エピソードまとめ

□リゼット・レニエ
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ep.1 補習授業
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【CHAPTER4 戦場に立つ資格】

「確かにおかしいと感じることは多かったです。エマちゃんの話は……村の人達の話と食い違い過ぎていた」

リューラン岩窟からボーナ村へと戻りながら、ユーゴは語る。

「だからエマちゃん達家族が諜報員だっていうのも理解はできます………。でも……。すみません教官……。整理がつかないです」

「……そうか。だがわかっているだろう?お前達はもう……"覚悟"を決めなくてはならない」

ボーナ村へと戻るまでの間、レオは一言も発しなかった。




998Y.C. 森国シルヴェーア ボーナ村

リゼットはボーナ村の広場で足を止めた。

「ここらが貴様らに課す、"最後の課題"だ。心して聞け」

「「…はい」」

「覇気のない"はい"だな。まあ、いい。貴様らに上官として命令する。あの一家を速やかに殺せ」

「なっ……」

「なにを呆けた顔をしている?やつらは明確な敵だぞ。殺せ」

「か……彼らに容疑がかかっているのは理解しました。でも、ならば"捕縛"で充分なのでは?なにも殺す必要なんて………」

「冷静さを欠いた、らしくない意見だなシモン。……もし一人でも取り逃せば、連邦軍に多大の被害が出るとはおもわないのか?」

「そ、それは……」

「……もう一度命令する。あの家族を殺せ。そして私に"覚悟"を示せ」



「覚悟は決まったか?レオ・フルカード

「……はい」

「ユーゴ・シモンも腹をくくったか」

「……はい。決まりました」

「……よし。ならばことは迅速に……」

リゼットが話している途中に関わらず、レオとユーゴは剣を抜いた。そして、それを構え、リゼットに向けた。

「……なんのつもりだ、お前達」

「すみません教官。残念だけど俺……やっぱりブレイズは失格でいいです」

「……まさか人殺しに怖気付いたのか?」

「そうっすね………。その通りです。俺は……俺達は、エマを殺したくない」

「たとえ彼女が諜報員だとしても、僕には……あの笑顔が全部嘘だとは思えない」

「それこそ諜報員の常套手段だ」

「だとしても……それでも俺は、あの子を殺すのは違うと思うんです。」

「馬鹿な感情論を振りかざしているのは理解しています。けれど……それでもエマは……あの子は殺さない。いや…、…教官にも殺させやしない」

「だって絶対。こっちの選択の方が"気高い"っすから!」


「…いいだろう。その"覚悟"しかと受け取った。では、行くぞ馬鹿共ども!」

リゼットも両手に銃を構えた。


「さあ、貴様らの覚悟を見せてもらおうか。私の実力のほどは知っているな。それでも命令に背いたということは……ここで死んでも文句がないということだ」

「はは……、マジでやべえのに喧嘩売っちまったな。でも……ここで負けるわけにはいかねえ!」



〔HP半分まで削る〕
「く、くそっ……やっぱり強ええ……」

「実力の差が理解できたか?今考えを改めれば、命令違反も目を瞑ってやる。ブレイズの試験も合格にしてやるぞ?」

「………なにを条件にされても 殺すのは絶対に嫌です。それに僕はブレイズに入るより……レオの親友として誇れる自分でいたい……!」

「ならば、口だけでなく力で私を捻じ伏せてみろ!」


〔HP残り少し〕
「はあっ……はあっ……。クソッ、化け物かよ……」

「でも絶対に負けるわけにはいかない……。エマちゃん達を殺させるわけには、いかないんだ……!」

「……やはり………。やはり私はどこかでシモンに会っている。前に思い出したあの炎の光景は………。………もしかして」






〔二人を倒し終える〕

「…素晴らしいじゃないか。僅かにだがヒヤリとさせられる場面があったぞ」

「まだ……まだ、だ……」

肩で息をしながらレオは起き上がる。

「あの子達を……殺させるわけには……」

「いや、すべてもう終わりだ」

リゼットはそう言い放ち、そして大きく息を吸った。

「おーい、お前達すまないな」

村に響くような大きな声でそう言ったリゼットに、レオもユーゴも、なに?と言った様子で顔をあげる。

「"幸せ家族"の演技はもういいぞー」

「あ、終わったんだね!」

ひょこっと、物陰から、エマとその両親が出てくる。そして、

「お疲れ様です!」

とエマの父親が背筋を正した。

「「……は?」」

レオとユーゴは、ぽかん、とした後意味を理解し、大きく息を吐きながらその場に腰を下ろした。

「まさかエマたちが、教官と組んでたなんて……」

「元々軍に仕官していたエマの両親とは同僚でな。今回お前達を試すために一芝居打ってもらったのさ」

「じゃあ、洞窟にあった帝国軍の痕跡がどうとかは……」

「ただのデタラメだ」

「ま、マジっすか……」

「……おかしいと思いました。帝国の諜報員にしては雑な点が多過ぎますよ」

「はは、この課題は急ごしらえだったからな。その点に気づいたのは見事だったぞ、ユーゴ・シモン」

「……そ、そうだな。確かになんか、いろいろおかしかったよな、ははは!」

なにも気づかなかった、レオはさも自分も気づいていたようなフリをする。


「さて、お待ちかねの課題の結果だが……」

「……言われなくてもわかりますよ」

「感情を優先して教官に刃向かったんだ」

そう言ってユーゴもレオも立ち上がる。

「そんなの当然……」

なあ、と言うようにレオはユーゴを見る。しかし、リゼットは、

「文句なしの合格だ」

そう告げた。
それに二人は驚いて目を見開く。

「俺達が……ブレイズ合格……!?」

「……でも、僕達は上官に刃向かって……」

「そうだな。命令違反は軍人として失格だ。だが、それがお前達の示した"覚悟"なのだろう?………それに最後まで人間性を手放さんと足掻く者にこそ、真の意味での戦場に立つ資格がある……。少なくとも私はそう考えているよ」

「教官……」

「さて、では最後に今一度、意志を確認させてもらおう。レオ・フルカード。ユーゴ・シモン。お前達はブレイズとして……私の下でこれからも学ぶ気はあるか?」

リゼットの問に、二人1度顔を見合わせた。

「はいっ!」

「よろしくお願いいたします。リゼット教官!」

「ああ………。今日一番のいい返事だ!」
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