エピソードまとめ
□ミシェル・ブーケ
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ep.1 トリアージ
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998C.Y. アムル天将領 塩取りの穴
「うわー。洞窟っていうから、なんか暗くて怖い所なのかと思ったけど。凄く綺麗……。ドーマさんにも見せてあげたいな。……ううんダメだ。ここに来るまでは危険がいっぱいだもの。お腹の子になにかあったら大変だし……」
「でも赤ちゃんかあいいなあ。ドーマさんのお子さんだし、絶対にかわいいよね。私にも抱っこさせてくれるかなあ」
「……いえ、その前に、私が産要さんをするかもしれない……か。………うう、責任重大だな……。頑張らないと…私……」
「乳幼児って、生まれたばかりはもちろん大変だけど、歩けるようになってからも、ちょっと目を離すと死にかけたりするから、ドーマさんも村の親御さん達も気が気じゃないよね。私の両親も、私が生まれた時そんな感じだったのかな……」
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〔祠1〕
「……あれ?この先に行くための扉が閉まってる……?一度あそこにある祠を調べてみようかな」
「祈りでマナを注ぐと扉が開くみたい。それなら………」
「やった!開いた!」
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〔崖から降りた先〕
「ふう。戦いでもだいぶ緊張しなくなってきたかな。重傷の患者さんの手術に立ち会う時の方が、ずっとドキドキするものね。獣を攻撃するのも、暴れる患者さんを押さえ付ける時のこと考えたら、そんなに抵抗ないし……」
「もしかして私って……、結構、粗野な子だったり……する?そ、そんなことないと思いたいけど。でも不摂生の患者さんを叱った時とか、ミシェルちゃんはたまにオーリさんより怖いよね、なんて言われることあるし……」
「ううん、今はそんなこと考えている場合じゃないよね!薬草に集中、集中!」
「そういえばナマルさん、最近連邦軍を見かけたって噂の話をしてたな。ここまでは見かけなかったけど、もしこの辺りで戦いをする……っていう人達だったら嫌だな……。でもいい人達だったら、一緒に薬草探したりしてくれないかな。それに連邦の土地のことも聞けたりして……」
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〔祠2〕
「また扉が閉まってる。祠に祈るんだよね。
でも……今度は獣がいっぱいいるから、そっちを先に倒しちゃった方がいいかも」
獣を倒し終え祠を調べる。
「……よし、さっきと同じだね」
〔祠を抜けた先〕
「結構奥まで来たな……。ここまで薬草は見当たらなかったけど……。ううん、お爺ちゃんが言ってたんだもん。絶対にあるはず」
「お爺ちゃん怒ってるかな……。許可もなしに勢いよく飛び出してきちゃったし……。村に戻ったら大目玉かも。もう村からも家からも出てはならん!とかなったらどうしよう…!」
「…でも、今はそんなこと気にしていられないよね。人の命がかかってるんだから。それよりも大事なものなんてないよ。お爺ちゃんは私のことも心配してくれるかもしれないけど」
「大丈夫。私の創術はちょっとだけ強い気が……するから。ホントどうして、こんな創術が使えるんだろう………。やっぱりこれは両親の血なのかな?お父さん……お母さん……どうして、私を……」
「……ダメダメ。今考えることじゃない。……行こう」
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〔祠3〕
「まただ……この洞窟、どこまで深いの?ひとまず獣を倒してから祠に祈ろう」
「願い……開いて……」
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〔洞窟の奥〕
吹き抜けになっていて、天からの陽の光で植物が自生していた。
「あれは……薬草?調べてみよう」
ミシェルは急いで、その場に駆け寄る。
「……うん、これだね…」
真ん中が薄いピンクで外に広がる花弁は白い花を摘む。
「よかったあ〜!あとはこれを早く持って帰れば……」
帰ろうと、立ち上がり振り返った瞬間。
「なっ……!?いつの間にこんな……!」
バッサーの群れが周りを囲んでいた。
「こんなの……どう考えても一人じゃ……絶対に……。ううん、違う!これは……私が勝手に諦めていいことじゃない!薬草をお爺ちゃんに持って帰るんだから!」
ミシェルはギュッと杖を握り直した。
「それが今の私の"任務"なんだから!」
「よく言った!」
唐突に聞こえた知らない声にミシェルは、声のした上空を見上げた。
吹き抜けになっている天井の上の部分に鎧を着込んだ銀のベリーショートヘアの女性が立っていた。
「え、貴女は……」
「説明は後だ!」
そう言って女性は上から飛び降りてきた。
「半分は私が受け持ってやる!もう半分は……行けるか?」
「は、はい!行けます!」
「いい覚悟だ!行くぞ……!」
そう言って女兵士は剣を持ち前へと駆ける。
「キミは見たところ創術での戦闘を主としているようだな」
「は、はい!」
「ならば私が切り込みキミがフォロー。そのような戦術で構わないな?」
「だ、大丈夫です!頑張ります!」
獣討伐後
「や、やった。やりました!」
「ああ、なんとか全部片付いたようだな」
「おかげさまで本当に助かりました。えーと……」
「ああ。紹介が遅れたな。グレースだ。グレース・メニル」
「あ、ミシェルです。ミシェル・ブーケ。グレースさんはその……軍人さんなんですか?」
「ああ。軍人といえば軍人だが、私は……。おっといけない。キミには急ぎの"任務"があるのではないか?」
「っと、そうでした!早く薬草を届けないと……」
「どうやら重大な任務を抱えているようだね。早く行くといい」
「グレースさん。本当にありがとうございました」
「いや、いいさ。私も久々に心の底から気持ちのいい人間を見られて嬉しかったよ。ではな。美しく……勇敢な少女よ」
「はい!失礼いたします!」
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〔ミシェルと別れた後のグレース〕
「隊長ー。こんな所にいたんですか?」
洞窟から出ると緑の軍服を着た男に声を掛けられた。
「もう勘弁してくださいよ。その単独行動癖」
「悪い悪い。助けを求める声が聞こえたものでな」
「まったくどこの英雄譚の主人公ですか」
「まあそう言うな。あの子のそれと違って我々の"任務"は、そう気持ちのいいものじゃないんだ。息抜きは必要だろう?」
「…確かに滅入りますからね、この任務」
「ああ、そうだろ。なにせ端的に言えば我々は……。…罪なき人間を殺して回っているわけだからな」