エピソードまとめ
□セリア・アルヴィエ
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ep.2 慈悲と覚悟
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セリアはミシェルが教員に話しかけ足止めしてくれている横を通り過ぎて図書室へと急いだ。
図書室の中へ入ると、意外と直ぐにユーゴは見つかった。
「……帝国宰相アウグスト・ヴァレンシュタイン。実に不可解な経歴の人物だ。しかし、その功績は本物……」
「ユーゴ?」
「本人の戦闘力もさることながら戦術家としての側面も……」
「おーい、ユーゴ?」
話しかけるが考え事に集中していてユーゴは気づかない。
「……もし僕が彼なら、連邦領内で重視する場所は……」
「こらっ、ユーゴ!」
セリアが図書室に似つかわしくない大声を出す。
「わっ」
ユーゴは驚いて、肩をびくりとさせた。
「な、なんだ。セリアか驚かせないでよ」
「こうでもしないと戻って来ないでしょ。のめり込むと凄いんだから」
「う……」
「ほら、もう授業の時間よ。急いで行かないと」
「あ、ホントだね。助かったよ」
手に持っていた本をユーゴは棚にしまって慌てて教室へ向かって行った。
「よしっ、私も教室に戻るとしますか」
そう言ってセリアも教室へと急いだ。
「ただいま!先生は?」
廊下で待っててくれたミシェルに声をかける。
「一度いらっしゃいましたが……ダメ元で忘れ物がないか聞いたら、実際に教材が足りなかったらしく、教員室に戻りました」
「ホントに?やるわね、ミシェル!」
「いえ、そんなことは……」
褒め称えるとミシェルは首を振った。
「あ、フルカードさん達も教室に入ってますよ」
「よかった。まったく手がかかるんだから。じゃあ、私達も入ろっか」
そう言って二人は仲良く教室へと入っていくのであった。
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キンコンカンコンと鐘の音が鳴り、授業の終わりを告げた。
「アルヴィエくん、キミは今日の日直だったかね?すまないが教材を教員室に運んでくれないか。私は次の授業の準備に取りかからなければいけなくてね」
「了解しました!」
「よろしく頼んだよ」
セリアは頼まれた教材を抱えて教室を出るのだった。
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〔校内会話 レオ、ユーゴ、ミシェル〕
「はあ……やっぱ座学は苦手だわー」
「そんなだから、技名がダサくなるんじゃないの」
「技名って?」
「お、おい。絶対言うなよセリア!」
「えー、どうしよっかなー」
「ふふっ」
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「教員室は……ここをずっと右に行った所ね」
教室を出てセリアはホールへ向かった。
「えっと、教員室は……。そうそう、右の廊下を進んで二番目の部屋だったわね」
間違ってたらいけないので、案内板でちゃんと確認した上で、ホール右側の廊下へと歩いていく。
教員室のデスクの上に、教材を置いてセリアは部屋をでる。
「これでよしと」
「あ、セリア・アルヴィエ。ちょうどいいところに」
そう言ってリゼット教官が寄ってきた。
「悪いのだが、伝令を頼まれてくれるか?」
「はい?構わないですよ」
「このあとブレイズの2・3年生四人と、軽く人喰い獣狩りに出るのだが、その任務の事前集合地点が食堂から中庭に変更になった。それをデュフォール達に、伝えてくれるとありがたい。この時間なら恐らく寮にいるはずだ」
「了解しました」
返事をしてセリアは歩きだす。
「寮に行くなら一回、外に出なくちゃ。ブレイズの四人っていうのは……3年生はリュシアンさんとマクシムさん。2年生はイェルシィさんとヴァネッサさんよね。一度外に出て寮を捜してみましょう」
そう言って、まずは中庭を目指すのだった。
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〔校内会話 校長室前〕
「あっ……校長先生」
「こんにちは、今日も元気そうですね。学校にはもう慣れましたか?」
「はい!案内板を見なくても、少しは場所がわかるようになってきました」
「それは良かった。なにか不便があったら、いつでも声をかけて下さい」
「お気遣いありがとうございます!」
〔校内会話 中庭の女生徒〕
「さっき寮の前で男女が座り込んでたの。たぶんアセルマン先輩とイェルシィ先輩だったんだけど、あんなところでなにしてるのかな……」