エピソードまとめ
□マクシム・アセルマン
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ep.1 夢まで遠し 我が背丈
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998Y.C. オズカルド嶺峰国 山都ドルガノーア
「ようやく到着か。オズガルドの首府、ドルガノーア………。いつ見ても岩と山の国だな」
「色々見て回りたいところですが、まずは駐屯所へ行って任務を完了させましょう」
街に入ってすぐ、正面にある階段を登っていくと、登りきった先で会話をしていた女子2人のうちの1人がリュシアンを見て目を丸くした。
「あっあっあっ、あなたは……!」
「ん?私ですか?」
「なにどうしたの?」
「ちょっと覚えてないの!?このイケメンのこと!」
「もしかして前に、凄い眼力の女の子と歩いてた……」
「……リュシアン、知り合いなのか?」
「そういうわけではありませんが……」
「あの……この辺りにはよく来られるんですか?」
「今日は弟さんと一緒なんですね」
「だ、誰が弟だって!?」
「ははは、これはまた面白いですねえ」
「ちょっと!キミも否定しなさいよ!」
駐屯所に行かなくては行けないし、彼女らには構って居られないと、その場を離れ左側の屋台の前にいた老人に声をかける。
「駐屯所がどこにあるか知らないだろうか?」
「そこ目指してるなら、行き過ぎだよ。一回戻らないと駄目だな」
「ええと戻るというのは……」
「……すまないがあとにしてくれないか。週に一度のお楽しみコリコリ手羽串焼きを、アツアツのまま存分に楽しみたいんだよ!」
「す、すまない……。コリコリ手羽串焼きは、そんなに人を虜にするのか……。……恐ろしいが僕も食べたくなってきたぞ」
とにかく、こちらではないとなると階段を登るまでは一本道だったのだから、階段を上がった先の右手にある階段を行けばいいわけだ。
そう思い、女子たちとの会話も終わった様子のリュシアンを連れてその先の階段を進む。
すると今度は民家の前で遊んでいる女の子がいた。
「こんにちは」
リュシアンがしゃがんで声を掛けるのにつられて、同じようにしゃがみ子どもの目線に合わせる。
「あ、兵隊さん?こんにちはー」
「駐屯所を探しているのだが、どこにあるのか知っているか?」
「兵隊さんがいっぱいいるところですよ」
「それならここをまっすぐ行ったところだよ。兵隊さんなのに自分のおうち忘れちゃったの?」
「…正確には駐屯所は兵隊の家ではないが……」
「まあでも似たようなところは、ありますよねえ。私も任務が長いと、学校の場所が思い出せなくなります」
「………それ突っ込んでいいところなのねえ?」
彼の本当なのか冗談なのか分からない話に困惑しながらも、女の子と別れ、教えてもらったように真っ直ぐ進むと、緑色の連邦創術士の隊服を来た兵士が立っていた。
「おや、もしかして君達が騎士学校からのお使いかい?」
「ああ、そうだ」
「やっと来たのか……兵長がお待ちかねだったぞ」
「そんなに心待ちにされていたとは。荷物の中身はいったい……」
「それは……知らない方が身のためだ」
「え…」
「……といっても僕も、なにも知らないんだけどね!」
さあ、お行きと駐屯所の中に通され、奥の建物の前にいた兵士に声をかける。
「頼もう!我が名はマクシム・アセルマン!」
「同じくリュシアン・デュフォール。イーディス騎士学校の使いです」
「おお、待ち侘びておったぞ」
「校長よりの荷物確かにお渡しする」
「うむ、よくぞ届けてくれた。途中帝国の手勢による、妨害などはなかったか?」
「それはありませんでしたが気がかりなことが一つ」
「街道上の賊のことだな!取り締まりが甘いのではないか?」
「……その件には我々も頭を悩ませている。脅威としてはさほどでもないのだが、それ故に対応も後回しにせざるを得なくてな」
「今は賊より、帝国との戦が最優先……ということか。まあ……やむを得まいな」
「しかし、いずれ本腰を入れて対処しようと思っている」
「それはなによりだ」
「では任務も終えたことですし、そろそろ失礼しましょうか」
そう言ったリュシアンの言葉に頷きその場を離れる。
「終わりましたね、マクシムさん」
「ああ!キミもご苦労だったな。せっかくだ、しばし観光して帰るとするか」
「………そうしたいところなのですが。私はまだやることがありまして。ここからは別行動となります」
「そ、そうなのか。ええと、その……任務なのか?」
「ええ。内容についてはお話しできませんが……。申し訳ありません」
「いや、それは当然だ。キミも励んでくれたまえ」
「ありがとうございます。それではこれで」
足早に去っていく彼を見送って、マクシムはため息を吐く。
「彼は極秘任務に従事し、僕はただの荷運び役。情けないものだ。これが現実の評価か………。精進しなければな!とりあえず今日は休もう。宿に向かうか。たしか露店のある通りを抜けた先にあったな」
そう言ってマクシムは歩み始めるのだった。
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〔街中会話 駐屯所内の兵士〕
「お前達が例の派遣されて来たブレイズか。ということは、はるばるシルヴェーアから?」
「ああ。火山道を通ってな」
「そうか……。懐かしいなあ。実はオレもイーディスの出身なんだよ」
「な、なんと!つまり僕の先輩でしたか!」
「まあ、優等生じゃなかったから、こんな場所にいるが、たまにルディロームの深緑が恋しくなるよ。……こんなカラッカラの地域にいるとなおさらな」
〔街中会話 駐屯所内の炭鉱〕
「なんだお前は。あっちへ行け、仕事中だ」
「仕事というのは?」
「炭鉱だ。この先は鉱山だからな」
「……なるほど」
「わかったなら消えろ。邪魔をするな」
「……随分と喧嘩腰じゃないの……。あの鉱山に良い思い出はないし、おとなしく退散するか……」