エピソードまとめ
□リゼット・レニエ
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ep.1 補習授業
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998Y.C. 森国シルヴェーア リューラン岩窟
「さっきの洞窟とはまた雰囲気違うな。人の手が入ってる感じがするっていうか……」
「ああ、それも悪意ある"罠"という形でね」
洞窟の入口から既に、ウニのような見た目で近付くと爆発するタイプの爆弾が仕掛けられていた。
「さすがに気付いたようだな。……だが正直この罠は想定外だ」
「えっ、そうなんすか?」
「教官が補習のために仕掛けたわけじゃないんですね」
「そんな面倒なことを私がすると思うか?」
「まあ異の精度はそう高くない。これもまた鍛錬の一環として問題ないだろう」
「つまりブレイズとしてこの程度の罠は、難なく切り抜けて見せろと」
「そうだな。……できるか?」
「んなのまったく問題なしっすよ!
「そうか。ならば私は口を出さないから、お前達だけで見事、罠をかいくぐって見せてくれ」
「……よし。んじゃ、ユーゴ先行っていいぜ?」
「はあ……ご自慢の"気高さ"は、どこに置いてきたんだい」
「ば、違えよ!気高く、お前に活躍の場を 譲ってやってるだけだし!」
「はいはい。ありがとう。じゃあ僕に付いておいで」
「おおう!背中は任せとけ!」
「貴様ら二人はいいコンビというより、もはや親子の様相を呈しているな……」
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〔道中会話〕
「そういやエマも災難だったよな。村の近くで襲われるなんて」
「……そうだね。いくら引っ越してきて日が浅いとはいえ、その辺は真っ先に周りの大人達が、教えてあげても良さそうなものだけど……」
「別に村の人達が冷たいって 感じでもなかったのにな」
「うん、ちょっと不思議だよね」
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〔鉄格子柵エリア〕
「ここは敵を倒すと扉を開けられる 仕組みになっているんですね」
「そのようだな」
「でもこれ大丈夫か!?この先にちゃんと出口あるよな!?」
「さあな。もしかしたらこの先は行き止まりで……、私達はここで一生を終えることになるかもしれない」
「こ、怖いこと言わないでくださいよ!」
「ここを補習の場所に選んだ教官が。構造を知らないわけないから大丈夫だよ」
「……ほう」
「……大丈夫……ですよね?」
「そろそろ、ここも抜けられるかも」
「全然余裕だったな!」
「背に隠れてばかりいたお前はそうだろうな」
〔鉄格子柵エリアの先〕
「ふう……ようやく抜けたか……」
「でもこれで終わりじゃないはずだよ。教官が僕達をここまで連れて来た理由……まだわかってないからね」
「いたく冷静じゃないか。安心しろ、それならもうすぐ……」
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〔洞窟の最奥〕
「…ほら来たぞ」
どしん、と巨大な蟹の獣──エフィデシゾーが爪を地面に突き立てる音が響く。
「なっ、こ、こいつの圧は……!」
レオとユーゴは慌てて武器を構えた。
「ああ、言い忘れていたがこいつは……。ブレイズでも単体では敵わないレベルの獣だ」
「はあ!?なんすかそれ!」
「危険を伴ってこその、鍛錬だからな」
「「鬼ですか!」」
「安心しろ。今回は私も、お前達の指揮官として、"本気"で参戦してやる」
「え?」
「私が指示を出してやるから、その通りに動け。そうすれば………お前達は、限界を超えることが出来る」
「「はい!」」
「今日一番のいい返事だ。では……いくぞ!」
リゼットも銃を構え、引き金に指を添えた。
「気の抜けた "とりあえず"の動きをやめろ!常に互いの位置取りを意識するんだ。その上で状況を適切に判断し、任せるところは相手に任せろ!」
「はいっ!」
「っしゃあいっくぜえええ!」
「二人とも敵の際への対応がワンテンポ遅い!隙ができてからではなく、隙ができるのを見越して動け!」
「了解しました!」
「よしラストスパートだ!」
エフィデシゾー討伐後
「や、やった……のか?」
「ははは……勝て……嘘みたいだ……」
「よしこんなところだろう。よくやったなお前達、今の実力が出せていれば選抜試験の結果もまた違ったことだろう」
「……そうかもしれないですね」
「敵と本気で向き合う……か。今の戦いのことを折につけ、しっかりと反するように」
「はい」
「ああ、これでようやくブレイズ正式採用かあ。実に長かっ……」
「では、そろそろお待ちかねの最後の課題に入るとするか」
「はあ!?い、今のが最後の課題だったんじゃ……」
「なにを言っている?今のは通常の鍛錬やウォーミングアップに類するものだぞ」
「じゃあ、まさかこれも……雑魚戦の延長戦だったっつうことですか!?」
「これを前座扱いだなんて、このあといったいなにをさせられるんですか……」
「言っただろう?"覚悟"を見せてもらうと」
「覚悟……」
「っと、その前に確認したいことがある。少しここを調べさせてくれ」
そう言ってリゼットは洞窟の中を見渡して、ある一辺へと歩いていく。
「やはりな……」
立ち止まったリゼットは、その場にしゃがんでなにかを手に取る。
「なんですかそれ?」
レオの目には、砂の様な粒子を持っている様にしか見えなかった。
「帝国の指令書の燃えカスだ」
「え?」
「それだけじゃない。周りをよく見てみろ。帝国の特徴的な衣類や機材など、足の付きそうな品の処分跡があちこちにある。……わからないか?」
レオとユーゴも周りを見てみるが二人にはよくわからない。しかし、教官である彼女が言うならそうなのであろう。
「どうしてこの洞窟に人為的な罠が多かったのか。そしてその最奥に、帝国製の物品の処分跡が多いのか」
「まさか……」
「ああ。その、まさかだ。これらは帝国の諜報員による証拠隠滅の痕跡さ」
そう言ってリゼットはゆっくりと立ち上がり、振り返ってみた。
「……さて、それでは、お前達に問おう。その諜報員に心当たりはあるか?」