エピソードまとめ
□リゼット・レニエ
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ep.2 絡みつく過去
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「倒し……切れましたね」
獣達もこれ以上来るようがなく、ヴァネッサは双剣をしまった。
「ええ。終わってみれば、まだ少し余裕のある戦いでした」
リュシアンも長剣を腰に刺しながら、リゼットの元へ歩み寄る。
「教官は……最初からすべての目処がたっていたのですか?」
「まさか、敵戦力は未知だったろ。だが、まあ……お前達のことをお前達以上に信頼はしているかもしれないな」
「教官……」
「では信号弾で、物資の回収を頼むか」
そう言いながらリゼットは、放置された荷車へ歩み寄る。
「はい。今、準備します」
ヴァネッサがそう言って、準備に取り掛かかる中、リゼットは、…ん?、と首を傾げた。
「……これは」
リゼットは荷車の中の、あるものが気になったが、とりあえずは物資を回収して帰ることを優先することにしたのだった。
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998Y.C. 森国シルヴェーア ポワトゥー駐屯地
「物資の確保と、獣の討伐。ありがとうございました」
司令部へ報告へ帰れば、すぐさま兵長がそう言った。
「本当に助かりました!」
「問題ない。我々自身の補給のためでもあるからな」
「ええ。色々持っていって下さい!皆様の砦の制圧戦でのご活躍、期待しております」
三人は司令部を離れ、兵站の元で物資の補給を行った。
「では、バイヌセットへ向かいましょうか」
「少々寄り道をしましたからね。急ぎましょう」
ヴァネッサの言う通り、ここに来た時は夕方前だったのに、すっかり朝日も登りきってしまった。
「……そうだな」
「教官?なにか気がかりが?」
煮え切らない返事をするリゼットにリュシアンが問いかける。
「……ああ、これなんだが」
そう言ってリゼットは、手のひらサイズの赤い石を1つ取り出した。
「……それは"地爆石"ですか?」
「先程の物資の中にあったものですね」
「そうだ。妙だとは思わないか?これは火気などで簡単に爆発する鉱石だが、その扱い辛さから、あまり軍事利用されていない。それなのに……」
そこまで言ってリゼットは口と眼を瞑った。
「……いや。これは現時点で判断できる話でもなさそうだ。さて、いくぞ。次こそバイヌセット砦だ」
気を取り直し、リゼットはそう言って、ポワトゥー駐屯地の左の門を出ていくのだった。
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【CHAPTER4 バイヌセット砦制圧戦】
998Y.C. 森国シルヴェーア ディランブレ戦傷地帯
〔道中会話〕
「さて、ここからが本番だな。バイヌセット砦はこの先だ」
ヴァ「いよいよですね」
リュ「気を引き締めて行きましょう」
〔道中会話〕
リュ「教官。確認ですが……私達はバイヌセット砦を最初に強襲する役割……。要は一番槍を任されている、ということですよね?」
「単身で強大な力を持つ聖騎士にはよくある話だ」
ヴァ「ですが私達はブレイズ。正式な騎士ではありません。やはり気になります……なぜ我々なのでしょう?」
「……話すつもりはなかったが、お前達には聞く権利があるだろうな。今回の任務は上の私への嫌がらせだ」
ヴァ「いったい誰がそんなことを?」
「愛国者であれば愛国者であるほど……だろうか」
リュ「どういう意味です?」
「私は連邦のつまはじき者ということさ。学校という名の檻で飼い殺される程度にはな」
ヴァ「檻……」
「いや、すまない。教職に不満があるわけではないんだ。お前達にものを教える日々は、この上なく幸せだよ。本当に」
リュ「教官……」
「だからこそ余計に腹立たしいこともある。今回の任務のように……な」
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ディランブレ戦傷地帯を進んでいくと、ぼんやりと、砦のもんが見えてきた。
だが、その前に帝国兵に襲われている連邦兵を見つけた。
「よし、あらかたやったぞ!この隙にバイヌセットへ警告だ!」
「く、やめ……!」
帝国兵が報告へ行ってしまう前に止めねばと、リゼットは飛び込んだ。
「これはいったいどういう状況だ!」
「そ、それが帝国の歩哨と運悪く接触してしまい……」
「運悪くだと?」
「相変わらず杜撰な作戦ですねえ」
「なにもかもやる気が感じられませんね」
そう言いながら、3人は武器を構えた。
「増援か!くそやるぞ!」
「まずはこいつらを片付けるぞ。砦に警告をさせるな」
「はい!」
「了解です!」
リュシアンとヴァネッサが返事をし、三人はそれぞれに散って敵と兵と戦っていく。
「面倒なことになったな。砦に連絡されたら非常にやりにくくなる」
「そうですねえ……。ここを止められなければ、任務の成功率も大きく下がりそうです」
「……戦闘中も周囲の状況に気を配れ。絶対に一人も逃がすな」
そう言ってリゼットは敵兵の頭を撃ち抜いていくのだった。
しばらく戦闘を続けていれば、随分早く帝国兵達が増えた。
「増援だと!?どこから沸いて出た!?」
「一人も逃してはいないはずなのですが……!」
ヴァネッサの言う通り、リゼットもリュシアンも誰一人として逃がしていない。
「……ということは私達が到着した時点で、すでに応援が呼ばれたあと、ということでしょうか。……まずいですね」
そう考察してリュシアンは眉をひそめた。
「チッ……一刻も早く片付けるぞ!」
そう言ってリゼットは目の前の敵を蹴り飛ばし、銃口を向けるのだった。