エピソードまとめ
□マクシム・アセルマン
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ep.1 夢まで遠し 我が背丈
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〔街中会話 女の子〕
「あ、さっきの兵隊さん!」
「先ほどは助かった。おかげで無事に用事を済ませられたぞ」
「そっか……よかったね。自分のおうち思い出せて!」
「だ、だから家じゃないんだって……」
〔街中会話 街の右側の最高層にいる男〕
「随分高い場所にいるな……おーい!!そんな場所にいたら俺な……」
「うわあああっ!!!」
「うわああっ!?!?」
「あ……あああ俺ないな!急に大声出すなよ!谷底まで真っ逆さまに、なるところだったじゃないか!」
「す……すまない……」
〔街中会話 階段登った所の女子たち〕
「あら?イケメンの弟くんじゃない」
「お兄さんとはぐれちゃったの?」
「……誤解があるようなので言っておくが。僕は断じて!彼の弟ではない!」
「まあ……どうりで似てないと思ったわ」
「それじゃあどういう関係なの?」
「よくぞ聞いてくれた!彼と僕は真のライバル同士だ!」
「……申し訳ないけど、それは無謀なんじゃないかしら」
「え」
「そうね。彼のような美貌はなかなかいないわ。残念だけど……負けを認めた方がいいと思うわよ」
「な、な、な……。顔の話ではないのだが!?」
〔街中会話 街の入口階段前の老婆〕
「こんな辺鄙な場所までよく来ましたねえ。火山道を登ってくるのは、さぞ大変だったでしょう?ここはオズガルドの首府、ドルガノーア。山と人が共存する街。坂道が多いから足元には気を付けて下さいね」
〔街中会話 屋台のおばさん〕
「ようこそ山の部ドルガノーアへ!名物の手羽串焼きや、もりもりマッチョおでんは、ここでしか食べられないよー!さあさあ食べていって食べていってねー!」
「……どれもこれも美味そうだな……。あとで寄ってみるか」
〔街中会話 貧民街への吊り橋の前〕
「おいてめえなに見てやがる」
「別に見ていたわけではない。通りがかっただけだ」
「……ここがどこだかわかってんのか?あんたみたいな身なりの奴は、すぐに身ぐるみ剥がされるぜ」
「……生僧だが、僕はそんなに弱くない。つまり!心配は無用だ!」
「……なら勝手にしな。忠告はしたぜ」
〔街中会話 街の左側の最高層〕
「あぁ、山というのは雄大だなあ。溶岩が年月をかけて、こんなに高く大きくなるなんて、自然ってのはやっぱ凄いよ。僕の悩みなんてちっぽけに思えるよね……」
〔街中会話 宿屋前広場の入口に居る年配女性〕
「この先の火山道は獣の棲家になっていて、人が通るような場所ではなかったのよ。……少し前まではね」
「今は違うということか?」
「正確な時期はわからないけど、火山道の奥に人が住み着いたみたい」
「そんなところに住み着くなんて……」
「ええ。まっとうな人達じゃないのは確かよ。だから危険なのは変わらないわ。それどころか獣もいるし……むしろ悪化したかも」
「なるほど……。近付かない方が良さそうだな」
〔街中会話 宿屋前広場、右側の門〕
「この門の先は確か・・・・」
「おお、旅のお方ですかな?この先はハリーオゥ様のご聖域じゃ」
「おお、やはりそうか。オズガルドの源獣島主ハリーオゥ……。せっかくの機会だ。近くで姿を拝見したかったが……」
「すみませんなあ。今は通れないみたいじゃ」
「残念だが仕方ない……またの機会に出直そう」
〔街中会話 宿屋奥の大きな門の前〕
「旅人さんですか?この先は鉱山しかありませんよ」
「ああ、知ってるぞ。ノルバ鉱山というのだったな」
「ご存知でしたか。険しい道ばかりだし厄介な歌も多く出るので、行かれるなら注意しようと思っていたのですが、余計なお世話でしたね」
「いや、非常にありがたい助言だ。キミのおかげで救われる人もいることだろう。……実際あそこには、とんでもない獣がいたからな」
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〔イベント 宿屋前フレデリック〕
「おお、坊ちゃま!お疲れさまでございます!」
「ああ、フレデリック。宿は取れているか?」
「もちろんですとも!宿だけでなく、飲食の名店リストも既に用意してございます」
「パーフェクトだ、フレデリック」
「私は坊ちゃまにお仕えする身。それ故当然のことです」
そう言って、フレデリックはキョロキョロと辺りを見回した。
「しかし……、リュシアン様の姿が見えないようですが……」
「彼には彼の用事があるそうだ。筆頭殿に相応しい用事なのだろう」
「さようでございますか……」
そう話をしてる2人の後ろから女の子が走ってきて、マクシムにぶつかった。
「きゃっ!」
悲鳴を上げて倒れて女の子は尻もちを着いた。
「な、なんだあ…?」
驚いてマクシムは振り返り、倒れた女の子に手を伸ばす。
「怪我はないか?街中で走ったら危ないぞ!」
女の子の腕を引き上げて起き上がらせる。
「う、うん。ごめんなさい……。それじゃあ……私、急いでるから……」
そう言って女の子は急いで立ち去ろうとする。
「……お待ち下さい」
フレデリックが声をかける。
「どうした、フレデリック」
「マクシム様。懐のものをお確かめ下さい」
手のひらでどうぞ、とマクシムのズボンを指すフレデリックに、女の子は、っ!と息を吸って小さい体をびくりとさせた。
マクシムはズボンのポケットをゴソゴソと漁る。
「ん……あれ?財布がないぞ!」
「……皆まで言わずともおわかりになりますな?」
フレデリックがそっと、女の子に声をかける。
「あ、あ……」
震えた様子で、女の子は緑色で金の装飾が付いた財布を両手で差し出した。
「ごめん、なさい………ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさい……」
女の子はぷるぷると震えていた。
「若いながらに見事なスリの技です。慣れているのでございましょう」
「この場合どうすればいいんだ?」
「こちらの治安当局に引き渡すのが通例ですが……」
「ひっ!?そ、それだけは……イヤ……」
女の子を見て、マクシムは少し悩んだ。
「………ひとまず名を聞こう。僕はマクシム・アセルマン。キミは?」
「……ディーサ」
「ディーサ。どうしてスリを?ご家族はいないのか?」
「みんな……死んじゃった………。戦争…逃げてきたの……。だから"村"に住んでる。
「村?」
「でも"村"には物がないから街まで来るの……。前に……ゴミ漁りをしてたら、兵隊さんに捕まって……。すごく…叱られた……。"次はないぞ"って……。だから……私、私………」
「……フレデリック。その財布は彼女に渡してくれ」
「なんと。良いのですか?」
「ふんっ。考えてもみろ。僕はブレイズ所属の精鋭だぞ。その僕から、たかが子どもが財布をスリ盗っただと?ふんっ!ありえん。不可能だ。だから、その財布は……その子にくれてやったんだ」
「え…?」
「僕には不慣れな街だ。宿への道を忘れてしまってな。財布は道案内のお礼だ!」
「そうすると、今月分のお小遣いはすべて消えることとなりますが……」
「ぐはあっ!?いっ……いい!構わん!」
「……左様でございますか。では、仰せのままに」
「あ…、ありがとう……!」
「ううっ、小遣い……。これからどうやって過ごそうかな……」