エピソードまとめ
□マクシム・アセルマン
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ep.2 恋をしたって本当ですか?
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「まあ凄いボリュームのパンケーキですわね
!」
カフェのテラス席の赤いパラソルのしたでお茶をしている二人の元に、分厚い三段重ねのパンケーキが置かれた。
「リンゴとベリーの盛り付けが、とても可愛らしいです」
「気に入って下さって、良かった!このカフェで評判の一品なんです。シルヴェーア直輸入の小麦を生地に使っていたり、パティシエは自らの足で食材探しをしているとか」
そう言ってマクシムは事前に調べていた知識を披露した。
「食材探しの冒険……ロマンがありますわね!」
そう語る二人の姿を、草場の影からイェルシィとリュシアンが見守る。
「いいな〜。あたしもパンケーキ食べたーい!」
「お茶に合いそうですね……。今度改めて訪れましょう」
甘いものと紅茶の好きなイェルシィとリュシアンは本来の目的よりも、美味しそうなパンケーキの方に夢中だった。
「さて小腹も満たされたことだし、次は露店で買い物でもするか?」
次の行き先を決めて、お茶を終えたマクシムはオルタンスと共に席を立った。
「パンケーキとっても美味しかったですわ。いいお店を教えて下さって、ありがとうございます」
「そう言っていただけてなによりです!」
そう答えて、マクシムはオルタンスを連れて、1度噴水広場の方に戻り、噴水広場から真っ直ぐ繋がる大通りの方へ歩いていく。
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〔街中会話 おじさん〕
「この先の広場は待ち合わせ場所として、よく使われてるよ。ただいつも凄く混んでるから、目的の人と会うまでに時間が掛かることもあるけどね……」
〔街中会話 子供〕
「すぐそこにお店がいっぱい、並んでるとこあるよ!お菓子とかおもちゃ……なーんでもそこで買えるから、おにいちゃん達にもオススメだよ!」
〔道中会話〕
「もしかして今向かっているのは、露店の方でしょうか?」
「むっ、気付かれてしまいましたか」
「まあ…!とっても楽しみですわ!」
〔違う道へ行こうとした場合〕
「露店はこっちじゃない!しっかりしなくては……」
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〔イベント会話 露店1〕
「やっぱアルコニスで売ってる物は、質が良いねえ」
「ほう。そうなのか」
「例えばハザールだと、宝石とかに偽物が混じってることもあるけど、ここで流通してるのは正真正銘本物ばかりだよ。聖領で悪さしようって輩は、なかなかいないからね」
〔イベント会話 露店2〕
「やあ、こんにちは!良い品揃ってるよ!」
「う〜む……。どれも少し値が張るな……」
「確かにうちの物は高いが、そのぶん質は逸品だよ。高いが長く使えるいい物と安く壊れやすい粗悪品……。どちらを求めるかはお客さん次第だね」
露店を見て回っていると奥の宝石商から声を掛けられた。
「はい、お二人さんいらっしゃい!そちらのお嬢さんに似合いそうな宝石はいかがかな?」
「むっ!?これはなんと鮮やかな……。確かにレディに合いそうだがどう思う……」
そう言ってマクシムは隣を振り返ってみた。
「……あれ?」
隣に居たのは全く知らない女性。
「レディ・オルタンス!?ど、どこに行ったー!?」
マクシムはキョロキョロと辺りを見まわす。
「はぐれてしまったのか?早く見つけなければ!」
〔捜索1〕
「ここにいらっしゃいましたか!」
「きゃっ!な、なんですか、あなた!?もしかして人混みに紛れてスリを……!?犯罪者よ!兵隊さーん!」
「ご誤解だ!財布を確認したまえ!」
〔捜索2〕
「オルタンス殿!」
「えっ?なにかしら?新手のナンパならお断りよ」
「も、申し訳ない。人違いだったようだ……」
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オルタンスは結構離れた所で見つかった。
「ああ、良かった!やっと見つけました!」
露店を眺めていた彼女にマクシムはそう声を掛けた。
「探して下さっていたのですね。ごめんなさい!」
振り返ったオルタンスはそう謝った。
「色々な商品に気を取られて、はしゃいでしまいましたわ。詳しい友人の案内で商都ワースバードの、テルテペ市場巡りを何度かしたことがありますの」
「世界一の大市場ハザールの!あなたは僕より、ずっと活動的な方のようですね」
「ふふ……。私、外を見て回るのが大好きなんですの。でも……」
オルタンスは、少し物悲しそうに視線を外す。
「自由な時間はあっという間に尽きてしまいますわね……」
「お疲れでしたら少し休みましょうか?」
元気のなくなったオルタンスを見てマクシムはそう尋ねる。
「いいえ。問題ありませんわ。……よろしければ神殿の方まで行きませんか?せっかくアルコニスに来たので拝覧したいと思いまして」
「もちろんです!参りましょう」
オルタンスの要望を受け、マクシムは露店の通りから大通りの方へ戻って行く。
「さすがに創神殿まで迷うことはないな!」
「こんなにアルコニスを歩くのは初めてですわ。マクシム様楽しい時間を、ありがとうございます」
「そ、それは……僕の台詞です!」
礼を言ってきたオルタンスにそう返しながら、マクシムは大通りの先にある大きな門の前に到着するのだった。
「この階段を上がった先は創神殿……。広場は開放されているが創神オリジン様の御前だ。滅多なことはするなよ」
門番の兵にそう言って、門を開け、二人を中に通した。
「創神オリジン……やはり壮大ですわね」
「はい、聖領と呼ばれる場所に相応しいお姿です。目に焼き付けて帰らねば……」
二人は並んで広大な広場から見える神殿の後ろに聳え立つ、人型で大きく長い腕を持つ源獣を見上げた。