エピソードまとめ

□ミシェル・ブーケ
5ページ/19ページ

ep.1 トリアージ
─────────♢────────



998C.Y. アムル天将領 塩取りの穴

「うわー。洞窟っていうから、なんか暗くて怖い所なのかと思ったけど。凄く綺麗……。ドーマさんにも見せてあげたいな。……ううんダメだ。ここに来るまでは危険がいっぱいだもの。お腹の子になにかあったら大変だし……」

「でも赤ちゃんかあいいなあ。ドーマさんのお子さんだし、絶対にかわいいよね。私にも抱っこさせてくれるかなあ」

「……いえ、その前に、私が産要さんをするかもしれない……か。………うう、責任重大だな……。頑張らないと…私……」

「乳幼児って、生まれたばかりはもちろん大変だけど、歩けるようになってからも、ちょっと目を離すと死にかけたりするから、ドーマさんも村の親御さん達も気が気じゃないよね。私の両親も、私が生まれた時そんな感じだったのかな……」


────────────────────

〔祠1〕
「……あれ?この先に行くための扉が閉まってる……?一度あそこにある祠を調べてみようかな」

「祈りでマナを注ぐと扉が開くみたい。それなら………」

「やった!開いた!」

────────────────────
〔崖から降りた先〕

「ふう。戦いでもだいぶ緊張しなくなってきたかな。重傷の患者さんの手術に立ち会う時の方が、ずっとドキドキするものね。獣を攻撃するのも、暴れる患者さんを押さえ付ける時のこと考えたら、そんなに抵抗ないし……」

「もしかして私って……、結構、粗野な子だったり……する?そ、そんなことないと思いたいけど。でも不摂生の患者さんを叱った時とか、ミシェルちゃんはたまにオーリさんより怖いよね、なんて言われることあるし……」

「ううん、今はそんなこと考えている場合じゃないよね!薬草に集中、集中!」

「そういえばナマルさん、最近連邦軍を見かけたって噂の話をしてたな。ここまでは見かけなかったけど、もしこの辺りで戦いをする……っていう人達だったら嫌だな……。でもいい人達だったら、一緒に薬草探したりしてくれないかな。それに連邦の土地のことも聞けたりして……」

────────────────────

〔祠2〕

「また扉が閉まってる。祠に祈るんだよね。
でも……今度は獣がいっぱいいるから、そっちを先に倒しちゃった方がいいかも」


獣を倒し終え祠を調べる。
「……よし、さっきと同じだね」



〔祠を抜けた先〕
「結構奥まで来たな……。ここまで薬草は見当たらなかったけど……。ううん、お爺ちゃんが言ってたんだもん。絶対にあるはず」

「お爺ちゃん怒ってるかな……。許可もなしに勢いよく飛び出してきちゃったし……。村に戻ったら大目玉かも。もう村からも家からも出てはならん!とかなったらどうしよう…!」

「…でも、今はそんなこと気にしていられないよね。人の命がかかってるんだから。それよりも大事なものなんてないよ。お爺ちゃんは私のことも心配してくれるかもしれないけど」

「大丈夫。私の創術はちょっとだけ強い気が……するから。ホントどうして、こんな創術が使えるんだろう………。やっぱりこれは両親の血なのかな?お父さん……お母さん……どうして、私を……」

「……ダメダメ。今考えることじゃない。……行こう」



────────────────────

〔祠3〕

「まただ……この洞窟、どこまで深いの?ひとまず獣を倒してから祠に祈ろう」

「願い……開いて……」


────────────────────

〔洞窟の奥〕
吹き抜けになっていて、天からの陽の光で植物が自生していた。

「あれは……薬草?調べてみよう」

ミシェルは急いで、その場に駆け寄る。

「……うん、これだね…」

真ん中が薄いピンクで外に広がる花弁は白い花を摘む。

「よかったあ〜!あとはこれを早く持って帰れば……」

帰ろうと、立ち上がり振り返った瞬間。

「なっ……!?いつの間にこんな……!」

バッサーの群れが周りを囲んでいた。

「こんなの……どう考えても一人じゃ……絶対に……。ううん、違う!これは……私が勝手に諦めていいことじゃない!薬草をお爺ちゃんに持って帰るんだから!」

ミシェルはギュッと杖を握り直した。

「それが今の私の"任務"なんだから!」

「よく言った!」

唐突に聞こえた知らない声にミシェルは、声のした上空を見上げた。
吹き抜けになっている天井の上の部分に鎧を着込んだ銀のベリーショートヘアの女性が立っていた。

「え、貴女は……」

「説明は後だ!」

そう言って女性は上から飛び降りてきた。

「半分は私が受け持ってやる!もう半分は……行けるか?」

「は、はい!行けます!」

「いい覚悟だ!行くぞ……!」

そう言って女兵士は剣を持ち前へと駆ける。

「キミは見たところ創術での戦闘を主としているようだな」

「は、はい!」

「ならば私が切り込みキミがフォロー。そのような戦術で構わないな?」

「だ、大丈夫です!頑張ります!」






獣討伐後

「や、やった。やりました!」

「ああ、なんとか全部片付いたようだな」

「おかげさまで本当に助かりました。えーと……」

「ああ。紹介が遅れたな。グレースだ。グレース・メニル」

「あ、ミシェルです。ミシェル・ブーケ。グレースさんはその……軍人さんなんですか?」

「ああ。軍人といえば軍人だが、私は……。おっといけない。キミには急ぎの"任務"があるのではないか?」

「っと、そうでした!早く薬草を届けないと……」

「どうやら重大な任務を抱えているようだね。早く行くといい」

「グレースさん。本当にありがとうございました」

「いや、いいさ。私も久々に心の底から気持ちのいい人間を見られて嬉しかったよ。ではな。美しく……勇敢な少女よ」

「はい!失礼いたします!」


────────────────────

〔ミシェルと別れた後のグレース〕

「隊長ー。こんな所にいたんですか?」

洞窟から出ると緑の軍服を着た男に声を掛けられた。

「もう勘弁してくださいよ。その単独行動癖」

「悪い悪い。助けを求める声が聞こえたものでな」

「まったくどこの英雄譚の主人公ですか」

「まあそう言うな。あの子のそれと違って我々の"任務"は、そう気持ちのいいものじゃないんだ。息抜きは必要だろう?」

「…確かに滅入りますからね、この任務」

「ああ、そうだろ。なにせ端的に言えば我々は……。…罪なき人間を殺して回っているわけだからな」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ