エピソードまとめ

□リュシアン・デュフォール
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ep.1 知慧の刃は密やかに
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一本道を進んでいくと、大きな城壁が見えてきた。

「ようやく到着か。相変わらず栄えているな」

ディランブレ戦傷地帯とリュンヌを繋ぐ橋を渡りながらマクシムは呟いた。

「いつ来てもルディロームとの違いに驚かされますね」

「先ほど通ってきた天然の障害もその一つですが。各国の首府のちょうど中心地付近にあるというのも、軍事拠点として恵まれていますからね」

「なるほど……」


橋を渡りきると城壁の前に、人々が列を成していた。その列には並ばず、1番前で検問をしている兵の元へ向かう。

「ここを通りたい者は通行証を提示してくれ。持ち込む商品も一つずつ、すべて提示するんだぞ」

「一つずつ!?トホホ、時間がかかる〜」

そんなやり取りを1番前ではしている。


「通行証だけでなく荷物も極めています」

「敵の工作への警戒はしているようですね」



「……あのう、兵隊さん。これはほんの気持ちですが……」

検問に並ぶ男性の手にはガルドが握られている。

「なんだ?その手に持っているものは。続く行為次第では君を逮捕しなければならん」

「うっ!?」

「……だが、君は賢明な人間だ。つまらん小銭で、私に取り入ろうなどとはしない。そうだろう?」

「…は、はい。当然ですよ。ハハハ……」

「門番のチェックも実直で厳密なようですね」

「ええですが……。悪意はそれすら、すり抜けるかもしれませんよ」

検問の様子を見ていれば兵士の前まであっという間だった。

「兵士諸君!役目大儀!」

いきなりマクシムがそう声をかければ検問をしていた兵士は顔をこちらに向けた。

「なんだ?ちゃんと並ばなきゃダメだぞ」

マクシムの容姿からか、子供だと思ったのか兵士のその口調は少し優しいものだった。

「我が名はマクシム・アセルマン!……ふふっ、わかるな?」

「いや、知らん。並んでくれ」

「なんですとーっ!?」

「私達はブレイズの者だ。識別章もある」

「これは失礼いたしました。お勤めご苦労様です!」

ヴァネッサの言葉を聞いて兵士は直ぐに態度を改めた。

「あらら〜っ?」

「ブレイズの識別章は通行証代わりになるんですよ」

「先に言ってくれたまえよ!」

「あはは、言おうとしたんですけどねえ」

「リュシアン。こうなるとわかっていましたね」

「ふふ、なんのことですか?さあ、行きましょう」

リュシアンはしらばっくれて先にリュンヌの門を開く。



【CHAPTER4 毒蛇を殺す毒】

998Y.C. 森国シルヴェーア 城塞都市リュンヌ

「軍司令部は城塞の中央でしたね」

「ええ、塔を目指せば手前に見えてきますよ」

〔リュンヌに入ってすぐに居るおばさん〕
「おや、あなた達連邦の騎士さんかい?

「はい。正確には騎士候補生ですが」

「同じようなもんさ。あたしらにとっちゃあね。頑張ってここを守っとくれよ。ここが帝国でも連邦でも、どっちでもいいんだけど。戦争で街が壊れるのだけはごめんだからねえ。ここに住んでると意味もなく外に出たくなるのさ。ほら周りはグルッと壁に囲まれちまってるだろ?いくら街の中が広くても、そう思うだけで窮屈なもんさ」

「なるほど……お気持ちはわかります。さしずめカゴの中の美しい鳥といったところですね」

「んまあ!この子ったら上手だねえ」




〔街をまっすぐ進む〕
「リュンヌの中央区画に出ましたね。司令部はもう目と鼻の先です」

〔中央区にいる男性〕
「最近、街の中で胡散臭い連中を見かけるんです。大きな戦争が近いって噂だし、ここも危ないんですかねえ……」

「いえ心配いりませんよ」

「そうならないよう私達も頑張りますから」

「そうですか……。どうかリュンヌを守って下さい」



〔広場前の看板横のおばさん〕
「ここらはリュンヌの中心なんだけど、そっちにあるのはリアクターの塔。あそこに見えるのは連邦の軍司令部。であれがホテルで、それが紅茶屋。ちょっと色々集め過ぎじゃないかい?」

「あはは、そうかもしれませんねえ。ですが、それもまたこのリュンヌの風景でしょう。私のような外の人間には魅力的に映りますよ」

「そう?それならいいんだけど……」

〔看板を調べる〕
「司令部は……少し戻って右手のようですね」

「おっと!うっかり行き過ぎたか」


〔イベント 司令部前〕
「よく来てくれた。リュンヌ防衛軍は君達を歓迎する。……とはいえ現在、衝突は散発的だ。君達を投入すべき局面はまだ先だろう。今はリュンヌ内にて、待機していてもらいたい。……いや、そうだな。仮に市内でなにか起こるのであれば、その対処は君達に任せたい。私や軍本体は帝国軍から目が離せんのでな」

「承知いたしました」

「必要なものがあれば便宜を図ろう」

「それでしたら」

「門の通行記録の閲覧許可をお願いします」

「ほう、早速だな。いいだろう、手配しておく」

「リュシアン、なぜ通行記録を?」

「いえ、少し、気になることがありまして」

「リュシアン・デュフォールの気を引くなにかがある……か。まあ通行記録なら門に行けば確認できるな」


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街人の会話集

〔路地裏 キャッチのおじさん〕
「おう、兄ちゃん!いい店、寄ってかないかい?」

「いえ、遠慮しておきましょう。学生の身には早過ぎる」

「ははあん。いい店と言っただけで大人向けと察するとは、鋭いねえ。それならもう立派に大人の仲間入りできるぜ?」

「はは……これは参りましたね。もう何年かしたら、社会勉強にお伺いしますよ」


〔路地裏 年配の女性〕
「ようこそパラダイスへ……。ここはね、愛だの恋だの夢だの……そんなキラキラしたものの残りカスでできてるの」

「はは……少し、自虐が過ぎますね」

「んーん、いいの。そんなんだって、輝けるんだから。少しくすんで鈍くなった輝きも
馴染んでみれば乙なものよ」

「なるほど……勉強になります」


〔路地裏のさらに奥〕
「おっと、お兄さんやめときな。この先に踏み込むのはタチの悪い奴らだけだ」

「なるほど。悪い方を探すならこの先ということですね」


〔ピラー左手の店〕
「ああ……こればいい香りですねえ」

「おっ、もしかして紅茶、お好きですかな?」

「はい。かなりお好きです」

「ウチは連邦の軍司令部にも茶葉を卸していましてね。高官の方々にも喜んでもらえているんですよ」

「なるほど……あとでゆっくり覗かせて下さい」


〔ピラー左手先の門番〕
「お疲れさまです!こちら異常なしです!」

「お疲れさまです。……おや、このいい匂いは……」

「はっ!?す、すみません。実はさっきお茶と菓子を……」

「なるほど。そうだったのですね」

「驚きました。随分と鼻がいいんですね。あの……このことはどうか司令部には内密に……」

「もちろんです。人生においてお茶の時間はとても大切ですからねえ」



〔広場に居る男の子〕
「あ、お兄ちゃん、えらい騎士さん?」

「いいえ、違いますよ。いずれ立派な騎士になれたら、とは思っていますが」

「ふーん。僕もね大きくなったら騎士になるんだ!そしたらこの塔みたいな すごい力が使えるんだよね」

「ああ………、それは騎士の力ではありませんね」

「そうなの?」

「ですが、その心がけは応援しますよ。頑張って下さいね」

「うん!」


〔ピラー右手側 ホテル前にいる青年〕
「ホテル・ブルミラ……立派だよなあ……」

「そうですねえ」

「どんな人がここに泊まるんだろうな……?」

「例えば……視察に来た軍の高官。それに大きな商談をする貿易商の方々ですかね」

「うへえ……。みんなお金持ってそうだなあ。俺もいつかビッグマネーを手に、ここに泊まってみたい」



〔ピラー右手側の門番〕
「おお、ブレイズの学生くん!任務、お疲れさまです」

「ありがとうございます。こちらこそお疲れさまです」

「すまないねえ。君達、若者まで働かせて。戦いだのは、本来、我々大人だけでするべきだが」

「いえいえ、私達も大人して扱って下さい。連邦の明日を担うため、尽力いたします」

「ははは、さすがブレイズ。立派なもんだ」


〔中央区、ご老人〕
「このリュンヌ一帯は戦ばかりじゃ……。連邦と帝国が飽きもせず、やり合ってきた……」

「はい。私は座学で学んだだけですが」

「このまま衝突が続けば、リュンヌだってどうなるか。あんた達の力で戦争をなくせないものかね?」

「そうですね……。それが理想です」
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