エピソードまとめ
□リゼット・レニエ
11ページ/18ページ
ep.2 絡みつく過去
─────────♢────────
「早速だが……モラクス、準備はいいか?」
訓練場に到着するなり、リゼットは黒髪でメガネの女子生徒、ヴァネッサ・モラクスへ声をかけた。
「はい……準備不足は否めませんが」
「不意打ちで驚いたか?」
「……正直、教官の課題をクリアするには、まだ未熟かと思っていましたので」
「だからまだ鍛錬が必要だと?そんな呑気でいいのか?実戦は貴様の成長を待ってはくれんぞ」
「……はい。心得ています。ですので、私は今あるすべてをもって、教官に相対したいと思います」
「いい心意気だ。……では行くぞ!」
リゼットは二丁の銃を、ヴァネッサは二本の剣を構え、戦闘を開始した。
〔VSヴァネッサ〕
「相変わらず美しい太刀筋だな」
「ありがとうございます。……ですが、教官を倒すのにはまだ不十分です」
「ほう……"まだ"ということは、いずれ倒す気があるということか」
「それは……」
「じゃあ、手を抜くのは失礼というものだな?」
「教官らしいですね」
────────────────────
「はあっ……はあっ……完敗です……」
リゼットとの戦闘を終えてヴァネッサは肩で息をする。
「リュシアン。頑張って下さい……」
そう言って、ヴァネッサはプラチナブロンドの男子生徒、リュシアン・デュフォールと選手交代した。
「次はデュフォール、貴様の番だ」
「……まあ、そうなりますよねえ」
「なんだモラクスとの戦闘を見て、怖気付いたか?
「はっはっはっ」
リュシアンは呑気に笑う。
「戦いたくない気持ちなら、最初からずっとですよ」
「まったくお前はもう少しシャンとしろ。ブレイズ首席の称号が伊達でないこと………証明してもらうぞ!」
そう言ってリゼットは二丁銃をリュシアンに向けた。
〔VSリュシアン〕
「最近も任務で忙しそうじゃないか。数々の実戦で鍛えた力………さぞ私を楽しませてくれることだろう」
「どうですかねえ。教官のお眼鏡に叶うかどうかは実際に見ていただくということで」
────────────────────
「ふう……やはり届きませんでしたか」
戦闘を終え、リュシアンは一息つく。
「……モラクスは少し回復したか?」
リゼットはヴァネッサに確認する。
「は、はい……」
「それはなによりだ。ではここからは……、二人まとめてかかって来い!」
そう言ってリゼットは二人に銃口を向け引き金を引いた。
〔VSリュシアン&ヴァネッサ〕
「えっ!?」
「貴様らの力はそんなものか?今度は同時に相手してやる、どこからでもかかってこい」
「くっ……」
「さすがのタフさですね」
「いやあ、実戦では、ほぼ負けはないんですがねえ」
「それはそれは、プライドを傷つけてしまってすまないな。上には上がいるということを、叩き込んでやろう」
「これは仕方がない。全力で行きましょう、ヴァネッサさん」
「心得ました!」
HP残り少し
「このままでは………」
「一度体勢を立て直したいですねえ……」
「貴様らの全力とやらはその程度か?敵わなくてもいい。今のお前達のすべてをこの私に見せてみろ!」
────────────────────
「……参りました」
リュシアンとヴァネッサは膝を着いた。
「やはり、お前達二人は優秀だな。そこらの聖痕騎士よりよほど強い。だが、やはり課題も多い。まずはモラクス」
そう言ってリゼットはヴァネッサを見る。
「前から言っているが、大事な局面でこそ迷いを捨てろ」
「……はい」
「そして、デュフォール」
今度はリュシアンを向く。
「お前は少々賢すぎる。負けと見ればすぐに退くほどに」
「え……!」
珍しくリュシアンは表情を崩した。
「どうした?」
「い、いえ……。以前、ある人にまったく同じことを言われたなと……。そうですか……僕は……私は、まだ諦めが早く……」
「自分で意識できているならいい。あとは実践を重ねる中で、少しずつ矯正していくのだな」
「はい!」
力強くヴァネッサが返事をする。
「……まあ、そういう意味でもおあつらえ向きか」
小さく呟いたリゼットの言葉に、リュシアンは首を傾げる。
「なんです?」
「ああ、その……な。もし良ければなんだが……」
リゼットは少し、言いにくそうにする。
「私と一緒に、砦を落としに行かないか?」
「……は?」
唐突なとんでもない誘いにヴァネッサは、ぽかんと口を開けるのだった。