エピソードまとめ

□リゼット・レニエ
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ep.2 絡みつく過去
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「この私に生徒二名を伴って、砦を一つ落としてこいと?」

薄紫の髪の、やたらスタイルのいい女性は、立派な髭を蓄えた糸目の優しそうな顔の、小太りの男の前にデスクを挟んで立っていた。
男はこのイーディス騎士学校の校長で、女はここの教官だった。


「文面を見る限り、そういうことになりますかねえ。もちろん他の兵も作戦に参加しますが、まずは貴女達だけで切り込めと」

デスクの上に置かれた紙を見ながら校長はそう告げる。

「相変わらず、ふざけたことを。私を消したいだけなら、ご自慢の暗部でも使えばいい。なんならガスパルにでも私を殺させれば………」

そう呟いて、女─リゼットは、ハッと顔を上げた。

「……申し訳ありません。口が過ぎました」

「まあ、気持ちは理解できますよ。今回は生徒まで……ですからね」

「こんなことにあいつらを巻き込みたくはなかった。彼らは光だ。未来を担う希望の光であり至宝。過去の亡霊が触れていい存在じゃない」

「……やれやれ。その深い愛情をたまには生徒達にも見せておやりなさい」

「ご冗談を、飴を与えるにはまだ早いですよ 。生徒にも……私にも」

「……そうですか」

「では、同伴生徒を選抜後任務に赴きます」

「随分と、あっさり受けましたね?」

「上が生徒達を甘く見ているのが癪なので見せてやりますよ。優秀な生徒二名を同伴していいと言うのであれば、……砦一つ落とすことなど造作もないということを」

そう言って、リゼットは踵を返し校長室を出ていくのだった。

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【CHAPTER1 選抜】
998Y.C. 森国シルヴェーア イーディス騎士学校

「……座学はここまで。次は実践訓練に移る。お前達二人には以前から課題を出してあったな?」

リゼットは目の前に立つ二人の生徒にそう告げる。

「は、はい」

黒髪のメガネをかけた女子生徒が、緊張した面持ちで返事をする。

「その後の進捗はどうか、しかと確認させてもらおう」

「はは……お手柔らかに」

もう1人は少し余裕がありそうに笑いながらそう言うプラチナブロンドを持つ男子生徒。

「では、私達は先に訓練場へ向かいますね」

男子生徒がそう言って女子生徒と共に、教室を出ていった。

「今日の指導相手が、あの二人なのはちょうどいい。例の"課題"のことも含め、少し様子を見させてもらおう。外は天気もいいし絶好の訓練日和だな」

そう言ってリゼットも、訓練場へ向かって歩いていくのであった。

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〔校内会話 廊下 女子生徒〕
「あっ、リゼット教官!……もしかして、この教室、次の授業で使います?」

「いや、その予定はないが」

「良かった。じゃあ、私のクラスで合ってそうです!……この学校、授業によって教室が変わるので、たまに間違えちゃうんですよね……」


〔校内会話 ホール 教員〕
「リゼット先生、今日も生徒の訓練ですか?」

「ええ。少し厄介な任務がありまして。同行する能力があるか試そうと思っています」

「ははは!こりゃまた過激そうな訓練だ。先生のしごきはこの学校の名物ですねえ」


〔校内会話 ホール レオ〕
「いいっ!?リゼット教官!?」

「どうした?やましいことでもあるのか?」

「あ、い、いえ、その……前の授業ちょっと遅れてしまって……。で、でも問題ないです!教官の訓練にはバッチリ参加しますので!」

「なるほど。ではその遅刻した授業の分、みっちりと補習をしてやろう。楽しみにしているんだな」

「……はい」


〔校内会話 寮への道 女子生徒〕
「あれっ?この先は学生寮ですが……。教官が用事なんて珍しいですね。ひょっとして………寝坊した生徒を叩き起こしにきたとか……?」

「そこまでしてやるほどお人好しじゃない」

「で、ですよねえ」


〔校内会話 中庭 男子生徒2人組〕
「さっき訓練場の方に行ったのって……」

「ああ、ブレイズの二人だよ。しかも、筆頭のデュフォールとモラクスか……」

「模擬戦闘でもやるのかね?だったら見てみたいもんだな」

「確かに……あの二人の戦闘技術、色々と参考になりそうだもんな」


〔校内会話 石碑前 男子生徒〕
「シルヴェーアの深緑に〜…………んんっ、ウウンッ!あっ、リゼット教官。これはお見苦しいところを……。いついかなる時でも美しい校歌が披露できるよう、日々練習中なのです。いつか法王様の前で歌えたら……本望ですね」


〔校内会話 訓練場の門前 男子生徒〕
「リ、リゼット教官!あの……僕はブレイズではないのですが、時間がある時に ご指導いただけますでしょうか?」

「別に構わないが、私の指導は厳しいぞ。それでもいいなら……」

「それがいいんですっ!教官になじられしごかれながら強くなる……それに最高の喜びを感じるんです!」

「そ……そうか……」
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