エピソードまとめ
□リゼット・レニエ
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ep.1 補習授業
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ブレイズ選抜試験最終戦。
レオ・フルカード、ユーゴ・シモン対セリアアルヴィエ、ミシェル・ブーケ。
「いい動きだ」
レオとユーゴの動きを見てリゼットは関心した。
刀と長剣を使う前衛タイプ二人対、弓と創術で戦う後衛タイプの二人。前衛の二人が有利なのもあるがそれを除いても……。
「身体能力といい、戦闘センスといい、やはり今期ではこの二人が頭一つ抜けているな。だが……」
リゼットが見据えたのは、ミシェルに向かって剣を振り下ろそうとしたレオだった。
レオは、振り下ろされる剣に目をつぶったミシェルを見て躊躇し、動きを止めた。
その隙にミシェルの後ろから飛び出したセリアが矢を放ち、レオを打ち倒した。
「が……!嘘……だろ?」
尻もちを着き、レオも彼のパートナーのユーゴも驚きの顔を見せた。
「そんな……まさか……!」
「やめ!」
声を張り、試合を止める。
「勝者、セリア・アルヴィエ、ミシェル・ブーケ!二人をブレイズの新たな一員とする!」
勝利者コールをすれば、セリアとミシェルは手を取り合って喜び合う。
その姿を、レオとユーゴは呆然と見つめている。
消して素材は悪くない。この二人は即戦力としてブレイズではなく、穏やかな学園生活の中で精神を育むのが最善の……。
そう考えるリゼットの元に、この試験を見守っていた連邦兵の一人が寄ってきた。
「リゼット教官。上からの伝令です」
耳元で小声で兵士が話す。
「レオ・フルカード、ユーゴ・シモンの両名は、試験の結果に関わらずブレイズに採用せよと」
「なんだと?」
兵士は言うだけ言って去っていく。
「……クソが。仕方ない、少々手荒になるが。……私直々の補習授業といくか」
【CHAPTER1 補欠合格者】
998C.Y.森国シルヴェーア イーディス騎士学校
補習授業の為訓練所へ来たはいいが、補習授業を受けるはずのレオとユーゴの二人だけでなく何故かセリアとミシェルも居た。
「こんなところでなにをしている?」
「リ、リゼット教官……」
セリアに話しかければ、彼女は慌ててピンと背筋を伸ばした。
「その……レオ達が補習授業をするって聞いて、どんなことをするのかなーって……」
「……なるほど」
「あ、あの!少し手加減してあげて下さい!」
「教官に本気出されたら、いくらレオ達だって……」
「フッ、幼馴染の心配か。心配するな。貴様の思うようなことにはならない」
「……よかった……」
「まあもっとも、あの二人の能力が私の期待するものでなかったら、その時は保証しかねるがな」
「……え」
固まるセリアを置いて、今度は幼なじみでもないのに見に来たミシェルに話しかける。
「できの悪いクラスメイトの観察か?」
「いいえ!そんなつもりは……。ただ選抜試験の最終試合……フルカードさんは、大事な場面で手を抜いたように見えました。あの時、お二人が本気を出していたら私達……本当は負けていたんじゃないかって思うんです」
「……ほう。なかなか勤勉だな、ミシェル・ブーケ。いいだろう、そこにいるといい」
女子二人を置いて、リゼットは訓練所の真ん中で待つ男子二人に声をかけた。
「さて情けない補欠合格者ども。貴様らには今から補習授業を受けてもらう。死にたくなければ歯を食いしばって付いて来い」
「はい!」
「返事だけは一人前だな。では早速始めるが準備はいいか?」
「はい!どんなしごきにも気高く耐えてみせますよ!」
「僕も覚悟はできています!なんでも申し付けて下さい!」
「よろしい。ではまず……軽く私と一戦交えてもらうとしようか」
そう言ってリゼットは銃を構える。
「はい!」
「……はい?」
元気よく返事するレオと、困惑した様子で返事したユーゴにリゼットは容赦なく弾を打ち出す。
「まずは貴様らに身の程を叩き込まなくてはならない。さあどこからでもかかって来い」
「や、ちょ、いきなりそんな……」
撃たれた弾にレオは驚き抗議の声を上げた。
「補習授業ってもっとこう段階を踏むものでは……!」
「無駄口を叩く暇があるとは随分余裕だな?
そのままだと約2秒後には二人とも死ぬが問題ないか?」
「ふむ思ったよりはやるな。選抜試験の時よりいいじゃないかお前達。剣に甘さや職語が一切ない」
「ははは……」
「……なんだこれ、冗談じゃねえぞ……!同じ人間と戦っている気がしねえ……!」
「ま、まさかここまで差があるなんて……!」
地に倒れ荒く息をするレオとユーゴを見下ろす。
「…さて、ウォーミングアップはこの辺りでいいだろう」
「は?今のが……ですか?」
「ああ、もちろん。では補習授業の本番に行くぞ。お前達付いてこい」
そう言って歩き出すリゼットを見て二人は慌てて身体を起こす。
「え、休憩もなしに?ちょ、待って下さいよ教官!」
「僕ら生きて帰るのかな今日……」