エピソードまとめ
□リゼット・レニエ
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ep.1 補習授業
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「ん…?レオ、あれって…」
「あ…ああ……」
「女の子が獣に襲われてる……?どうしましょうか教官……」
ユーゴがリゼットの指示を仰ごうと後ろを振り返るのに、その横を猛スピードでレオが駆けて行く。
「あ、おいレオ!」
「なんかわかんねーけど、とりあえずこの子を助ける!いいっすか、リゼット教官!」
「許可しよう」
確認を終えたレオは剣を握り、女の子を襲っているバッサーに向かっていった。
「まだ状況もわからないのに……まったく……!」
「ふむ。直情的に動く人間は厄介だが……慎重を期した結果、初動が遅れて絶望的な状況に陥るなんてことも、戦場にはままあることだ。お前はどう思う?」
そう尋ねれば、ユーゴは一瞬考えるように下を向いたあと直ぐに顔を上げた。
「……ああもう!レオ、僕も手伝うよ!」
駆けて行ったユーゴの背を見て、リゼットはほくそ笑んだ。
「ふ…、お前達は案外……。っ……?」
何か言いかけて、リゼットの脳裏に燃え盛る村の情景が思い返される。
「なぜ、あの時のことを今……」
そんなことよりも、とリゼットは頭を振るって銃を取った。
「さて雑魚はあいつら二人で充分だろう。私はデカブツを優先して片付けるか」
獣討伐後。
「ふう、こんなものか。さて……"本番"はここからだな」
「怪我なかったか?」
「うん……ありがとう。お兄ちゃん達」
「なら良かった。でもどうして一人で村の外なんかに……」
「あーそれは……えーと……」
「……なるほどそう来たか」
「教官?なにか言いました?」
「いやなんでもない」
「それでキミの名はなんと言う?」
「え?えーっと………エマです」
「この辺りに住んでいるのか?」
「う……うん。最近引っ越して来たの」
「あー、だからこの辺に獣が出るの知らなかったのか」
「……なんにせよちょうどいい。送りがてら村を案内してもらってもいいだろうか?」
「いいよ。じゃあ先に村の入り口で待ってるね!」
そう言ってエマはタッタッタッと石階段を登って行く。
「なんか違和感ねえか?リゼット教官の態度」
「……村の案内を頼むなんて、なんかちょっと……らしくない感じだね」
レオ達は教官の様子を不思議に思いながらも、エマを追って村の入口に向かった。
「さっそく、村の案内を頼めるか?」
「うん!えへへ、こういうのなんかワクワクする。まずはすぐそこの建物に行くよー!」
「あっ、エマちゃん!?」
998Y.C. 森国シルヴェーア ボーナ村
〔イベント エマの案内1〕
「ここはねー。……って案内したかったけどよく知らないんだ。エマも入ったことないし。特に大事な建物じゃないと思う!」
「む、旅人さんかね?」
エマの話を聞いていれば、近くに居たお爺さんがそう声をかけてきた。
「そこはこの村にとってとても大切な倉庫じゃ。この村はなにもないが海産品はよくとれる。それを軍人さんに買い取ってもらって、村の資金にしているんじゃよ」
「なるほど……村の台所ってことですね」
「うむ。だからこの村の人間は子どもの頃から言い聞かせられる。あの倉庫で悪さをしたら大変なことになるぞと」
「あ……。あー、そうだった!エマも言われてたんだった!すっかり忘れてたよー。気を取り直していきましょー!次は海岸ね!」
「大丈夫か……?」
「まあ引っ越してきたばかりって言ってたしね……。よし、海岸に向かおうか」
「村に海があるっていいよなー。いつでも泳げるし!」
「……貴様はどうしても泳ぎたいようだな」
〔ボーナ村のお婆さん〕
「ああ本当においしいねえ。ここの名物"しいふうどあひいじょ"は……。おいしいだけじゃなくて健康にもとてもいいんだよ。毎日これを食べていたら、10時間もぐっすり眠れるようになった」
「それはちょっと寝過ぎなんじゃ……」
「ま、まあ、お年寄りにはちょうど良いんじゃないかな」
「むっ!わしを年寄り扱いしよったな!?」
「あっ、いやその……」
「"あひいじょ"のおかげで五体健康、快適睡眠!肌も陶器のようにつるつるなんじゃぞ!お前さん達も食べてないなら今すぐ食べなされ!」
「……このご老人は名物の回し者か?」
〔子連れの女性〕
「おやまあ見ない顔だね。こんな寂れた村になにをしに来たんだい?」
「まあ野暮用でな。この先の洞窟を目指している」
「ってことは……アンタ達軍人さんだね!?いやあ助かるねえ!最近獣が出て困ってたんだ。早いとこ倒しておくれよ」
「任せて下さい!獣なんて俺達の手で、ぶっ倒してやりますから!」
「ほう。言い切ったな」
「え?そりゃだって……」
「ははは。元気があっていいねえ。頼んだよお若い軍人さん!」
〔イベント エマの案内2〕
「じゃん!ここが村の名物の海岸です!貝とか魚とかいろんな物が採れます!……たぶん!」
「いや想像なのかよ!」
「あとね、村を海岸沿いに進むと洞窟への道があるんだけど、今は門の鍵が閉まってるよ」
「え、その洞窟って補習の目的地の……?」
「面倒だな」
「ごめんね、エマにも鍵の場所は……」
「おや、アンタ達あの門を開けたいのかい?」
近くに居たおばさんがそう声をかけてきた。
「えっ?そうですが……」
「あそこの鍵は村の人間が交代で管理してるんだ。最近は獣が出て旅人も減ったから出番がなかったんだけど……。それでも行くっていうなら、あとでアタシが開けておくよ」
「おおっ、助かるぜ!」
「……よかったね、お兄ちゃん達!じゃあこれで海岸の説明は終わり!次の場所はお兄ちゃん達も喜ぶと思うよ!広場の近くだから早く来てね〜!」
そう言ってエマは先に来た道を戻って行った。
「次は俺達が喜ぶところ……って言ってたけど」
「どこのことだろうね?」
〔エマを追わずに門を調べる〕
「あれ?まだ閉まってるんですか?」
「そのようだな。ここが開くのは婦人の機嫌次第ということだ」
「マジか……早く開けて欲しいですね」
「いずれにせよ、まだエマを家まで送っていない。そちらを先に済ませるぞ」
〔門の前にいる男の子〕
「お姉さん達、この先の洞窟に行くの?やめたほうがいいよ!獣がいっぱい出るよ!」
「もしかしてキミも獣を見たのか?」
「直接は見てないよ。でも……昨日ここで遊んでたら声みたいなのが聞こえたんだ。それもひとつじゃないよたくさん……。あれはきっと……いや絶対に獣の声だよ!」
「なるほどな。どちらにせよ私達が行く価値はありそうだ」
「………そうですね」