エピソードまとめ
□レオ・フルカード
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ep.1英雄の卵達
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998Y.C. 森国シルヴェーア 鳴響の大口
〔イベント〕
ゆらゆらと身体に骨が入っていないかの様な動きで3人の人が近づいてくる。
「おいで……ない…で」
「ご…じ…て……」
その見に纏っている服の袖は先程アンスワン森林で見た血に濡れた布切れと同じだった。
「…っ!」
「またこいつ?何か喋ってるみたいだけど……」
「これは……帝国訛り?ということは……」
「……やるぞ、二人とも」
いつもよりも随分と低い声でレオが言う。
「レオ?」
その様子のおかしさに二人は首を捻る。
「待って、レオ。もしかしたらこれは例の逃亡犯の手掛かりに……」
「ご……じ……て……」
「っ!いいから……」
レオは刀を握りしめる。
「やるったらやるんだよ!」
そう言ってレオは1人飛び出す。
「ちょっとレオ!」
セリアの制しも聞かずに、レオはただ目の前のウーチルチル・グドゥフンに刀を振るった。
「いったいどうしたっていうの?」
「くそっ、くそっ!」
「レオ!聞いてるのかい?これは手がかりに……」
「ダメよユーゴ。ひとまずこいつらを倒すしかないわ!」
「はあ……はあ…!」
ウーチルチル・グドゥフンを倒し終わりたレオは、数も少なく大して強い獣ではなかったのに大きく荒い息を吐いていた。
「ああ……せっかくの手がかりが消えてしまった。もう、なんで先走るかなレオ。逃亡犯に繋がる証拠だったかもしれないのに……」
「……わりぃ」
「うへ〜まただよお〜」
急に後ろから間延びした女性の声がして、3人は振り返った。
「マッキ先輩!あたしもう飽き気味い〜」
「僕だってうんざりだ!ええい、まったく何体いるんだ……?」
え?と振り返った3人が見たのは、ツインテールの女性と帽子を被った少年だった。
「え、えと、先輩方?俺達は…」
「馴れ馴れしいぞっ!偽物の分際で!」
説明する前に弓が飛んできて、3人は身を守るように武器を構えた。
「言うに事欠いて僕の記憶まで探るとは無礼千万!さらには、大切な新入生の姿を盗むとは、恥を知れ!」
「まったくだよ〜。だってこの子"気高いくん"だよね?」
「だ、誰が"気高いくん"ですか」
「じゃ、"レオレオ"」
「…うーん、それならまだ……」
「てか、悪趣味過ぎない?そんなにもそっくりそのまま真似しちゃうとかさあ………。…ん?そっくり過ぎ……?」
「皆まで言うなイェルシィくん!人を真似る化け物など絶対に捨て置けん!マクシム・アセルマンいざ参るーっ!」
「ちょ……!」
「ふぅ……この子達ケッコー強い。マッキ先輩、あたし思うんだど…」
「ああ、実に再現度が高い!戦闘技術まで真似るとは!まるで本物ではないか!」
「本物ですからねぇ!」
「…へ?」
「あははー、なるー」
間抜けな声を上げたマクシムの横でイェルシィが笑い声を上げる。
「本物なら強くて当然だよね。そりゃそーだわ。ウケる」
「いや全然ウケる要素ないでしょう。ガチで殺されかけてんですからね俺ら!」
「本物なら本物とさっさと言えばいいものを…。これだから若輩者は……」
「えーと、僕ら、戦闘中に何度も訴えましたよね?先輩達が全然聞いてくれなかっただけで……」
「俺なんて普通に会話もしましたよ?」
「っていうか一戦交えた直後なのに、先輩たちはなんでそんな余裕綽々なんですか……」
「んー、余裕ってほどじゃないよ。キミ達ケッコー強いから。だから……ちょいマジくらい?怪我するのもさせるのもヤだし」
「当然、というか、僕ともあろう者が、新入生如きに本気になるはずもないだろう」
「マ、マジっすか……あれで……」
「先輩方は、逃亡犯の手がかり見つけられました?」
「あー残念ながら、それっぽいものはなかったかなー。そっちは?」
「私達も全然……あ、でも。記憶を元に擬態する獣が妙な姿に……」
「なに?それは今どこに?」
「あー…実はもう倒してしまいまして……」
「う……」
「獣達に何か手がかりはあったか?」
「そうですね……。獣の拙い喋りでしたが、発音に多少、帝国訛りが混じっていたかもしれません」
「ふむ。なるほど……。例の逃亡犯は一時的にとはいえこの洞窟に立ち寄った可能性はあると」
「ですね。まあ、もう、逃げてしまってるとと思いますけど。あんな獣がいたんじゃ落ち着かないですよ、ここ」
「あ、わかるー!あいつらめっちゃやらしーよね。人の大切な思い出踏みにじるなっつの!」
「……そうっすね」
「おんやあ?レオレオなんか悩んでね?あたしでよければ相談乗るよ。今なら癒しのハグもつけとくぜ」
「最後が余計過ぎます。……はあ、なんでもないですよ。なんか、先輩達と喋ってたら、色々馬鹿らしくなってきました」
「えへへぇ。スッキリできたってこと?それはよかったねえ」
「…やれやれ。キミというヤツは、
言葉遣いはアレだが、心遣いは大したものだ」
「やったぜ。褒められた〜」
「結局、全然逃亡犯に辿り着けねぇな……」
「諦めるのはまだ早いぞ新入生。由緒正しきアセルマン家の次男である、この僕の名推理だと……」
「そんなことないさレオ。ここまでで得た情報は大きいよ」
「そうなのか?」
「ああ、僕に考えがあるんだ。ひとまず、この洞窟を出て、丘へ向かおう」
「丘っていうと……ここに来る前にあった門の先だよな?」
「わかったわ。行ってみましょ。じゃ、そういうことで、先輩達失礼しまーす」
「あ、こら、お前ら!」