エピソードまとめ

□セリア・アルヴィエ
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ep.1選抜試験
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【CHAPTER2 逆境を超えて】


「二回戦………私達が……!」

「やりましたね、セリア」

「え、あ、うん」

「でも、ここから先はさすがにもう……」

「どうしました?」

「う、ううん。なんでもない」

首を振ったセリアは試験会場の奥の門をあけて、その先の森に足を踏み込んだ。



998Y.C. 森国シルヴェーア、アンスワン森林
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〔道中会話〕

「そういえば、騎士を志す上で、武器に弓を選ぶというのは珍しいと思うのですが、なにか理由があるのですか?」

「あーこれ?まあ私はちょっとだけ目がいいから、この手の武器が得意ってのもあるけど……。一番は身近に、刀やら剣を振り回すのが二人いたから、それを補う形でかな?」

「なるほど。大切な人のためにこそ武器を取るだなんて、とても健気で素敵ですね」

「そ、そんないいものじゃないって!やっぱり、騎士を目指すなら誰かの背中に守られるだけのお姫様じゃいられないしね。だから、身近な二人に負けないくらいの力を付けなくちゃって思ったの」

「セリアがお姫様……?」

「え、いやただのたとえよ!扱いの話ね!」

「……お姫様、いいと思います。では私はそのお城の庭師……とかですかね?」

「いやいや、だったらミシェルの方がお姫様感あるでしょ」

「そんなことないですよ。お転婆なお姫様のほうが可愛いと思います」

「………やっぱりミシェルって、結構意地悪よね……」


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〔道中荒地〕

「なんか、この辺ちょっと荒れてない?」

「そういえば数日前強めの嵐が来てましたね」

「ああ、あのときの……すごい土砂降りだったわよね。干してた洗濯物がびしょびしょになって………って、そんなことはどうでもいいのよ!で、その風のせいで木が倒れて、獣の住処になってるってワケ?」


「そうみたいですね……」

「はあ……。神様はどれだけ私達が嫌いなの……」


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〔倒木エリア〕

「なに、これ。すっごく邪魔なんだけど!」

木々が倒れて道を塞ぎ、そこをガルル達が縄張りにしているようだ。

「どうしましょう?迂回路はありますが、かなり遠回りですし時間的に間に合うかどうか……」

「……それなら突っ切りましょう」

「ええ?けど大量の獣が……」

「大丈夫。ヤケになってるわけじゃないわ。うん…。よし、この地形なら……」

「セリア…?」

「行けるわ!私に付いてきて」

「……ふふ」

「どうかした?」

「いえ、やっぱりセリアがパートナーで良かったなと」

「ま、また貴女はそういう……!」

少し頬を赤くして、セリアはいいからこっちとミシェルを手招いた。
倒れた木々たちの影に隠れるように言って、セリアはそこから弓矢でガルル達を撃ち落としていく。1匹落としては別の木の影にかくれて、また弓を構える。
彼女の、荒れてしまった地形を逆に利用した策に感心したミシェルは同じように草場の影から突進獣を召喚して獣狩りに参加した。




「よしっ、次行くわよ次!」

「順調ですね」

獣達を倒し終わって、二人は倒れた木々たちの間を縫って先へ進む。

「セリアの戦い方、凄いですね」

「え、なにが?」

「まるでこの場を空から見下ろしているみたいに的確に動くものですから」

「そう?私はいつも通りにやってるだけなんだけど……」

「いつも通り……ですか?」

「ええ。ほら、私才能の塊みたいな動きする
二人の援護に回ることが多いから、誰がどこにどういう風に動くのか、常に俯瞰するのが 染み付いちゃっているのよ」

「常に俯瞰を……」

「まあ、あの二人の場合、想定外の動きをすることが多いんだけどね」

「それってとても凄いことなのでは……」

「あはは、いいよ、無理に褒めてくれなくたって。自分の才能のなさは私が一番よく知ってるもの」

「いえお世辞とかではなく本当に貴重な……」

「あ、今が矢を射るベストタイミング!」

「……ああもう!」

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〔第二試験〕

「やっと着いた……」

「道中でもうくたくたですね」

会場への門を潜れば、男女ペアの生徒と、普通の生徒より煌びやかな装飾の付いた7分袖のブレザーと半ズボンの制服と帽子を被った三年生のブレイズ、マクシム・アセルマンがそこにいた。

「遅い!まったくこの僕を待たせるとはどういう了見だ」

少し怒った様子の彼に、ミシェルが恐る恐ると言った様子で口を開く。

「もしかして試合時間に遅れましたか?」

「いいや。だが僕の貴重な時間は無駄にされたぞ」

その高圧的な物言いに、なにこの人、間に合ってるならいいじゃない、と言うようにミシェルとセリアは顔を見合わせた。

「……えと、なんかすみません」

とりあえず、と言うようにミシェルが謝れば、マクシムはやれやれというような顔をした。

「しかし、送迎付きで遅れるとは先が思いやられるな」

「送迎?なんの話ですか、それ」

「まさかお前達……。あの倒木エリアを歩いて通過したとでも言うのか?」

へ?とセリアは首を傾げた。

「まあいい、第二回戦……、開始だ!」

マクシムの唐突な開始宣言に武器を取ることを考えるよりも先に先程の発言への驚きが勝っていた。

「ちょっと待って!送迎ってどういうこと?」

「倒木の前に迂回送迎要員を待機させていたはずだ。倒木は想定外の事態だったからな」

「誰もいませんでしたけど……」

ミシェルも、セリアもそんな人は居なかったと言う。

「それならさっき僕達を送ってくれた人を、「ご苦労」って言って帰してませんでした?」

対戦相手の男子生徒が思い出したように、そう言えば、マクシムは、…あ、と小さく呟いた。

「……この苛立ち。全部ぶつけるわよ、ミシェル!」

セリアはギュッと弓を引き絞った。








「やめ!」

マクシムが声を張り上げる。

「勝者……31番32番!逆境からの勝利よくやったな!」

「は?逆境ですって?」

イライラとした様子でセリアが声を張る。

「さすがに今のは私も少しカチンと来ましたかね……」

「ここほん!では二人とも三回戦の会場に向かうがいい」

慌てて咳払いをし、そう言って話題を逸らそうとするマクシムをみてセリアは、はあ……と大きなため息を吐いた。

「これ以上この人になに言っても意味なさそうね」

マクシムと話をすることを諦めたセリアとミシェルの前に、対戦相手だった2人が寄ってくる。

「完敗よ。あたし達は全力を出し切った。本当よ」

「ああ俺も悔いがないよ!ところで……負けた俺達はここからどう帰るんです?送迎の人もういないですけど……」

男子生徒がそう聴けば、マクシムは、……あ、と呟いて顔を逸らした。

「あ……?」

「ま、待て待て、僕がなんとかするから、ここはどうか穏便に!そ、そう、アセルマン家の誇りにかけ……」

慌てた様子のマクシムを見て、置いて先に行きましょうか、とセリアとミシェルは森の奥を進んで行くのであった。
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