エピソードまとめ
□マクシム・アセルマン
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ep.1 夢まで遠し 我が背丈
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翌日の朝、宿から出たマクシムはうーんと体を伸ばした。
「任務も終わったしもう帰るだけだが、せっかくここまで来たのにそれだけでは勿体ない……。ふふふ、そこでだ。フレデリックが作ってくれた名店リスト!小銭だけでも買い食いはできる!屋台料理で異国の味を楽しもう!」
そう言ってマクシムは、ドルガノーアの街を散策する。
「ああ、なんとも香ばしい良い香りがする……。ますます、お腹が減ってきたぞ……」
そんなマクシムはフラフラと屋台の方へ寄っていく。
「そこの人!旅の方だね?どうだい名物のコリコリ手羽串焼きは!」
「おお、美味そうだな。じゃあ試しに1本……
あ、待って」
マクシムは財布の中身を確認する。
「よし足りるぞ。1本くれたまえ!」
「あいよっ」
手渡された串に刺さった肉に1口齧りつく。
「ああ、美味い……!スパイシーかつワイルドだ!」
手羽先焼きを食べ終わったマクシムはそのまま、街の入口の方へ向かう階段をおりる。
するとまた、先程とは違ったいい香りがしてきた。
「もりもりマッチョおでんは、どうだい、兄ちゃん」
「な、なんとも興味をそそられる名称だな……。しかし、残念ながらあまり金がないんだ」
そう言えば店主の男性は驚いたような顔をした。
「そんなに身なりが良いのにかい?ああわかった!盗賊団にやられたな?」
「確かに出会ったが……撃退したぞ」
「へえ!そいつは大したもんだ。こいつはおごりだよ。盗賊退治の英雄さん」
「おおお……!すまない」
店主から渡された熱々おでんをいただきながら、マクシムはふと考える。
「せっかくだし街の人にも話を聞いてみるか。観光ではなく視察としてな!」
おでんをペロリと平らげた後、マクシムはまず、屋台に並ぶ男性に声をかけてみた。
「あの"村"にも困ったもんさ。火山道の奥の方を勝手に陣取って住んでんだ。そこにどんどんと吹き溜まって……。気付けば立派な盗賊団になっちまいやがった」
「村が盗賊団に?そういえば昨日ディーサも "村"のことを話してたな……」
昨日、財布を"あげた"女の子の事を思い出す。
「もしかして……」
「戦でなにもかも失ったヤツらが身を寄せ合ってる場所だ。哀れなのは確かだけどよ」
「……キミ。"村"の詳しい場所を教えてはくれないか?」
「そこの露店のある通りを左手に行ったとこの門が、その村に続く道だが……」
不思議そうな顔をしながら答えつつ、男はマクシムの背にある弓を見た。
「……なるほど!兵士さん自ら討伐に!」
「い、いやそう決めたわけでは………」
「いやー、これは心強い!でも 気を付けなよ。連中"村"までの道に、誰も寄せ付けないよう勝手に何個も門を構えてるって話だ」
「わかった。気を付けよう」
勝手に行くことが決定されたみたいになっていたが、どうしよう、とマクシムはとりあえず歩き出す。
そうすると、昨日会った騎士学校の先輩と言う兵士が、街の見回りをしていたのに出くわした。
「よむ後輩!まだ街にいたんだな!」
「少し野暮用ができまして」
「ブレイズの任務か?大変そうだな。遠出する前に露店を覗いていけよ。この街の屋台には名物料理がたくさんある。どれを食っても損はないぜ」
「なるほど……大先輩のお言葉痛み入ります!」
そう言って先輩と別れて、そのままの流れで何となく駐屯所の方へ向かってみた。
「昨日のブレイズくんじゃないか。お使いはもう終わったのかい?」
昨日駐屯所の入口で門番をしていた兵が、今日も門番の任についていた。
「ああ、滞りなくな。ところで……この辺りに"村"があると聞いたのだが」
「……もしかして、新たな任務をもらったのかな?彼らには手を焼いていてね。"村"へと続く道がなかなか厄介なんだが……」
思い返すようにそう言いながらマクシムを見て、ああでも、と続けた。
「キミの弓があれば大丈夫かもしれないな」
「ん?どういうことだ?」
「まあ行ってみたらわかるよ。……頑張って」
またも、彼らの中では自分が行くことになっているようだが、どうしたものか、と来た道を戻る。
「ここを真っ直ぐ行って、左手にある門だったな。………任務でもないし、本来首を突っ込むべき問題じゃないが、放って置くのも気持ちが悪い……」
先程教えてもらった通り、露店の左手側に進んで行くと吊り橋があった。木の上にはここで目が合っただけで、柄の悪いヤツらに難癖付けられたが……。
「この先に何用じゃ?お前さんには似合わぬ場所だと思うがのう」
「……やっぱり道を間違えているか?山道へ続く門に向かっているのだが……」
「西門のことじゃな。それならこの先の道を左に曲がったところじゃ」
「おお、助かりましたご老人!」
礼を言って、今度こそ正しい道を進めば、街の西門の前にフレデリックが立っていた。
「賊の根城へ向かわれるおつもりですな?」
「ああ"村"とやらを見に行ってみるつもりだ」
「……止めはいたしませぬ。坊ちゃまは強い御方だと存じておりますゆえ。しかし、くれぐれも、お怪我はなさいませぬよう」
「わかっているよ」
「……僭越ながら申し上げます。本来の役目から外れた行動ですぞ。仮に盗賊を退治なさったとてさして評価は、されないでしょう」
フレデリックの言葉が正しいのは分かっている。
「でも……どうしても、気になるんだ」
そう言ってマクシムは西門の扉を開いた。