エピソードまとめ

□リゼット・レニエ
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ep.2 絡みつく過去
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「早速だが……モラクス、準備はいいか?」

訓練場に到着するなり、リゼットは黒髪でメガネの女子生徒、ヴァネッサ・モラクスへ声をかけた。

「はい……準備不足は否めませんが」

「不意打ちで驚いたか?」

「……正直、教官の課題をクリアするには、まだ未熟かと思っていましたので」

「だからまだ鍛錬が必要だと?そんな呑気でいいのか?実戦は貴様の成長を待ってはくれんぞ」

「……はい。心得ています。ですので、私は今あるすべてをもって、教官に相対したいと思います」

「いい心意気だ。……では行くぞ!」

リゼットは二丁の銃を、ヴァネッサは二本の剣を構え、戦闘を開始した。

〔VSヴァネッサ〕
「相変わらず美しい太刀筋だな」

「ありがとうございます。……ですが、教官を倒すのにはまだ不十分です」

「ほう……"まだ"ということは、いずれ倒す気があるということか」

「それは……」

「じゃあ、手を抜くのは失礼というものだな?」

「教官らしいですね」

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「はあっ……はあっ……完敗です……」

リゼットとの戦闘を終えてヴァネッサは肩で息をする。

「リュシアン。頑張って下さい……」

そう言って、ヴァネッサはプラチナブロンドの男子生徒、リュシアン・デュフォールと選手交代した。

「次はデュフォール、貴様の番だ」

「……まあ、そうなりますよねえ」

「なんだモラクスとの戦闘を見て、怖気付いたか?

「はっはっはっ」

リュシアンは呑気に笑う。

「戦いたくない気持ちなら、最初からずっとですよ」

「まったくお前はもう少しシャンとしろ。ブレイズ首席の称号が伊達でないこと………証明してもらうぞ!」

そう言ってリゼットは二丁銃をリュシアンに向けた。

〔VSリュシアン〕
「最近も任務で忙しそうじゃないか。数々の実戦で鍛えた力………さぞ私を楽しませてくれることだろう」

「どうですかねえ。教官のお眼鏡に叶うかどうかは実際に見ていただくということで」

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「ふう……やはり届きませんでしたか」

戦闘を終え、リュシアンは一息つく。

「……モラクスは少し回復したか?」

リゼットはヴァネッサに確認する。

「は、はい……」

「それはなによりだ。ではここからは……、二人まとめてかかって来い!」

そう言ってリゼットは二人に銃口を向け引き金を引いた。


〔VSリュシアン&ヴァネッサ〕
「えっ!?」

「貴様らの力はそんなものか?今度は同時に相手してやる、どこからでもかかってこい」

「くっ……」

「さすがのタフさですね」

「いやあ、実戦では、ほぼ負けはないんですがねえ」

「それはそれは、プライドを傷つけてしまってすまないな。上には上がいるということを、叩き込んでやろう」

「これは仕方がない。全力で行きましょう、ヴァネッサさん」

「心得ました!」



HP残り少し
「このままでは………」

「一度体勢を立て直したいですねえ……」

「貴様らの全力とやらはその程度か?敵わなくてもいい。今のお前達のすべてをこの私に見せてみろ!」


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「……参りました」


リュシアンとヴァネッサは膝を着いた。


「やはり、お前達二人は優秀だな。そこらの聖痕騎士よりよほど強い。だが、やはり課題も多い。まずはモラクス」

そう言ってリゼットはヴァネッサを見る。

「前から言っているが、大事な局面でこそ迷いを捨てろ」

「……はい」

「そして、デュフォール」

今度はリュシアンを向く。

「お前は少々賢すぎる。負けと見ればすぐに退くほどに」

「え……!」

珍しくリュシアンは表情を崩した。

「どうした?」

「い、いえ……。以前、ある人にまったく同じことを言われたなと……。そうですか……僕は……私は、まだ諦めが早く……」

「自分で意識できているならいい。あとは実践を重ねる中で、少しずつ矯正していくのだな」

「はい!」

力強くヴァネッサが返事をする。

「……まあ、そういう意味でもおあつらえ向きか」

小さく呟いたリゼットの言葉に、リュシアンは首を傾げる。

「なんです?」

「ああ、その……な。もし良ければなんだが……」

リゼットは少し、言いにくそうにする。


「私と一緒に、砦を落としに行かないか?」

「……は?」

唐突なとんでもない誘いにヴァネッサは、ぽかんと口を開けるのだった。
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