エピソードまとめ
□リゼット・レニエ
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ep.1 補習授業
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〔ボーナ村海岸 海を見つめるお爺さん〕
「おお……旅人さんに話しかけられるのは久々じゃ。この村唯一の名所だった洞窟も獣に荒らされてのう。それ以来、村を訪れる人も減ってしまったんじゃ」
「寂しいですけど……獣相手じゃ仕方ないですね」
「ああ、そうじゃな……村の者達も諦めておるよ。あそこは景色がいいだけじゃなく、魚や貝がよくとれて重宝する場所だったんじゃが、今はもう……どうなっていることやら。………まあでもわしらにはまだこの海がある新鮮な魚をおいしく いただけることに感謝じゃな」
〔ボーナ村海岸 おじさん〕
「よお、あんたら旅人さんかい?それじゃ、おもしろい話聞かせてやるよ。村の奥に二軒家があるんだが、一軒は長いこと空き家なんだ。だが昨日からなぜか物音や話し声が聞こえる。…、どういうことかわかるだろ?」
「………なるほど確かにおもしろい話だな」
「ってかなんか今日、そういう系の話多くねえか!?」
「確かにね。でも昨日から聞こえるって、いうのは不思議ですね。そういう話って基本的に、"ずっと昔から"っていうのが多いですけど」
「………兄ちゃん、ロマンがねえなあ。そういう現実的なことを抜いてこその怪談だろうが」
「な、なんかすみません……」
〔ボーナ村海岸 若い女性〕
「珍しいわねこんな村に旅人なんて」
「いや、正確には旅人じゃなく騎士とその見習いの卵だ」
「見習いの卵って……」
「なんかあんまり気高くねえ肩書きだな……」
「あーなるほどね。それを聞いて納得したわ。この村に旅人が来るはずないもの」
「なぜですか?」
「見どころがないからよ。村人全員が知り合いなほど小さな集落だし。遊び場といったら海しかない……本当につまらない村よ。はああ…、私も首府の生まれだったらなあ」
「俺は近くに海があるってだけで羨ましいけどな」
「価値観は人それぞれだね」
〔ボーナ村広場 お食事処〕
「ここが俺達の喜ぶところ……か?」
「そうだよ!村で一番おいしいって評判のお食事場所!」
「地元民のオススメか!これは気高さポイント高えな!」
「なんだ、その謎の評価基準は」
「そういえば、この村には名物とかあるのかな?」
「あるんじゃないかな?」
「……"じゃないかな"?」
「あっ……ううんあるよ!えーとえーと、確か……」
「"ボーナ村特製シーフードアヒージョ"だ!アンタ達、旅人だろ?一皿サービスしてやるよ!」
「マジでっ!?いいのか!?」
「ああ、俺はこの味を、世界に広めたくてな……新しく村に来た奴には、必ずタダでやってるんだ!」
「ず、随分、太っ腹なんですね……」
「……ではここで食事にするか」
「よし決まりだな!早く行こうぜ!」
〔食後〕
「いやあ食った食った!
「ではそろそろエマを送るか」
「エマの家は村の奥だよ、先に行ってるね〜!」
そう言ってエマが走って行く。
「エマの家は奥の方だと言っていたな」
「送ってるのか、案内されてるのか。わからなくなっちゃいましたね」
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〔村の奥の左の家の前〕
「あ、お兄ちゃん達やっと来た!じゃじゃーん!ここがエマの家だよ!」
「これでもう心配はあるまい。私達はここでお別れとしよう」
「送ってくれてありがとう!でも……帰りたくないなあ」
「どうして?
「だって今日のこと、パパやママ達に怒られ……」
「こらっエマ!」
「ひっ!」
振り返ると2人の男女が立っていた。恐らく、エマの両親だろう。
「あなた村の外に出て襲われたんですって?」
「ど、どうして知ってるの?」
「村の人に聞いたんだ。勝手に歩き回ったらダメだと、いつも言ってるだろう!?まったく……心配したんだぞ」
「パパ……ママ…。うわーん!ごめんなさーい!」
「……さて私達はもう行くとしよう」
「……そうですね」
「危険なことをした時に怒ってくれるのは、本当にいい家族の証拠ですね。………なんだか懐かしい気持ちになったな」
「……さてでは改めて、海岸洞窟へ向かうぞ」
「腹も膨れたしなんでも来いですよ!」
「それは頼もしいな」