エピソードまとめ

□イェルシィ・トゥエルチュ・ハイナジン
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ep.1キミに花があるように
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「あっ!トトがこっちだって!二人とも付いて来て!」

そう言ってイェルシィが指したのは、人ひとり通れる位の崖っぷち。その崖の下はマグマがグツグツと煮えたぎっている。
そこをイェルシィは、先導して進んでいく。

「こ、この道……こ、こから本当に辿り着けるのか?」

マクシムが震えた声を上げながら後に続く。

「きっと大丈夫!トトを信じてあげて!」

「おっ?道が開けたぞ!」

崖っぷちを抜けると、道が続いていた。

「ここが鉱山への道と繋がっているかどうか……。ひとまず進んでみましょう」

3人は一本道を進み、続いていた洞窟の中に入っていく。

998Y.C. オズガルド嶺峰国 ゼヴォロン火山道地下


「見て見て!超真っ赤なドロドロ!」

中は人が通れるようになっているようだが、所々マグマが染み出ていた。

「落ちたらひとたまりもなさそうですねえ……」



〔道中会話〕
「イェルシィくん。トトくんは今も僕達の近くにいるのか?」

「いますよー」

「ふむう……。……うーん。すまないがやはり見えない。それどころか、気配さえ感じないぞ」

「興味深い存在ですよね。今まであまり深く伺ったことは、ありませんでしたが……、トトさんはどのような姿をしているのですか?」

「んー、なんていうか獣っぽい感じだけど……。でも、あたしの知ってるどの獣とも違って、とってもカワイイの!」

「なるほど……」

「今ので納得する!?正直全然伝わってこなかったぞ……」

「でも二人が興味持ってくれてトトすっごく喜んでるよ!」

「そ、そうなのか……」

「今までトトさんについて、あまり聞かれたことはなかったんですか?」

「んー、そうかもトトのこと話すと、ちょっと変な目で見られちゃったりするしね。あ、トトのせいじゃないかんね。気にしないでね!それに誰かに見えなくても、あたしが見えてたらオッケー!トトとあたしはいつも一緒の最高の友達……ベストフレンドってヤツだぜい!」

「なるほど……親友なのですね。それは素敵だ。私も憧れてしまいます」

「えっ!?」

「マッキ先輩どしたの?」

「あ、いや……少し意外だったからな。まさかリュシアンが……何事も余裕げにかわすこの男が、だ。親友に憧れるなどという感情を、持ち合わせていたとは」

「おやおや、あんまりな言われようですねぇ。お互いを思いやる確かな絆……それを尊く思う気持ちは私にだってありますよ」

「そ、そうか……。そうかそうか!そんなに憧れるなら、僕がその親友になってやっても……」

「さて、先を急ぎましょうか」

「ちょっとお!!」


〔道中会話〕
「でもリュッシーの言うことわかる!そういう意味ではあたし……、ヴァネッさんとも親友になりたいな一」

「欲張りだねえキミは」

「いいんじゃないでしょうか。きっと彼女もそう思っていますよ」

「え、ホントにっ!?」

「ええ。イェルシィさんの話になると、いつもと少し様子が変わりますから」

「そ、そうなんだ……。あはっ、なんかうれしー!」

「でもヴァネッサくんはリュシアンといる時も、たまに様子がおかしいように思うが。……キミとも親友になりたいと思っているということか?」

「あはっ、マッキ先輩ってば可愛すぎ!」

「へ?」

「まっ、そういうことにしときましょ〜」

「い、いったいなんなんだ……?」

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「あ、この感じもしかして……」

「もうすぐ出口のようだな!」


光射す方へ3人は向かって行く。

998Y.C. オズガルド嶺峰国 ゼヴォロン火山道

「ここは……どうやら鉱山への道に合流したみたいですね」

「やっぱりあそこは抜け道だったのか……!偉いぞ、イェルシィくん!」

「トトが教えてくれただけですよー」

「そ、そうだったなトトくん……。……えーっと、どこにいるんだ?」

「ここ、ここっ!」

「ふ、ふーむ……この辺りか……?やはり目を細めても首をかしげても見えないが」

「でもでも絶対嘘じゃないよ!トトはいるし、あたしやみんなのことが大好きなんだ」

「嘘と言うつもりはないが……目に見えないのではどうにもな……」

「……見えずとも風は風、触れずとも雲は雲」

「なに?」

「アムル天将領のことわざですね」

「…そう。目に見える物だけがすべてじゃないって。見えないのはしょーがないけど、存在を否定するのだけは勘弁だぜい」

「……うむ。確かに失礼なことを言った。アセルマン家の者として詫びる。イェルシィくん、トトくん、ごめん」

「ありがと、マッキ先輩。トトも"気にするな"だって」

「そうか……!ありがとう、トトくん」



〔道中会話〕
「思いがけず迂回させられましたが、もうすぐ目的地の鉱山ですね」

「やっとか……。思えばドルガノーアへの山道もきつかったし、今日だけで随分、足腰が鍛えられた気がするぞ……」

「え、そう?あたしはワリとまだまだヨユーですけど」

「キミの体力は底なしなの……?」



〔道中会話〕
「ヴァネッさん一人で大丈夫かなー。あたし達のことすり抜けて獣が街に入り込んだりしてないよね?」

「吊り橋が使えない以上、街までは一本道でしたから、おそらく大丈夫でしょう。まあ、いずれにせよ心配いりません。彼女は強い……。私達がいなくても対処できるはずです」

「……信頼しているんだな」

「彼女とは任務をともにすることが多いですからね」

「へえーえ?」

「イェルシィさん?」

「ふふっ、なんでもな〜い♪」

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〔鉱山前 獣の群れ〕フランジャ、フランジャルキ

「前方に獣発見〜!」

「鉱山を守るように立っていますねえ。倒さないと進めそうにありません」

「ふん。わざわざ向こうから我が矢の的となりに来たか。いいだろう。アセルマン家の者に討たれる栄誉をくれてやる!」
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