エピソードまとめ
□レオ・フルカード
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ep.英雄の卵たち
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【CHAPTER4 逃亡犯果て】
998Y.C. 森国シルヴェーア ディランブレ戦傷地帯
「ユーゴの言う通り丘へ来たのはいいけどよ……ひとまずここを登って行けばいいのか?」
「そうだね、行ってみよう」
998Y.C. 森国シルヴェーア 寂光丘陵
〔イベント〕
ディランブレ戦傷地帯と寂光丘陵の境目に設置された門の前に、見覚えのある髭面の男が立っていた。
「おう、お前ら、どうしたこんな所で」
3人に気がついた髭面の男ガスパルは、よう、と気さくに片手をあげた。
「それはこっちの台詞ですよ」
「……あの村の酒場で、ここぞとばかりに仕事をサボって飲んでたら、リゼットに「働け」って蹴り出されちまってな……」
「僕達は普通に、逃亡犯の足跡を追ってたらここに辿り着いただけで……」
「……へえ。相変わらずリゼットの目に狂いはないわけだ」
ん?とレオが首を傾げる。
「こっちの話だ」
「ガスパルさんって結構偉い人なんですよね?なのに部下も連れず、単独行動ですか?」
「ああ、俺は元々、能力適性上のこともあって超単独行動タイプだからな。気にするな。さあ行ってこい、ひよっこちゃん達」
ガスパルに見送られて3人は門を開け、寂光丘陵を登って行く。
「逃亡犯はほんとにこの丘に向かったのかよ?なんだが、当てが外れ続けてるけどよ」
「ハズレを引いてる、ということは、それだけ選択肢も限られていくからね。これまでの犯人の行動を考えても、確率はかなり高くなっているはずだよ」
「もし、この丘の先に逃亡犯が居たらどうする?」
「は?どうするも何も捕まえるだけだろ」
「そう上手くいくかな?だって、教官や先輩達をもってしても、追い詰められていない相手だよ?そんなに甘く考えない方がいいよ」
「…確かに。私達だけで大丈夫かな…?」
「だから、レオ。さっきの洞窟の時のように、独断専行しないで欲しいんだ」
「ユーゴ……」
心配そうな顔で、セリアはユーゴとレオを見つめた。
「キミの行動一つで、僕達が全滅する可能性だってあるんだからね」
「……ああ。わかってるよ……」
「…そ、そういえば!」
あまりよくない空気を壊そうとセリアは声を張り上げた。
「丘を登って行くと、アムル天将領が見える場所があるってミシェルに教わったことあったなー。あそこはミシェルの故郷だもんねー」
「……そうだな」
「……い、いい眺めなんだろうなー」
変わらなかった空気を受け、セリアの言葉は尻窄みになっていった。
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〔障壁創術に閉じ込められる〕
「これは…!」
赤い光を放つ障壁が左右前後、4方向からジリジリと内側に押し迫ってきた。
「障壁創術?」
「先に進めないぞ!どうすればいいんだ?」
「ちょっと待って。あそこに障壁の発生源があるわ」
そう言ってセリアは弓構え、空を見上げた。
4方向の障壁がそれぞれの辺で重なる角の部分の上に機械の様なものが浮いていた。
「私の弓でなんとかあれを壊すから……」
「その間、僕らがセリアを守ればいいよね?できるかい、レオ?」
「ああ、当然だ!」
〔障壁装置破壊〕
「もう通れるわ!」
「よし!」
「…今のも逃亡犯の罠だったのかな?」
「たぶんね。そしてあれがここにあったということは……」
「この先に……」
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〔丘から見える景色〕
「あっ!あれじゃない?アムル天将領!」
「あれが……源獣羊公タルルハンか」
「こうやって見るとやっぱ源獣って凄えな
」
「だね」
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〔イベント〕
「あれ?あそこにいるのガスパルさんじゃない?」
「本当だ。僕たちの方が先を行っていたはずなのに……」
丘の中腹にいたガスパルに駆け寄る。
「ガスパルさん。いつの間に俺達を追い抜いたんですか」
「どうしてだろうね。そっちがよそ見でもしてたんじゃないかい?それよりお前らには結局伝えられてなかったよな。逃亡犯の最新外見情報。……今は"行商人"を装ってんだとよ。例の"大荷物"のカモフラージュだろうな」
「っ!」
「もう犯人が野垂れ死んでる可能性もあるが……ま、互いにやるだけやろうぜ。じゃーな」
それだけ行ってガスパルは丘を下っていく。
「レオ……」
「……もしかして、レオが森で助けたと言っていた行商人って……」
「ちょっとユーゴ!」
「…ごめん」
「俺たちはイーディス騎士学校の生徒で。連邦に所属するブレイズだ。与えられた任務は、果たすだけさ」
「……そうだね」
丘の頂上へ繋がる門を開ける。
景色の一望できる頂上の奥に、男が1人立っていた。彼はまだこちらに気がついて驚いた様な顔を見せた。
「あんたは……獣から俺を助けてくれた………」
「お久しぶりですね。あの時は名乗り忘れましたけど、俺はレオ・フルカードといいます。そして……イーディス騎士学校の生徒です」
レオがそう告げると、男は、ふ、はは……と小さな笑い声をあげた。
「……なんてこった。そんなことが……はは…」
「大人しく投降してください」
「投降!?冗談じゃない!アレを帝国に…絶対帝国に持ち帰らねぇと……!」
「あれそういえば……運んでいた大荷物ってのが見たらないわね」
「どこかに隠したんですか?」
「言うわけねぇだろ馬鹿が……」
「なるほどあの岩の近くですか」
そう言ってユーゴは少し離れた場所にある大岩に視線を動かした。
「お、お前、なんで!?」
「ああ、いえ。ただダメモトでカマ掛けてみただけだったんですけどね」
「て、てめえら!」
男は首に巻いていたストールをバッと脱ぎすてた。
ストールで隠されていた胸元には赤い装置がぶら下げられていた。
「リタクター!……くそっ、やっぱりあんた帝国の!」
「……悪いなあんちゃん。助けてくれたことには感謝してるさ。本当に。だがな…俺は……、俺は是が非でも帝国にアレを持ち帰えらなきゃならねえんだ!」
「そうかよ!」
レオの返事を合図に皆武器をしかと構えた。
「いくぜぇ、命の恩人さんよおおおお!」
男は剣を握り構えたかと思えば、剣を持った右手ではなく左手を突き出した。
それと共に、火の創術が発動され、火の玉が真っ直ぐ飛んで行った。
「くっ……俺はあんたとは……」
「レオ!迷ってる場合じゃないよ!たとえどんな出会いがあったとしても!今、僕たちの目の前にいるのは、れっきとした"敵"なんだ!」
「んなこと、わかってるよ!……くそっ、これが絶望的な結末ってヤツかよ……。……なら俺は真正面から立ち向かうまでだ!いっくぜえええええええ!」
「捕まる訳には行かねえんだよ!くらえ」
「こんなところで……」
どさり、と男は後ろに倒れる。
「カハッ……このままじゃ、俺も…!くそっ殺せよ!殺してくれよ!おい、なあ!」
上半身を起こして、何かに恐怖してような青い顔をして逃亡犯は懇願する。
だが、何も言わないレオ達に、男は自分の剣をもう一度握る。
「そうかよ……だったら!」
男は自分の首筋に剣を当てた。
3人がハッとした瞬間だった。ワオーンと鳴き声がしたかと思った瞬間。男がガルルの様な見た目をした緑色に光る獣に突撃され吹っ飛んだ。
「えっ?」
そこには杖をこちらに向けたミシェルが立っていた。
「助かったよ、ミシェル。でも、どうしてキミがここに?」
「…あの、リゼット教官が、そろそろこんな事態も起こるだろうと……」
「こんな事態?」
首を傾げたユーゴを見てミシェルは困ったような顔をした。
「えと、その……具体的には、こりゃ新入生どもが敵の無力化手段もロクに用意せず、相手を追い詰めそうな流れだな、などと急に仰られまして……」
「な、なんて読みをしてるんだあの人は……化け物ですか……」
「なんにせよ、おかげで助かったわ、ミシェル」
「いえ。でも……これからどうします?」
「そうだね。とりあえず教官に報告に行かないと。かといって、犯人をこのままにしておくわけにもいかないし…」
「あ、では、私とセリアで1度報告に戻ります」
「大丈夫レオ?」
「ん、ああ。こっちは任せとけ。セリア、ミシェルちゃん」
「はい」
「ええ、じゃあ行ってくるわね」
そう言って2人は丘を降りていった。