エピソードまとめ
□レオ・フルカード
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ep.1 英雄の卵達─────────♢─────────
ただじっと丘を降りてく2人を見送るレオに、ユーゴが声をかける。
「どうしたんだい?思い悩んでいる事でもあるのかい?」
「あ、いや……」
レオは口を閉じ、少し悩む素振りを見せた。
「……そういえば、ユーゴ。結局こいつが荷車に乗せ運んでた荷物ってなんだったんだろうな」
「あ、そうだね。確か今は、あの岩の近くにあるようなこと言っていたけど……一応確認してきた方がいいかな」
「だな。じゃあ、俺がここでこいつの見張りをしておくから、お前見てきてくれよ」
「了解。もし持ってこられるようだったらこっちに運んでくるよ」
「ああ、頼む」
ユーゴが離れていきレオはひとり、気を失った逃亡犯の男を見つめる。
それからレオは刀を持つ手に付けられた自分のエンブリオを見つめた。
そして、先程の男の言葉を思い出していた。
「……このままじゃ俺も……!くそっ、殺せよ……殺してくれよ!おい、なあ!」
殺してくれと願う必死の叫びだった。
「……殺せ……か」
ぽつり、と呟いたレオはハッとして正面に向け刀を構える。
次の瞬間には雄叫びを上げた逃亡犯の剣がぶつかり、キンッと金属音がひびいた。
「があああっ!」
「な!?これは……」
相手の顔を見た目レオは驚き目を見開く。
白目を剥いた男の顔の色は灰色く変色し、痣の様なものが浮かび上がっていた。
その痣はどことなくエンブリオを移植することで出来る痣に似ている気がした。
「……これだから帝国の技術ってヤツは!」
「おい、あんた!やめろ!そんなことしても……」
レオが叫ぶが、男はただ獣の様に唸り雄叫びを上げるだけだった。
「ダメだ……。話しが出来ねぇどころか……正気に戻ってもくれねぇ……このままだと俺も……くそっ!覚悟を決めなきゃいけないのかよ!」
襲ってきた逃亡犯の心臓に、一突きレオの刀が刺さった。
相手の身体に血が滲み、レオの刀が引き抜かれれば、男はずるりと地面に落ちた。
肩で息をし、地に倒れた男を見下ろして、手に持っていた刀を落とした。
そして片膝膝を付き、拳を握りそれを地面に叩きつけた。
「くそっ、くそっ!帝国のヤツら……また…こんな……!」
ギリ、と歯を食いしばりレオはもう一度強く地面を叩いた。
「俺は…!俺は…!!」
ザッザッサッと、後ろから走る音が聞こえた。
「こ、これはいったい、どういう……」
走って戻ってきたユーゴは、地に倒れた男を見て驚きで足を止めた。
レオは落ちた刀を拾って、ゆっくりと立ち上がる。
「……悪い、ユーゴ」
「そうか、帝国の……」
「ユーゴの方は荷車どうだったんだ?」
「……燃やされたよ。誰かに。どこからか創術を撃ち込まれた」
「んだよ、それ。……それで、中身は確認できたのか?」
レオの言葉にユーゴは、先程見てきたものを思い返した。
岩の後ろに隠されていた荷車に乗せられていたのは、人の遺体。しかもその腕にはエンブリオが付いているものだった。
そしてそれを見た瞬間どこからか撃ち込まれた創術で荷車が燃えた。
そして、ユーゴはその創術を打ち込んだのが、会ったことのある髭の男だとは気づかなかったようだ。
「……ううん。……見なかったよ」
「……そっか」
「うん……」
ユーゴは見た事を押し黙ることに決めた。
「…俺達、戦争してんだよな」
「……そうだね」
佇む彼らを置いて、夕陽が沈んで行った。
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〔ED後〕
逃亡犯の遺体や燃え尽きた荷車の痕跡を連邦兵達が慌ただしく回収していく中、レオはパチパチと音を立て燃える焚き火の前に座っていた。
「いや、今日はお手柄だったね。レオくん 」
そう言って両手にカップを持ったガスパルが近づいてきた。
「お手柄……ですかね」
差し出された湯気の立つカップをレオはそっと受け取った。
「おやおや、キミらしくもない」
「俺らしくって、俺のことなんかなにもしらないでしょうに、あんた……」
「レオ・フルカード、16歳。イーディス騎士学校ブレイズ在籍の生徒。"気高く生きる"が信条の実に暑苦しい青年」
「後半余計ですが、まあ、それくらいは……」
「ユーゴ・シモンやセリア・アルヴィエとは同郷たるル・サント村の出身。しかし、その村は約8年前、住民たちが一夜にして……」
「やめろ!」
レオは大きな声で叫んだ。
「……悪いね、職業柄つい。ただちょっと、個人的な感想だけ述べておこうかと。あの逃亡犯の死体に関して、ね」
俯いてしまったレオにガスパルは続ける。
「見事な一撃だったよ。あれならきっと痛みなんてなかったことだろう」
「……そうっすか」
「そうっすよー。じゃあほどほどに頑張れよ、気高き少年」
カップを持っていない左手を掲げ、バイバイと言うようにガスパルは去っていく。
「うっす」
1人になったレオは夜空に浮かぶ月に向かって、手を翳した。
「なあ、天国のばあちゃん。あんたから見て今の俺ってさ……」
そこまで言ってレオは口を閉ざし、伸ばしていた手を下ろした。
「…いや、なんでもない。それをあんたに今聞くのは甘えだよな。全っ然、気高くねえわ」
レオは下ろした手のひらをじっと見つめる。
「俺はこれからもただ俺らしく」
ギュッと拳を握る。
「……気高く、この戦争を生き抜くまでさ」
「だからばあちゃん。どうか……、いつか来る"最期"の時まで、この俺の生きざま、しっかり見守っていてくれよな」
空を見上げたレオに返事をするかのように、キラリと星が一筋流れた。
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〔次回予告〕
次回、テイルズオブルミナリア
エピソード レオ
ep.2 気高き者
次回も気高く遊んでくれよな!