エピソードまとめ
□レオ・フルカード
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ep.2 気高き者
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「ユーゴ、ホントにいいの?」
砦を出ながらセリアはユーゴに尋ねた。
「まあ、今回の任務は"砦付近の様子を見る"だから」
「だよな。行動的には任務と合致してるし」
「もう……わかったわよ」
セリアは折れて、二人と共に歩いて行くのだった。
「この先がジナーホルツ村か」
そう言ってレオは扉をあける。
「……あ、ああ」
「また何かかんがえてるの?」
なんだか上の空なユーゴにセリアは声をかけた。
「ユーゴがなに考えてるかは、わからなくてもよ」
「ユーゴが、なにか悩んでるのは痛いほどわかるもんねえ」
「そ、それはごめん。精進するよ」
「なにをだよ」
「あんまりこじらせないでよ?」
そう言いながら三人は砦から村までの街道を歩いて行った。
998Y.C. 森国シルヴェーア ジナーホルツ村
「あらあ、良かったらお店寄ってかない?サービスするわよ」
村に入るなり、門のすぐ横の酒場の女性がそう声を掛けてきた。
「いや………俺達はブレイズの任務で……」
レオがそう言うと女性は顔色を変えた。
「え……じゃあ、もしかして連邦の……?だったら早くどっか行ってくんない?連邦の人の口に合う料理なんてないから」
「は、はい……」
しっし、と追いやられて、レオ達は急いでその場を離れる。
「……なんかこう空気が刺々しいな」
「ここは元帝国領だからね……」
仕方ないと言うようにユーゴがいう。
「ひとまず他の人とも話してみるか」
そう言ってレオは、人々に話しかけてみるのであった。
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〔村中会話 パンカー女性〕
「あなたはパンカー?」
「パ……パンカー?なんすかいきなり……」
「パンを愛する者という意味よ!」
「……嫌いじゃないっすけど、今任務中なんで……」
「任……務ってまさかレンポー?ごめんなさい。今日は閉店させてちょうだい」
〔村中会話 宿屋〕
「ウチの宿に滞在してたヤツで、仕事も金もねえけど、どこか憎めないのがいたんだが、やっぱそういうヤツは信用しちゃいけねえよな」
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「……お兄さん達、連邦の人?」
村の中を歩いていると、パン屋の前で銀髪の男の子に声をかけられた。
「キミは?」
「カールって言います」
三人はその名に聞き覚えがあった。
「もしかして、不審者を見たっていう?」
「はい。昨日お父さんと配達に出た帰りに、村はずれの廃坑でコソコソ荷物を運んでる人達を見て……」
「なんかキナ臭い話ね」
「レオ……、きっとこれが教官の気に掛けてたことだ」
「はあ?」
どういう事だとレオはユーゴを見つめる。
「彼の話とこの辺の地盤が不安定という話。最近まで帝国領だったここ一帯の地形情報を、帝国が知りつくしてたなら……」
「まさか砦を潰すために意図的に崖崩れを?」
「おいおい、んなもん、砦だけの被害じゃ済まねえぞ!」
近くにあるこの村も必然的に危ない。
「カール。念のため、村人達を退避させてくれないか?」
「そ、そんなのどうやって……」
急な申し出に、カールは戸惑う。
「そこは任せる。できそうか?」
「……うん。騙すことが必要な時もあるよね。じょーほーせんには」
「お、おう?とにかく任せたぞ!」
なんだか、子供にしては大人びた事を言ったカールを不思議に思いつつ、三人は廃坑へ、向かうことにしたのだった。
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〔村中会話 カール〕※木苺のトーストのレシピ
「そういや、カールは俺達が嫌じゃないのか?他の人達は、あまり歓迎してねえようだけど……」
「……それはみんな、連邦の人に騙されたって思ってるから……」
「騙された?」
「でも僕は少し違って、あの人に今も感謝してるから」
「ん?」
「気にしないで下さい。それで、あの……僕……あんまりお金持ってなくて……。お父さんに習ったパンのレシピを教えることくらいしか、お礼ができないですけど……」
「んなこと気にしなくていいのによ。でもサンキュな。今度作ってみるぜ」
「うん!」
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「廃坑に急ごう」
「さっき村へ来る前に、入り口っぽいのがあったわね」
「じゃあ、そっちに戻るぞ」
三人は村を出て先程通った街道へ出た。
「ユーゴはどうして、帝国が崖崩れを狙ってると?」
走りながらセリアがユーゴに質問する。
「一番の理由は、砦に対する帝国軍の動きが鈍いことかな。あそこは要所なのに奪還の動きがまるでない」
帝国と連邦の国境線の砦なのに、だ。
「つまり無理に、そうしなくてもいい手筈がある」
「崖崩れを使って潰しちまえるってことか」
「村を巻き込むことなんかいとわずに……」
「それが帝国のやり方かよ!許せねえ……!」
「……ああ、そうだね……」
怒りを顕にするレオを見て、ユーゴは静かに頷いた。
砦を正面に見て左側に廃坑への道が続いていて、三人はその廃坑の封鎖された扉を開けて中に入った。
廃坑だけあって、あちらこちらが崩れ道が塞がれていてほぼ一本道になっていた。
「あっ!あそこに人が!」
セリアが指さしたのは奥の採石場で、白と黒に赤の装飾の入った兵士が複数名と、ピンク髪の女が居るのが見えた。
「帝国の奴らか!」
急いで三人は彼らの元へ向かう。
「ねえ、もうちょっと急げないわけえ?」
艶やかな声で、ピンクの女がそう言えば、何かの作業をしていた帝国兵の1人が振り返って頭を下げた。
「す、すみません。崖崩れを起こせるほどの量となると、なかなか……」
「言い訳きらーい。そんなことだと、すぐに邪魔が入るわよお?」
「いやがったな、帝国軍!」
女の後ろにレオが立つ。
「……こんな風にい」
そう言って女は振り返った後、三人の姿を見て喜んだ。
「あら、誰かと思えばセリアちゃんじゃない」
「あ、貴女……!」
三人は女に会ったことがあった。
「ハバキリ以来?おひさー」
女は呑気に挨拶する。
「お、お久しぶりです」
つられてセリアもぺこりと頭を下げた。
「…………じゃない!」
彼女のペースに流されそうになって、慌ててセリアはキリッと睨んだ。
「あの時は、よくも騙して……!」
「あは、こわーい♪ねえ、セリアちゃん。ここは、お友達のよしみでえ……見逃してくれない?」
「…ありえない」
そう言ってセリアは戦闘態勢に入る。
「そっちのボク達もお願ーい♪」
「ざけんな!」
「作戦行動中の帝国軍を見逃すわけないでしょう」
レオもユーゴも武器を取る。
「お堅いわねえ、まったく。それじゃ……ちょっとだけ遊んで、ア・ゲ・ル♪」
そう言って、女──帝国赤狼将ラプラスは、スリットの入った服の隙間から自身の脚を艶めかしく指先で撫でた後、ウインクを投げた。