エピソードまとめ
□リュシアン・デュフォール
2ページ/9ページ
ep.1 知慧の刃は密やかに
─────────♢────────
「ああ、いらっしゃいましたね。フレデリックさんも……さすが支度が早い」
訓練所に入ると煌びやかな制服に身を包んだ生徒が待っており、その横にはフレデリックもいた。……リュシアンの方が先にあの場を離れたはずなのに。
「臆せず来たか!その勇気称賛に値するぞ!リュシアン・デュフォール!我がライバルよ!」
「こんにちはマクシムさん。今日はよろしくお願いします」
「ふん……小癪な。ブレイズ筆頭の余裕か?だが!それも今日までのこと!"筆頭"の座を賭け、僕はお前に決闘を申し込む!」
「決闘ですか……」
「リュシアン様どうか、お手は抜かずに願います」
フレデリックが小声で耳打ちしてきた。
「マクシム様は非常に誇り高い御方。もしも情けで勝利を得たと知れば、大変に傷付かれるでしょう……」
「……無論です。そもそも彼は強いですよ」
「なにをしているフレデリック!決闘の邪魔だぞ!」
「失礼いたしました。どうかご武運を」
「言われるまでもない!さあ、リュシアン剣を取り給え!」
「……仕方ありませんねえ」
弓を構える彼を見て、やれやれと腰の長剣を引き抜いた。
「では……行くぞ!」
「マクシムさん。私がブレイズ筆頭というのは教官達が決めた便宜上のもの……。そうこだわらずとも……」
「なればこそだ!我がアセルマン家は名も実も備えた名門中の名門!そして僕自身も優秀!実力はある!しかし筆頭の名はキミのものだ。ならば家名と誇りを賭け、勝負せねばなるまい!」
「……それほどおっしゃるのであれば。お望みに応えなければいけませんねえ」
〔マクシムを倒す〕
「み、見事だ!君の勝ちだリュシアン・デュフォール……!し、しかあし!僕は……諦めないぞ……。はうっ………」
「"家名と誇りを賭け"ですか……。背負うものがあると大変ですね。まあ、お茶でも淹れて、労ってあげましょう」
〔フレデリックと話す〕
「さすがです、リュシアン様」
「いえ、運に恵まれただけですよ」
「ご謙遜をなさいますな。互角に戦っていると見せつつ流れを作っておられる。マクシム様にお怪我がないよう配慮もしていただいて……。お心遣い重ね重ね感謝いたします」
「やめて下さい。買い被り過ぎですよ」
────────────────────
マクシムにお茶でも淹れてあげようと、訓練所の出入口へ向かうと、ちょうど1人の男子生徒が駆け寄ってきた。
「リゼット教官より伝令です。ただちに部屋まで来るようにと」
「私ですか?……承知いたしました。また任務でしょうか。リゼット教官の部屋は教員室の隣でしたね」
急いで、校舎の方へ向かって歩いていく。
〔校庭 レオ〕
「あれっ、リュシアン先輩、どこ行くんですか?」
「リゼット教官から呼び出されましてね」
「えっ!?早く謝った方がいいですよ!」
「えっ?」
「下手に隠してると、バレた時もっと怒られますし!とりあえずなんか言われる前に頭下げた方がいいです!」
「……なにか勘違いされているようですが、用件はおそらく任務のことだと思いますよ」
〔校庭 ユーゴ〕
「リュシアン先輩、先ほどはごちそうさまでした」
「いえいえ、頑張っているご褒美です」
「そのお心遣いのおかげで、僕もレオも元気が出ます。いつか、お礼を……」
「私にお礼なんていりませんよ。皆さんが先輩になった時、後輩に良くしてあげて下さい」
「はい!」
〔校内 男子生徒〕
「あっ、リュシアン先輩どちらへ?」
「リゼット教官に呼び出されましてねえ」
「え……じゃあ、教官の部屋へ……?すごいなあ、俺なんか近寄ったこともないです。考えただけでも怖いなあ。頑張って下さい!」
────────────────────
校内のロビーから右手側にある扉を開けその廊下の1番手前、左側の扉をノックし開けた。
「お待たせいたしました、リゼット教官」
「ああ。デュフォールか。早速要件だが、先程リュンヌから支援要請があった。あの城塞都市は重要拠点だ。帝国軍との衝突で落とされるわけにはいかない。そこで上層部は遊撃枠としてブレイズの派遣を決定した」
「……その一人が私ですか。他のメンバーはどうしますか?」
「二人、お前が好きに選んでいい」
「そうですか………。…ならばヴァネッサ・モラクス、マクシム・アセルマン。以上二名でお願いします」
「許可しよう。頼んだぞ筆頭」
「筆頭、ですか……。どうにも合わない肩書きですねえ」
「おとなしく着続けていれば、いずれ馴染む。誰だってな」
「仰せのままに。それでは……」
「ああ。我ら源獣とともに!」
「我ら源獣とともに!」