エピソードまとめ
□リゼット・レニエ
12ページ/18ページ
ep.2 絡みつく過去
─────────♢────────
【CHAPTER2 課外授業】
998Y.C. 森国シルヴェーア キトルール草原
〔道中会話〕
「説明した通り最終目的地はパイヌセット砦だ。手始めに道中のポワトゥー駐屯地で補給をさせてもらおう」
リュ「了解しました」
ヴァ「しかし、砦を落とすだなんて大きな任務ですね」
「不満か?」
ヴァ「いえ、驚いただけです。あまりに急でしたので」
「まあその点は認めるが。他の兵も参加するとはいえ切り込みを任されるなんて、滅多にない経験だろう。先ほどの課題を反芻し、実戦で学べるいい機会だ。気を引き締めて仕事をまっとうしろ」
〔道中会話〕
ヴァ「しかし……失礼ながら今回の任務はどこか妙です。砦を落とすという大役それも三名という枠の中に、私達ブレイズが抜擢されるというのは……」
リュ「どう考えても合理的ではありませんよねえ」
ヴァ「もっとも教官もすでに、お気付きだとは思いますが」
「ああ……そうだな。だがそれについて私から話せることはない。この任務は正真正銘、正式なものだ。私が新入生に課する模擬演習とは違う。だから下手を打てば命にも関わる。肝に命じておくことだな」
ヴァ「……心得ました」
〔獣の群れ 五叉路〕オタグリ、ウリドン、ゴウリドン、ワービー
ヴァ「こんなところに獣の群れが?いったいなぜ……」
「仕方あるまい。排除するぞ。各々の課題を意識して戦闘にあたれ」
ヴァ「了解です」
「デュフォール貴様には昨日指摘したこと以外にも、課題があるはずだ」
リュ「以前言われたことですよね"戦闘中に考えすぎる"。それが動きのロスに繋がると……」
「理解しているようだな。雑魚でも気を抜くなよ」
獣の群れ討伐後。
「……やはりこの程度の相手では、お前達の訓練にならないか。私が獣側につくぐらいで、ちょうど良かったかもな」
リュ「恐ろしいこと言わないで下さい……」
〔道中会話〕
リユ「しかし、教官を含めて三人で遠出するなんて、なんだか新鮮です」
「ああ。悪いと思っているよ。若い二人の大切な時間を邪魔するなんてな?」
リュ「それは……」
ヴァ「教官はたまに年配のような物言いをされますが、私達とそこまで年は変わらないのではありませんか?もちろん教官のことは尊敬しておりますが子ども扱いするのは、やめていただきたく思います」
リュ「そのヴァネッサさん……。教官がおっしゃりたいのは、そういうことではないかと……」
ヴァ「……へっ?」
「ははっ、飽きないなお前達は!」
〔道中会話〕
リュ「風が心地いいですね」
「この辺りはとてもシルヴェーアらしい風景だな。緑が豊かでのどかで空気がよくて、戦争さえなければこの道も、もっと賑わっているだろうに」
ヴァ「……攻め込まれたくないものですね。ここが戦火に染まる時は国が堕ちる時でしょう」
「随分と暗い想像をするじゃないか」
ヴァ「……大きな任務を前に緊張しているのかもしれません」
「……そうか。だが、貴様が想像している。その光景を現実にしないのが、お前達ブレイズの役目だ」
リュ「……そうですね。今日の任務はその役目の一つに過ぎません」
「わかっているようだな。それでは先を急ぐぞ」
────────────────────
駐屯地までもう少し、というとこで1人の連邦兵が獣の群れに襲われて倒れているのを見つけた。
「教官!」
「わかっている、行くぞ!」
ヴァネッサの呼び掛けに、リゼットは頷き駆け出した。
「すぐそこがポワトゥー駐屯地ですよね?」
リュシアンは長剣で斬撃を飛ばしながらリゼットに尋ねる。
「ああそうだ。軍の拠点を前に姿を現すとは、見上げた根性だな。もしくはなにも考えていないか……」
「さて、どちらにしても対処は変わりません。手早く終わらせるとしましょう」
「ええ、そうですね」
ヴァネッサはリュシアンの言葉に頷き、持った双剣で獣たちを切り裂いて行った。
───────────────────
最後の1匹のゴウリドンを倒し終わり、3人は倒れた兵を起こした。
「救援ありがとうございました!」
「無事でなによりだ」
「皆様もバイヌセット砦の攻略に参加なさる方々ですか?」
「ああ。補給を受けるべく立ち寄らせていただいた」
「あー、補給ですか、ですよね」
煮え切らないようにそう言って、兵士は目線を逸らす。
「なにか問題でも?」
「ええ、少し……。あなた達のことは上官に伝えておくので、駐屯地の奥にある司令部までお越し下さい」
そう言って兵士は先に駆けていく。
「司令部は駐屯地の奥と言っていましたね」
リュシアンの言葉に、リゼットは頷く。
「"問題"というのが気がかりだが……。まあ、行ってみよう」
三人は、駐屯地へ歩いていった。