エピソードまとめ
□セリア・アルヴィエ
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ep.2 慈悲と覚悟
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「おはようございます、セリア」
教室の前の廊下で、茶髪の美少女がそう声を掛けてきた。
セリアと呼ばれた青髪の少女は、彼女に歩み寄った。
「今日はフルカードさん達と、御一緒じゃないのですね」
「ええ。二人とも先に寮を出ちゃったのよ」
「ふふ。いつも一緒なのに珍しいですね」
「そんな風にみえる?」
「はい。特にセリアはずっと、二人のことばかり気に掛けて、頼れるお姉さんって感じです」
「頼れるお姉さん……か」
少女は褒めたつもりだったのが、セリアは少し複雑そうな顔をした。
幼きセリアは、静かに泣きながらドアの向こうの叔父と叔母の話を聞いていた。
「セリアちゃんは不幸中の幸いだったよなあ。惨劇が起こった時、あの子だけ村を離れてたとか」
「源獣様の御加護の賜物よ。だって他の子達はほら……」
「……彼らと違って"なにも見ず"に済んでよかったな」
叔父夫婦は、セリアの事を案じてそう言ったのだが、それでも、それを聞いた幼きセリアには、罪悪感のようなものがあった。
……なにも……見なかった……。
見ることも、できなかった。
……ごめんなさい、お父さん、お母さん。
ごめんなさい。レオ、ユーゴ……。
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【CHAPTER1 学校生活】
998Y.C. 森国シルヴェーア イーディス騎士学校
「セリア?」
「あ、ごめん。ミシェルなんでもないわ」
ぼっーと、していたセリアは、茶髪の美少女、ミシェルに謝った。
「そうですか?それにしても……、セリアの話だとお二人は先に出たとのことでしたが、まだ教室にいないみたいですよ」
「…へ?」
「もうじき授業が始まりますけど……」
「まったく、あの二人は!私ちょっと捜してくる!先生が来たら時間稼いでおいて!」
「わ、わかりました」
「ほんっと目が離せないんだからっ。まずはレオからね……。どうせ中庭で剣術稽古でもしてるんでしょ」
そう言ってセリアは駆け出して行くのだった。
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〔校内会話 教室前の女生徒〕
「えーっと、次の授業はここでいいんだよね……。うちの学校って授業ごとに教室変わるから、慣れててもたまに不安になるよ……。前違うクラスに入っちゃって恥ずかしい思いしたし」
〔校内会話 ホールにいる男生徒〕
「ゲッ、お前は!」
「あっ、選抜試験の時に私達を足止めした……!」
「あ、あの時は悪かったよ。どうしてもブレイズに選ばれたくて必死だったんだ。でも、今のお前らを見てると、あそこで負けてよかったと思う」
「それって……」
「だって、リゼット教官の指導!あんなん付いていけねーだろ!よく耐えられるなホント尊敬するよ。応援してるから死なないように頑張ってくれ」
「ありがたいけど……なんか複雑だわ……」
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中庭に向かうと、長い赤毛をポニーテールにした男子生徒が刀を構えていた。
「フルカード流秘奥義……獅子我王!」
「が、ガオーってだっさ!」
セリアが思わずそう言えば、男子生徒─レオ・フルカードは顔を真っ赤にして驚いた。
「セ、セリア!?なんで見てんだよ!」
「中庭でダサい秘奥義、開発している方が悪いんでしょ」
「だ、ダサいってお前なあ……」
セリアの言葉にクザクザと刺されながら、レオは刀をしまった。
「んで、俺になにか用かよ」
「なにか用かよ、じゃないでしょ。もう授業始まるわよ」
「いっけね、そんな時間か。気高い修行に夢中だったぜ」
「はいはい。それはまた後でね」
レオを先に行かせてセリアは次を考える。
「……さて、次はユーゴか。本に夢中にでもなってるのかしら?図書室は、校舎に戻って左の奥よね。……もう学校の構造にも慣れてきたわ!」
そう言ってセリアは、校舎の方へ戻っていくのであった。
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〔校内会話 石碑前男生徒〕
「最近ここで瞑想する朝活をしてるんですけど、あちこちから声が聞こえてくるんですよね………。今日は変な技名みたいのも聞こえたし、気になってしょうがないんですよ」
「……その雑念を振り払うのが、瞑想なんじゃないですか?」
「た、たしかに!となるとここはとてもいい場所ですね!よし、明日もがんばって朝活に励むぞ!」
〔校内会話 寮への道すがら〕
「なにかあったんですか?」
「突然、愛用しているペンがなくなったんだ。さっきまでしっかり手に握っていたのに……」
「そ、そうなんですね……」
「いつもテストは、あのペンで満点を取ってきたのに。次の試験が不安で仕方ないよ……」
〔校内会話 食堂前女生徒〕
「あっ、あなたブレイズの1年生よね。もう学校にも慣れたと思うけど、教室の場所がわからなくなったら、この案内板を見るといいわ。私も新入生の頃はこれに助けられたから……」
〔案内板を調べる〕
「一応確認だけど、図書室は……、うん。入って、左に真っ直ぐであってるわね」
〔図書室会話 男生徒〕
「あまり知られていませんが、ここの書籍数は凄いんですよ。学校としてはもったいない程の種類が揃っています。なのに利用者数が少ないのが悲しいところです……」