エピソードまとめ

□リュシアン・デュフォール
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ep.1 知慧の刃は密やかに
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〔酒場の裏路地〕

「……行きますよ」

「はい」

先程の場所に戻ってくれば今度は1人、違う男が立っていた。

「マルローさんですね?」

「はっ?え……あ、はいそうですが?」

「すでに城門付近は兵が固めています。できれば投降していただけると……」

そう言うと男はリアクターの銃をこちらへ向けてきた。

「ちいっ!騒ぎが起きないと思ったら貴様らの仕業か」

「仕業だなんてひどい言われようですねえ。これでも街のために 任務を頑張っているんですよ」

「獣に興奮剤を与えたのもお前か」

「俺の動きを掴んだってことは、察しも付いてんだろ?くだらねえこと聞いてくるんじゃねえよ!」

「やれやれ品がない方ですね」



「チッ、しぶといじゃねえか……仕方ねえ、アレを使うか」

そう言って偽マルローは懐から紫色の瓶を取り出した。

「貴様らも狂乱し!守るべき街で暴れ回るがいい!」

そう言って偽マルローは瓶を地面に叩きつけた。すると即座に瓶が割れ、その中の薬が霧のように辺りに舞った。
そして次の瞬間。ピラーの方から一筋の矢が飛んできて、その矢に括り付けられていた青い瓶が割れ、それが霧のように辺りを包んだ。

「お見事です、マクシムさん」


リュシアが見上げたリュンヌピラーの上では……

「ふはははっ!」

マクシムが高笑いをしていた。

「ここからならば、市内全体が丸見えだぞ!悪党の小細工など僕が狙い撃ちだ!」



「さすが、期待通りですね」

「毒霧が中和だと……?くっ……!ここは下がるか」

そう言って偽マルローは素早く地面に閃光弾を投げつけた。
眩しさにリュシアンとヴァネッサが目を瞑った隙に、偽マルローは路地裏を出ていってしまう。

「あ、待てっ!」

「やれやれ、逃げられてしまいましたね。ヴァネッサさん。あなたは、マクシムさんの元に向かっていただけますか?」

「どうしてです?」

「さっきの動きで敵に気付かれたでしょう」

「なるほど。そちらの援護ですね。心得ました。リュシアン、あなたは?」

「私は、偽マルローさんにお付き合いしましょう」




「偽マルローさんも往生際が悪いですねえ。逃げたところですぐに足がつくというのに。
ふふ……どちらかというと鼻につくですね。毒の匂い……潜入工作員としてはうかつでしたね。左手側の門の方から流れてきていますよ」


〔門の前〕
「いけませんね……もう門の外へ出ていますか。匂いが辿れなくなる前に追い付くとしましょう」






〔門の先、橋の前のゲート〕
「ごきげんよう。また会いましたねマルローさん」

「……貴様なぜここがわかった」

「匂いですよ。あなたは毒を使う者の独特の匂いがするんです。自分では気付かれないと、お思いでしょうけれど」

「そうかい。これからは気を付けるさ、貴様を我が毒で片付けてからな!」

「おお怖い。私は体が弱いんです。……ですが手向かってくるならば、全力で叩き潰しましょう」

そう言ってリュシアンは長剣を抜いた。


「ところで今回のあなた達の作戦は、どれほどの人数が投入されているのですか?」

「聞いてどうする??片っ端から探し回る気か」

「いいえ。そんな大変なことはしませんよ。友人がどれほど苦労するか、少し気になっただけです」

「貴様のような手合いが、友人などとは白々しい。その顔は利用できるものは、なんでも利用する、悪党の顔だ」

「……これは本格的に気を付けないといけませんね。善人は気取れないにしても、そう悪くもなりたくないものです」




「………強いな。若さに見合わぬ腕と読みだ」

「私などはまだまだですよいつだって必死です。世の中にはバケモノのように強い人がひしめいてますからね。さしあたってはあなたが、私が今乗り越えるべきですね」

「ククッ……俺は貴様の踏み台か。つくづく気に入らんなっ」



偽マルローを倒す。

「がはっ……!見事、だ……!」

「いえいえ。お褒めに預かり光栄です」

「くくっ……、わかるぞ……。貴様も、恐ろしい毒を、その魂の……奥に……隠し、秘めている……。せいぜい……、隠すがいい…さ……」

そう言って、マルローは事切れた。

「ご忠告、痛み入ります。さて……マクシムさんの方は大丈夫ですかね?」

リュンヌの方をリュシアンは眺める。



「お、おいリュシアン!ここにも敵が入り込んで来たぞっ!……あいつめ。さっき悪党って言ったこと、絶対、怒ってるな。今だってどうせ、あの顔をしているに違いない!」

ピラーの上ではマクシムがそう叫んでいた。



「ま、大丈夫でしょう。ヴァネッサさんも行くはずですし。大活躍に期待してますよお」

そう言ったリュシアンは、目を細め口角を上げ、まさに悪党のような顔をしていた。

「……さて、と。帰るとしますか。我が麗しの……騎士学校へ!」
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