エピソードまとめ
□リゼット・レニエ
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ep.2 絡みつく過去
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【CHAPTER3 必要物資】
998Y.C. 森国シルヴェーア ディランブレ戦傷地帯
「さて、物流が滞っている原因の調査を再開しよう」
三人は休息を取って日の暮れた頃、ポワトゥー駐屯地を出て、ディランブレ戦傷地帯へと進んだ。
〔道中会話〕
リュ「やはり夜は少々冷えますねえ……」
「そうか?私はあまり感じないが」
ヴァ「リュシアンは寒い場所が苦手ですからね。大丈夫ですか?」
リュ「ええ、ご心配おかけしてすみません。先ほど休憩した時に自前のハーブティーで体を温めてきましたから」
「それはなんというか……、実にお前らしい対処方法だな……」
リュ「よければ一杯いかがですか?余りを持ってきていますので」
「いや結構だ」
リュ「そうですか……気分が変わったらいつでもどうぞ」
〔道中会話〕
「しかし、砦を落としにきたつもりが、獣退治にまで首を突っ込むことになるとはな」
「想定外ではありますが、準備運動くらいにはなりそうですねえ」
「……それで終わる相手ならいいのですが」
「ははっ。予想だにしない強敵が現れたら………砦の任務より先に命を落とすかもしれないな!」
「やれやれ。そこで笑えるのが教官の怖いところです」
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ディランブレ戦傷地帯をリュンヌ方面へと進んでいると、道中で獣に襲われている連邦兵を見つけた。
「……予想通りの状況ですねえ」
「仕方ない、助けるぞ」
それぞれ武器を構え、獣へ向かう。
「これは……」
「たいした獣ではありませんね」
ディランブレ戦傷地帯でよく見るガルルにバンスの群れだった。
「準備体操になりそうでよかったな。しかし、何度も言うようだが課題のことは忘れるなよ」
「心得ました!」
リゼットの言葉に頷き、二人は獣を斬り伏せて行くのだった。
「た、助かりました!」
獣達を倒し終わると、連邦兵は頭を下げた。
「もしかしてあなた達もバイヌセット砦の制圧戦に?」
「ええ。補給を駐屯地で受けようとしたところで……」
「なるほどそういうことでしたか。ご迷惑をおかけしました。えっと、それでそのご迷惑ついでなのですが……。その、ここに来るまでの間に物資をいくつか獣に取られまして、できればそれも回収したいなあなんて……」
「やれやれ。それで?取られたのはどこだ?」
それでも兵士かとリゼットは呆れる。
「真っ直ぐこの先です!獣の群れに襲われたので、物資を囮に逃げたのです!」
「……仕方あるまい。乗りかかった船だ行くぞ」
リゼットは生徒二人を引き連れて、先へ進んでいくのであった。
〔道中会話〕
ヴァ「先ほどの兵士の態度ですが…………なんでしょう。やる気が酷く削がれますね」
リュ「まあまあ。獣が出るなら捨て置くわけにもいきませんし」
「デュフォールの言う通りだな」
〔道中会話〕
ヴァ「やはりこの作戦……事前準備が疎か過ぎませんか?」
「この責任は諜報部……ガスパルにでも問おうか」
リュ「今回の件もあの人が噛んでいるのですか?」
「私にくだる指令の多くにあいつは絡むからな自発的にはもちろん、上が絡めて来ることも多い。……腹立たしいことに」
ヴァ「あの……教官とガスパル氏。そして連邦上層部はどういう……」
「……ん?」
ヴァ「……申し訳ありません。余計な詮索でした」
「いや、構わない。いつかは話すつもりだ。だが、今は任務の方に集中しよう」
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「あれは……厄介そうですね」
リュンヌの手前で、荷車とそれを餌に奥に控える獣達がいた。
「ええ、明らかに人間が取り返しに来るのを期待していますね」
「捕食の罠を張る獣……ですか。まるで蜘蛛ですね」
「ならば教えてやらねばなるまい、蜘蛛の巣を食い破る猛獣もこの世にはいるということを!」
そう言って三人は武器を構えて獣の群れへ突っ込んで行った。
「く、次から次へとキリがない!」
何処からか湧き出てくる獣達に、ヴァネッサが嘆く。
「一度体勢を立て直しますか?」
「ふむ、モラクス。お前はどう思う?」
リゼットは敢えて、判断の苦手なヴァネッサに尋ねる。
「退くべきか、戦闘を継続すべきか」
「え?そ、それは……」
ヴァネッサはすぐに答えを出せなかった。
「はあ……はあ……。教官、まだ戦いますか?」
息を荒くしながらリュシアンがそう尋ねる。
「敵戦力の見通しが……」
「ならばお前達自身の体力の見通しはどうだ?本当に"今"退くべきか?」
「それは……」
「戦闘中に判断を迷い続けるのも悪手ならば、勝てる戦いで退くのもまた悪手だ」
「くっ……」
リゼットの言葉に、リュシアンもヴァネッサも苦い顔をする。
「わかったら……やるぞ」
「はい!」