エピソードまとめ

□リュシアン・デュフォール
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ep.1 知慧の刃は密やかに
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リュンヌの門へ戻る。

「ああ、ブレイズの方々ですね。連絡は受けています。通行記録ですね。なにをお調べしましょう?」

「ありがとうございます。では……、デュシー村のマルローさんについての記録確認を……」

「ああ、ありましたよ!今日リュンヌに入っています」

「んんん?それはおかしくないか?」

「マルロー氏の通行証は、盗賊に奪われたはず……」

「おそらく、その盗賊がなりましたのでしょう」

「帝国のヤツというわけか。卑劣な……。では、そいつを捕まえに行くのだな!」

「ホテル・ブルミラという、ピラーの近くの宿に泊まっているようです」

「なら、その付近にいるだろうな。押さえるぞ!」

「ええ。気をつけて行きましょう」


「とはいえ、のんきに宿にいたりはしないか」

「そもそも偽装かもしれませんねえ」

「ですが記録を残してアリバイを作るとも……」

「うーむ。疑いだせばキリがないな!」

「では、ここは素直に宿からあたりましょう」





〔ホテル・ブルミラ〕
「すみません。本日こちらにお泊まりの、マルローさんはいらっしゃいますか?」

「……あんたらあの客の知り合いか?見たところの軍人のようだが、厄介事はごめんだよ。まったく、妙な雰囲気の客だと思ったが……」

「こちらに迷惑はかけませんよ。それで今はどちらに?」

「……裏路地の方へ行ったよ。それ以上は知らん」

「裏路地だな!情報提供、感謝する!」



〔中央区〕
「ええい!どこに潜んでいるんだ!」

「遠くない所にいるとは思うんですけどねえ」

「姿さえ見えれば僕の矢で即座に仕留めてやれるのになあ!」


〔軍司令部近くにいたおじさん〕
「すみません。裏路地へは、どう行けばいいのでしょう?」

「なに言ってんだ。裏路地ったらこのすぐ奥さ。でも気を付けな。そんなお子様連れてったら、さらわれちまうぜ」

「ま、まさか、それは僕の事を言っているのか!?ぐぬぬ……いや今は任務中だ。我慢我慢……!」


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路地裏にある酒場の横の裏路地を進むと複数人の男たちが集まっていた。

「リュシアン、怪しい男が」

「話を聞いてみましょう」

「ウウウオアアアアーッ!」

男たちは近づいた瞬間雄叫びを上げた。

「ちょっ!なんですかーっ!?」

驚いてマクシムが飛び退く。

「これは……まさか」

「おそらく獣と同じ薬を服用しているのでしょう」

「ガアアアッ!」

「確かに、これでは話になりませんね。大人しくなってもらいましょう。二人とも手加減を」

「心得ました」


全ての賊を倒し終える。
「うぅ……」

「ああ、正気に戻りましたね。よかったです」

「あなた達はなにかの薬を飲んでいましたね?」

「ああ……ありゃあいいぜ……。フワッとなってこう……ガーッと暴れたくなるんだ」

「それは誰から手に入れた!?」

「へっ……そういうことは話さないのがスジってもんさ」

「相手の素性を隠すのは、今後も関係があるからですね。きっとここでまた 取引するつもりなのでしょう」

「な、なんだこいつ……誰かに聞いたのか?」

「図星のようです」

「ふふ、収穫はありましたね」

「リュシアン。この者達をどうする?」

「そうですね……順当に門番の詰所に引き渡しましょう」




〔リュンヌの門〕
「暴徒の収監承知しました!任務、お疲れさまです」

「しかし、帝国はこんな工作で、なにをするつもりなのか」

「市内各所で混乱を起こし、突入部隊で司令部を落とす……ですかねえ」

「そんな策、我が軍によってすり潰されるだけでは?」

「覚悟の上でしょうね。僅かな時間でも司令部が停止すれば、外の帝国軍への対応を滞らせることができます」

「ぐぬぬぬぬ……!恐るべき計画だな!」

「まったくです。だから……利用します」

「なに!?いったいどうやって……」

「まあまあそう焦らずに。ここからが面白いんですよお」

「……へーえ」

「どうしました?」

「いや……。そういう顔もできるんだなと思っただけだ」

「なにか妙な顔してます?」

「してるしてる」

「……どんな顔です?」

「その顔を指すのに、うってつけの言葉があるんだ」

「伺いましょう」

「悪党」


「さて、私とヴァネッサさんは、路地裏に戻って偽のマルローさんを待ちましょう」

「心得ました」

「おい。肝心の人間を忘れてるぞ。このマクシム・アセルマンを!」

「マクシムさんには、重要な仕事を任せたいのです。人知れず自軍を支える、勝利の立役者としての大任です」

「ん!それは素晴らしい!詳しく聞こうじゃないか!」

「ここの中央にある塔の頂上へと向かって下さい」

「よし!………でそこでなにを?」

「私達の切り札であるこの鎮静剤を」

そう言ってリュシアンはマクシムに鎮静剤を手渡した。

「使うべき時はわかるはずです。有能なあなたならね」

「そうか!よしこの僕に任せたまえ!」

「ではさっそく、路地裏に向かいましょうか」

「心得ました」

マクシムと別れ、リュシアンとヴァネッサは中央区を進んで行く。

「いやー。マクシムさんには一本取られましたねえ。悪党の顔。うん、悪党か」

「……気にしてますか?」

「いいえー、全然?むしろ新鮮な表現で驚いてます」

「気にしてるな、これ……」

「まあまあ、ヴァネッサさん。今はデートを楽しみますよ」

「は?デッ……!?リュ、リュシッ、アン!」

「悪党リュシアンがエスコートいたしますよお」

「そのふざけ方が……!悪党ですっ……!」
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