬、小さな生き物の方を見てすぐにエルチュの方を向き直した。

「うん、わかった。それじゃあ……」

頷いた後イェルシィは、身体ごと小さな生き物の方に向け、両手を合わせ、左手の先を前に出す敬礼を取った。

「……偉大なる源獣、タルルハンに言上いたします。私は、ハイナジンのともがらエルチュの子、イェルシィ。尽きせぬ土、果てなき草、終わりえぬ風の地に……今、新たな家族を見出しました。その者の名は……トト。トゥイトゥイ…"温かく柔らか"な者であるが故に」

そう告げて、イェルシィは敬礼を解いた。

「いい名ですね。それでは、イェルシィ、トト。あなた達の旅路に、タルルハンの加護と、喜びの花があらんことを」

そう言って、エルチュはイェルシィとトトを温かく見つめた。

「いつだって笑顔笑顔、で〜すよ〜」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ