エピソードまとめ
□リゼット・レニエ
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ep.1 補習授業
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〔補習授業〕
洞窟の奥までくるとそこは崖になっていた。
「ここが最奥……。ってことは補習の最終地点?」
「ようやくか!どんな敵でもやってやるぜ!でも……見たとこ目立つ敵もいねーみたいだけど……。教官、ここではどういう補習を?」
「そうだな。では二人とも少し前に進んでみてくれ」
「前に?ええと……この辺りですか?」
「もう少し前だ。もう少し」
「はあ。もう少し……。この辺ですか……」
素直に指示に従った二人は崖の端に寄った。
「…って!」
「…うわぁ!?」
二人は同時にリゼットに寄って崖の下に蹴り落とされた。
「いてて……」
「ど、どういうおつもりですか教官!」
そこまで高い崖ではなかったので、二人は無事で、ユーゴは起き上がるなり抗議の声を上げた。
「見ればわかるだろう!」
リゼットはクイッと顎で奥を指した。
「えっ………って!」
二人が振り返れば、そこには一際大きな獣─カイザルーゴが居た。
「なんだこいつ」
「そいつは見ての通り、少々凶悪……。……そう、ブレイズでも手こずるレベルの獣だ。つまり、どういうことか……わかるな?」
「はは……。相変わらず滅茶苦茶だ。だけど……」
「シンプルだからこそ燃えるな!」
二人はしっかりと武器を構えた。
「では……、お前達の真の実力。この私に見せてくれ」
はい!と声を揃えた二人を見て、リゼットは背を向ける。
「…さて、と。先日の試験の際もそうだったが……。やはりどうもこの洞窟は最近様子がおかしいようだな。害獣駆除業務など、私の管轄外にも程があるのだが。貴様らは、"私の生徒達"の邪魔だ。排除させてもらう」
武器を構えたリゼットは、周囲に群がったオタパプとフローン、そしてザルーゴに向けて弾乱射した。
「補習も兼ねて様子を見に来てみれば……案の定だ。この数と圧……。私でも少々苦戦を強いられそうだな」
獣討伐後。
「一通り片付いたか。さて、あいつらは……」
崖の下を覗くとちょうど二人も獣を倒し終えたようだった。
「っしゃああああ!見たかオラアアアア!」
「はあ……はあ……。やった……。やりましたよ、リゼット教官!」
「どうやら倒せたみたいだな」
「みたい……って教官。俺の気高い勇姿、見てくれてなかったんすか!?」
「ああ。悪い。少し野暮用でな」
そう言ってリゼットは、ぴょん、と崖の上から飛び降りた。
「…もしかして上でなにかありましたか?」
「大したことじゃない。少々、獣と戯れただけだ」
そう告げながらリゼットはどんどんと奥に見える洞窟の出口へと歩いていく。
「なんっすかそれ…」
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【CHAPTER3 最後の課題】
「ふぅ……終わった終わったあ!」
「いやぁ、長く辛い補習だったね。でもこれで……」
「先程から何か勘違いしているようだが、まだ補習は終わっていないぞ?忘れたのか?お前達が何故、選抜試験で敗れたのか……」
「それは……」
「安心しろ。次が最後の補習だ」
「最後の……」
「いったいなにを……」
「そうだな。貴様には最後に……ブレイズとしての……"覚悟"を示してもらう」
そう言ってリゼットが風笛洞の出口へと歩い
て行くのを、二人は慌てて追いかけた。
「あの、それで教官。俺って今どこに向かってるんすか?」
「ああ、少し先の海岸洞窟だ。そこで次の鍛錬を行う」
「了解です」
薄暗かった洞窟を出ると、陽の光の眩しさが目に刺さる。それと共に波の音と塩の香りが流れてきた。
998Y.C. 森国シルヴェーア ミナザ海岸
「ていうか見ろよ、海だぞ海っ!おいユーゴ!早く泳ごうぜ!」
「レオ……、まだ補習授業中だよ」
「あ……そうだった……」
「ほう。そんなに泳ぎたいなら、補習授業のブランを変更してやってもいいぞ」
「えっ!?」
「マジっすか!?」
「この海には正体不明の獣が潜んでいると聞く。そいつは夜にしか現れず、海辺から人間を誘うらしい。しかも驚くことにその姿は……"少女"そのものだそうだ」
「そ、それって……」
「多くの猛者がそいつを倒そうと挑んでいったが、翌朝、五体満足で帰ってきたものはおらず、服だけが綺麗に海岸に残されてるって話だ」
「やっぱりそれ獣じゃないっすよね!?」
「どうだかな。ただ随分昔から聞く話だから、もしそいつを倒せたらお前達は英雄だ。
……やってみるか?」
「え、遠慮しておきますっ!」
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〔道中会話〕
「はあ……せっかく泳げると思ったのに」
「そんな簡単に許してくれるわけないだろ。大体僕達、今は水着も持ってないしね」
「水着か……水着……」
「……なんだ?」
「ちょっ……ちょっとレオ。なにを想像してるんだよ」
「い、いや、別になんでもねーよ。ただリゼット教官でも、海で楽しく泳いだりすんのかなって。……水着で」
「水着ではしゃぐ教官……それはまた……」
「いい加減にしないと私が貴様らを服だけにするぞ」
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〔道中会話〕
「目的地の手前にボーナ村という小さな村がある。そこで一旦休憩を挟む予定だ」
「おおやった!危うく俺の腹から気高くない音が出るとこだったぜ……」
「良かったねレオ。僕はすっかりごはん抜きの覚悟をしていたよ」
「お前達は私をなんだと思っているのだ。私は生徒に無駄な、生理的苦痛を強いるような
。前時代的教育方針はとらないぞ」
「す、すみません」
「その代わり、気軽に死地には放り出すがな」
「……あの時代的教育方針に、戻していただくわけには参りませんか?」
「ふっ冗談だよ」
「どこが冗談なのか具体的に言わない辺りがやべえな」
「だね」
「ほらお前達無駄口叩いてないで行くぞ」
「はい!」