エピソードまとめ

□レオ・フルカード
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ep.1英雄の卵達
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【CHAPTER2 追跡再開】

998Y.C. 森国シルヴェーア デュシー村

「みんな大丈夫だった?」

村に入って直ぐにセリアが出迎えた。

「ああ、セリアもお疲れさま。さっきの女性も大丈夫だったようね」

「ええ、おかげさまで。あ、ミシェルも合流出来てたんだ」

「はい。先程はお二人の窮状を知らせてくれて、ありがとうございます」

「お礼を言うのはこっちよ。貴女が、私の疲労を気遣って代わりに向かってくれたから、このニ人も助かったんだし。ね、レオ?」

「あ、ああ、まあな。はーあ、ノドが渇いたぜ」

「じゃあ、ここの酒場で何か頼みましょうか。あ、でもお酒はダメだからね」

「そうだね。お酒は大人になってからじゃないと」

「ああ、わかってるよ」

酒場に向かってセリアを先頭にみんなが歩き出す。

「あのレ……フルカードさんは問題ありませんか?」

1番後ろをついてくるミシェルが、レオに尋ねた。

「あ、ああ。この通りピンピンしてるよ。ありがとう……ミシェル…ちゃん」

「あ、はい……」

ん?と2人のやり取りを聞いたユーゴが首をかしげる。

「っていうかレオ、アンタ相変わらずミシェルにだけは"ちゃん"付けしてるのね。まったくわっかりやすい男よねー」

茶化すようにセリアがそう言う。

「う、うっさいな!これはそういうんじゃねえんだよマジで」

レオが弁明するように叫べば、へえ?とユーゴが意味ありげな笑みを浮かべる。

「お前らなあ」

からかってくる幼馴染達に肩を落とし、これ以上からかわれる前にさっさと酒場に入ってしまおうと、セリアを抜いて1番先に酒場に入った。
その入口でレオは足を止めた。

「リ……リゼット教官!?」

酒場のカウンターに座っていた藤色の髪を持つグラマラスな体型の女性を見てレオは叫んだ。

「ああ、ようやくお前達も来たのか。それにしても随分と遅かったな」

振り返ってそう言ったリゼットの言葉にユーゴが首をかしげた。

「遅かった?どういうことです?学校を出た際には特にこの村への立ち寄りは支持されてなかったはずですが……」

「それはそうだが、少しでも調査活動をしていたならば、この村の方へ逃亡犯が向かった、という情報はすぐに仕入れられたはずだがな?」

「はあ……少しでも調査活動をしたなら……ですか」

じろり、と横目でセリアがレオを睨む。

「な、なんだよ。俺は……!」

「こんな場所で大声を出すな。店に迷惑だろう。言い訳なら表でたっぷり聞いてやる」

そう言って歩き出し店の外に出るリゼットに従い、全員酒場の外に出る。

「そ、それで、教官がなぜ自らここに?」

「いや、なに、お前達以外の班から次々にこの村付近で逃亡犯の目撃情報が上がってきたからな」

「……それで僕達以外の班、先輩たちは今どちらに?」

「皆さんでしたらすでに、周辺の探索に向かいましたよ」

「…私達が獣の軍勢と大立ち回りを演じている間に色々進んでいたのね……」

「獣の軍勢と大立ち回り?」

リゼットの眉間にシワがよる。

「な、何でもございません!」

「とにかく、例の逃亡犯は結局村内には入らなかったらしい」

「しかし、この周辺で村以外に身を隠せる場所となると……」

「ああ、だいぶ限られるな」

「具体的にこの辺りで身を隠せるとしたら、リュシアン先輩とヴァネッサ先輩が調査しているアンスワン森林と、イェルシィ先輩とマクシム先輩が向かった鳴響(めいきょう)の大口という洞窟ですね」

「なら、追いかけますよ先輩達を!少しでも足掻けるんなら足掻きたいんで俺達!」

「そうか」

そう言って、リゼットはセリアとユーゴを見た。

「お前達二人もフルカードと同意見と見ていいか?」

「残念ながらそうですね。僕も結局のところ諦めの悪い子供なんで」

「だね。行きますよ私も」

「そうか、そこまで言うなら、お前達の班は好きにやってみるがいい」

「はい!」

「森と洞窟、どちらに行くにせよ、村の左手にある門から行けますよ。…フルカードさん左手というのはフォークを持つ方ですからね」

ミシェルの教えの通り左手にある門の方へ向かって行けば、長髪で顎髭を生やした男性が門の前で立っていた。

「お、誰かと思えば。騎士学校のひよっこちゃん達じゃねえの」

「……アンタは?」

親しげに話しかけてきた男性に覚えがなくレオは首を傾げる。

「アンタっておいおい酷えな。忘れちまったのかよ?ちゃんと入学式で挨拶したじゃねぇか。俺あ、ガスパル・エルベ。お前らひよっこ騎士の偉大なる……」

「反面教師だ」

「そうそう反面教師。……ってそりゃあないぜリゼットよお」

ガスパルは後ろからの声にノリツッコミで返す。
それに対しリゼットは淡々と「事実だ」と伝えた。


「そいつは一応、現在、法王様直属の諜報機関に在籍する人員だ。連邦軍の組織図上だけで言えば、そこそこ上の地位にあたるな。そういう意味では確かにお前達からすれば、本来深い敬意を持って接すべき人間である」

「だろう?言ってやれよリゼット。このひよっこちゃん達に。この俺を前にしたらまず敬礼すべきだと……」

「だが安心しろお前達」

ガスパルの声をかき消すようにリゼットが声を張り上げた。

「私、リゼット・レニエが今ここに宣言しよう。私が指揮するブレイズの生徒に限っては今後……この男に一切の敬意を払う必要はないと。それによって、もし、問題が生じるようであれば、その全責任は私が負うと」

「おいおいおいおい。なんでここで、謎の男気みせちゃってんの!?リゼットさんや!?」

「というわけで、もう行けお前ら。人生を無駄にするな」

「了解です!」

元気よく返事をしたレオたちはガスパルの後ろにある門に向かって走っていく。

門を開けて出ていく3人を見て、ガスパルはぱちくりと目を見開く。

「従順!マジで俺をスルーして出て行きやがったあいつら!ったく……どういう教育してんだリゼット!俺だって今回は立派に任務で……!」

怒って振り返ってリゼットを見れば、彼女はガスパルから距離をとり、彼が視界に入らないようにミシェルの前に立っていた。

「ああ、ミシェル。すまないが村内の見回りを頼む」


「いや、露骨に生徒を俺から遠ざけるのやめてくれる!?おい、リゼット!今日はマジで役立つ情報をだな……」
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