エピソードまとめ
□イェルシィ・トゥエルチュ・ハイナジン
3ページ/18ページ
ep.1キミに花があるように
─────────♢────────
〔道中会話〕
「すまないな。私と二人きりだと退屈させてしまう」
「ええっ、なにそれ!?ヴァネッさんと一緒に歩くの楽しいし、あたしは不真面目でフニャ〜。ヴァネッさんは真面目でビシッ!ワリといい凸凹コンビだと思うけど!」
「不揃い故の名コンビ……か。フフッ、そうなれたら楽しいな。ありがとう、イェルシィ」
「ほら!トトもあたし達のコンビイイ感じだって!」
「トトか…。やはり私には"見えない"ようだ。せっかく褒めてもらっているのに、すまないなトト」
「気にしてないってー。トトも可愛くびょんぴょん跳ねてるし!」
「ありがとうトト。気持ちは確かに受け取った」
「えっ!?や、やっぱ見えてんじゃん!?」
「いいや、一向に見えん。だがお前の視線や動きであたりを付けた。………よかったこの位置にいるんだな。感触はないけれど……、感謝の気持ちは相手を見て伝えたい」
「や、優しいなあもう。惚れるじゃんかよ……」
「フフッ、大げさだ」
────────────────────
「この先が山都ドルガノーアだ。リュシアンとマクシムとは、そこで合流する手筈になっている」
「りょー!早く会いに行こー!」
2人はやっとドルガノーアの門の前へ到着した。
「あれっ?あそこ誰か戦ってね?」
「……リュシアンだ!」
獣の群がる中にいるリュシアンの元に駆け寄る。その傍には子供たちが一緒にいた。
「リュッシー、これは!?」
「説明はあとです!この子を守りますよ!」
獣討伐後。
「よっしゃー大勝利っ!」
「よく頑張りましたね」
「リュッシー最強!子ども守りながら一人で戦ってたなんてすごい!さすがブレイズ!ステキ!」
「ははは、ありがとうございます」
「しかし……マクシムはどこです?」
「彼には獣の被害について、街の方に聞き取りをお願いしているんです。私は周辺を確認する途中で、この子に会いまして」
「じゃあ…街の近くまで獣が出てるってことですか?」
「そうなりますねえ……。一刻も早く対応をしなくては。まずは私とヴァネッサさんで この子達を送り届けましょう」
「じゃ、あたしはマッキ先輩探してくる!あとで街の広場に集合ねー」
「心得ました」
〔子供たちに話しかける〕
「怖かったねえ。もう大丈夫だよ」
「うう……早く……早くおうち帰りたい……」
「でも……また獣が出てきたら……!」
「だーいじょうぶっ!お姉さん達がちゃーんとバッチリ、あなたをおうちまで連れてってあげるぜい!……ね、ヴァネッさん♪」
「その通りだ。安心するんだ、子ども」
────────────────────
998Y.C. オズガルド嶺峰国 山都ドルガノーア
「さてとマッキ先輩どこかな〜。迷子になってたりして」
そう言いながら一足先にドルガノーアに入る。
「えっ?なにトト?」
トトはピューと街の階段を登った左側に飛んでいってしまった。
「またなんか見つけたん?どこどこ〜?」
トトの後をついて行くと、武器屋の前に見覚えのある帽子があった。トトはその帽子をかぶった少年にピタッと寄り添っていた。
「ふむふむ。なかなかの品揃えだな」
「どうもありがとうございます」
「だが諸君が武装して、自衛する必要性は皆無だ!それはなぜか!このマクシム・アセルマンが来たからだ!我が家名と騎士の誇りにかけて諸君は僕が守るぞ!」
「はあ……」
武器屋の店主が彼の扱いに困っているようなので、見かねたイェルシィは声をかけた。
「ちゃーす、マッキ先輩」
「僕をマッキなどと呼ぶ無礼な声は……」
そう言ってマクシムは振り返った。
「やはりキミかイェルシィくん!キミが来たということは、ヴァネッサくんも到着したんだな」
「そうでーす。獣なんですけどこの辺りまで出てますよ」
「な、なんと!」
「さっきも街の入り口でリュッシーが戦ってたんです。あたしらも合流して、一緒にやっつけちゃったけど」
「うぐぐ……僕としたことが、仲間の危機に駆け付けられないとは!」
「ひとまず広場に集合だって」
「ああ、わかった!」
────────────────────
〔街中会話 コリコリ手羽串焼き屋さん〕
「ええっ、街の入り口にが!?こんなとこで串焼き売ってる場合じゃねえ!早く帰んないと俺がコリコリになっちまう!」
「コリコリ……ってここの名物だっけ?」
「ああそうさ!正確にはコリコリ手羽串焼きだ!まあ、今度食べに来てくれよ。獣問題を解決してくれたら、ごちそうするぜ!」
「ホント!?俄然やる気出ちゃったぜい!」
〔街中会話 屋台付近の老人〕
「うまいっ!この一本のために生きている!」
「……お食事中、申し訳ないんですけど、獣が出てるから家に帰ったほうがいいですよ」
「なにっ!?そうなのか!?食べ終わったあとで良かった……週1の楽しみが奪われたら、生きている意味がないからな」
「そんなに美味しいなんて……、なに食べてたんだろ……」
〔街中会話 民家前にいる女の子〕
「キミ、危ないないから、おうちに帰ったほうがいいよ。ここは獣が出るからね」
「え、街に獣が出たの?でも大丈夫だよ!だってすぐそこに兵隊さん達のおうちあるし、なにかあったらやっつけてくれるんだよ!」
「あはは、確かに兵隊さんは強いね。じゃあその活躍を見たくない!?」
「えっ!見たい見たい!」
「それじゃ、やっぱ早く帰ったほうがいいよ。おうちの窓が一番の特等席かもしれないぞ?」
「そっか……わかった!」
〔街中会話 駐屯地内の兵士〕
「なんだと!?獣がそんな近くまで?……戦力の派遣を要請しておいてよかった。生憎今ここは手薄でな。多くの兵士達は戦線に駆り出されている」
「なるほど。だからあたし達が送られたんですねー」
「ひとまず、俺達は村の周辺を見回る。キミ達ブレイズは街の様子を見てくれ」
「あいあーい!」
〔街中会話 かくれんぼ鬼の子〕
「あいつどこ行ったんだろ?全然見つかんない……」
「かくれんぼなら、今は家の中がいいと思うな〜」
「え〜?そんなのつまんないじゃん!」
「そうかもしれないけど、ここにいると大変だよ。命がけのかくれんぼになっちゃうかも。ここは獣が出るからね」
「け、けもの!?今すぐ帰るよ!」
〔街中会話 隠れてる子〕
「キミかくれんぼ?」
「…え。ど、どうして僕が隠れてるってわかったの?」
「この子!トトが見つけてくれたんだ〜」
「え……?誰もいないけど……」
「……とりあえずここは獣が出るから、早くおうちに帰った方がいいよ」
「け、けもの……!?おかーさんに知らせなきゃ!」
〔街中会話 高いところにいるおじさん〕
「け、獣が出たって聞いたんですけど、だ、大丈夫……ですよね?」
「もっちろん!でも念のため家から出ないようにねー」
「た、頼りにしてますよ!」
〔街中会話 街の南西の吊り橋〕
「なんの用だ?ここはあんたみたいなのが、来る場所じゃねえぞ」
「……もしかしてここ危ないトコなのかな?」
「そういうことだ。わかったならさっさと帰れ」
「……いつもこうやって迷子になった人に助言してるの?」
「はあ?」
「すっごくいい人じゃん!なかなかできないよ!きっと助かった人たくさんいるって!話してくれてありがとね♪」
「そ、そんなんじゃねえ……!」
〔街中会話 女子達〕
「ねえ見た!?さっき通った人!」
「見た見た!イケメンだったわよねえ」
「でも良い仲になるのは、絶対に簡単じゃないわよ。だって見た?隣を歩いてた子!ものすごい眼差しで周囲を睨み付けてたわ。あれくらいの気迫がないと、イケメンとは付き合えないのよ」
「た、確かに……私には無理かも……」
「……その二人ってもしかして……」
〔街中会話 西側の吊り橋の老婆〕
「ああ、鳥主ハリーオウ様。どうか我らを獣からお守り下さい……」
「おばあちゃん、ここは危ないって!お祈りするならおうちの中でやろっ!」
「……なんと!ハリーオゥ様の遣いの兵隊さんが来なさった!ありがたや……ありがたや……」
「あ、あはは、困ったなあ……。……でも源獣の違いって意味じゃ、間違いでもないかもねー」